全てのはじまりを覆す「!?」
気がつくと桜並木を眼前に立ち尽くしていた。
「ここは…?」
そうだ。ここは高専へ続く道。何故歩くのをやめたのか記憶にない。
「あの!」
後ろから声をかけられる。振り返ろうとした瞬間、頭に強い痛みを感じ意識を手放した。
***
「…?」
瞬きをすると、こちらを見つめる少年と目があった。
「あ、目が覚めた?」
「ここは…?」
「高専の医務室だよ。きみは五条さんに殴られて倒れたんだ」
「五条さん?殴られた?」
「だーかーらー、絶対謝んねーからな」
「悟!」
カーテンの外が騒々しい。声の方向を睨みつけると彼らは一つ上の先輩だと少年が教えてくれた。
「ということは君は同級生か?」
「そうだよ。僕は灰原雄、よろしくね」
にっこりと笑う彼に荒んだ気持ちが癒やされたように感じた。
***
(第一関門突破だな)
夏油に怒られながら五条は胸を撫で下ろした。前々回の反省を生かし、七海の五条への印象を出逢う前から下げておく。そのために灰原と対面する前に七海を気絶させたのだ。
(これで灰原も変に拗らせなくて済む)
全ての始まりは五条の見目に関心を寄せてしまった七海である。見た目なんて気にならない状況を作れば、灰原も七海の視線に固執しなくて済む。
(前回は上手くいかなかったからな)
呪術が存在しない世界。そこで灰原に頼まれ、こちらにも利益があったから結婚した。子供さえ産まれれば後は七海と上手くいくように斡旋しようと思っていたのだが、産後の肥立が悪く灰原は帰らぬ人になってしまったのだ。
(これは、傑を裏切って灰原を傷つけたことへの贖罪)
あとは傑の離反を防いで灰原の死を回避して…と今後の難題に思考を傾けた。