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    @okakkie_id

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    MEMO鳴百全年齢
    彩ノ渦とは完全に別の未来if覚え書き出所後に蔵のすぐそこのマンションのワンルーム与えられて「監視もある、制限もある、一応出所しただけ」感漂う鳴さんの、からっぽの部屋が心配なももきさんが、監視カメラがあちこちについた鳴さんちに頻繁に遊びに行くようになって、ばんごはん一緒にして、帰るの面倒になって泊まり始めて、ソファも来客用の布団もないからシングルベッドにふたりでぎゅうぎゅうになって寝て、ほとんど同居みたいになってくる。あんまり距離が近いからなんか変な気持ちになってくるけどお互い言い出せないまま関係がずるずる続いて、ある夜に「俺、気がついちゃったんですけど」「なんだ」「あの一角、監視カメラの死角なんです」「お前な」「いや本当ですって、まずいと思うんで、ほら、明日蔵で確かめてくださいよ〜」とかへらへら言いながらももきさんをキッチンカウンターの陰のはしっこに引っ張っていった鳴さん、不意に抱きしめて顔近づけて様子をうかがって、拒否する様子がないから、息も声も殺したぐちゃぐちゃのキスをして、何分もそのままでいて、それから「……角度、変えるように指示しといたほうがいいですよ」って笑う、
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    DONEうちのももききの基盤にあるやつ。少々暗くて重い。間接的ではありますが暴力を示唆しています
    狒々の白羽の牙を折り 渇きを覚えて起き上がる。階下に降りると、縁側の戸が開いていた。淡い月光が黒髪の輪郭を浮かび上がらせている。起こしてしまいましたか、と控えめに笑う彼女のもとへ、足は勝手に向かった。意識なく、自動的に。まるで誘蛾灯へ向かう羽虫の行動だ。自覚はない——いや、あるのか? 疑問が浮かんで初めて、意識が分裂していると気がつく。ああ、なるほど。これは夢か。夢を俯瞰するとこのようになる。夢を見ている自覚のある自分はそれこそ指先でひねり潰される虫のようにちいさい。
     身体を操っているほう、すなわちここが夢だと気づいていないほうの自分が無言で彼女の前に立つ。彼女の頬にはまばたきがひとつ落ちた。丸くてきらきらした瞳が自分を見上げている。互いに無言だ。彼女の唇にはわずかに微笑みがある。瞳には信頼が満ちている。音はなぜか聞こえない。静寂に満ちた世界でゆっくりと手が持ち上がった。自動的に——意識なく。渇いている、と思った。唐突に鼓動を意識する。心臓と眼球が熱を持ち、呼吸が早まる。彼女の瞳に戸惑いがよぎるのを見つける。羽虫のごときおのれには焦りが生まれる。必死で制動をかけようとする。だが身体のほうはいうことをきかない。手のひらはすでに彼女の体温を感じている。産毛の感触を。肌のわずかな湿り気を。半狂乱になった頭が、よせ、と叫ぶ。その人になにをするつもりだ!
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    DONE鳴百/局所的にめちゃくちゃ暗い/出所済み/全年齢/やることはやっているが恋じゃないふたり、解決できない罪悪感/朝チュン
    眩暈/よたよた歩きの苦い朝 なにもかも青白いような気がしていた。まだ昇りきっていない朝日が障子紙を通り抜け、部屋を淡く染めている。百貴は見慣れているはずの自室を見つめていた。布団に横になったまま、目蓋だけを開けている。正直なところをいうといつから目覚めているのかも判然としなかった。もしかしたら空中を舞う細かな塵のきらめきに美しさを見出していたのかもしれなかった。
     眠たい目蓋をふたたび閉じるのをためらっているうちにだんだんと眠気が抜けて、幻想的だったはずの部屋につまらない生活感がもどってくる。百貴は軽く息をつく。
     普段なら、目覚めて初めて視界に入ってくるのは天井に敷き詰められた味も素っ気もない板のはずだ。隙間なく閉じられた障子のほうに視線が向いていた理由は背中に感じている体温にある。腰に巻き付いている他人の片腕からはすっかり力が抜け落ちていて、少し重い。だが煩わしくはなかった。いまだ眠りの中にいるらしい腕の主を起こさないよう、かけられていた布団をよけつつ慎重に身を起こす。その途中、手のひらで、なにか薄っぺらいものを押さえつけた。何の気なしに手の中を見て少し腰が引ける。
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    MAIKING(やってる場合ではない)
    **** xx-01 あれはとても暑い夏の日でした。私は汗だくになって自転車をこいでいました。友人と遊びに行くのでしたっけ。病院の予約があったのでしたっけ。いっこうに思い出せないのですが、学校に急いでいたのではないことだけは確かです――私はこの年も皆勤賞を逃さなかったのですから。
     行き先と用事を忘れた代わりとでもいいましょうか。古い自転車のどこかからキイキイと耳障りな音が鳴っていたことを覚えています。大きなお屋敷の庭木の陰を歩いている人を追い越し、勢いよく行き過ぎるとき、ちょうど、蝉たちが大騒ぎを始めたことも。大ぶりの枝がつくる木陰にすっぽり収まった私の耳は蝉の声で埋めつくされました。私は相変わらずペダルを必死に踏み込みながら、突然吹き出してしまいました。自転車のやつが、昆虫どもの勢いに押されて黙ったような心地になったからです。まったくばかばかしい妄想です。この蝉時雨を抜けてしまえば絶対にまた自転車の悲鳴は私を苛つかせるに決まっているのに。きっと、思考に回すぶんの酸素が足の筋肉に取られていたんです。けれどその一瞬のばか話が命取りでした。忘れがちですが、自転車という乗り物は実に繊細なバランスで成り立っているものですね。私はペダルにかける体重を少し、ええ、ほんの少し間違えてしまったのです。
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