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    ちゃん

    @3chanchanchan3

    七五置場
    ハピエンしか書けません
    性癖が際どいやつはフォロ限だと見られない方がいるようなので
    一時的にログイン限定のパス制にしてみました

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    POIPOI 14

    ちゃん

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    キスの日が過ぎてから書いたキスの日のこ〜せん七五

    二人は付き合ってます。
    既存曲のタイトルは著作権に引っかからないらしいので恐る恐る投稿してみます。が、問題あればすぐに削除します。

    #七五
    seventy-five

    サブリミナルキス 若き五条は同じく若き一学年後輩の七海と恋人関係にある。
     当時二年生だった五条は、ただの後輩から特別な後輩へと肩書きを変えた七海へ、自身の誕生日に初キスを捧げた。指を絡め合うことすらぎこちなかった二人だが、キスという大きなハードルを乗り越えてからは、いささか大胆に触れ合えるようになり、今では洋画のようなキスを交わせるまでに進展した。
     思いが通じ合ってなお、七海への気持ちは膨らむ一方である。
     そんな五条が迎えた今日は、待ちに待った「キスの日」だ。
     お互いの誕生日やクリスマス、バレンタイン、ホワイトデーはもちろんのこと、恋人の日、ハグの日など、愛しい人と親密なことをする言い訳にうってつけのイベント事は、すべて押さえてしかるべし、と意気込む五条が「キスの日」をスルーできようはずもない。
     初めてのキスからかなりの経験を積んだのだから、あわよくばキスの先も味わってみたい。という野望を気取られないように、五条が「今日って何の日か分かる?」とそわそわしながら七海へ尋ねてみると、
    「骨密度ケアの日でしたっけ?」
    という色気もへったくれもない答えが返ってきた。「語呂合わせらしいですね」と続ける顔は表情に乏しいが相変わらず涼しくて可愛らしい。
     それはそれとして緊急事態である。
    「オマエ、なんか発想が老けてねぇ?」
    「では、他に何の日があるというんですか?」
    真っ直ぐに見つめてくる深緑の瞳は純粋である。五条は、自分ばかりが意識しているという事実をうっかり俯瞰してしまい、にわかに羞恥心に駆られた。
    「オ…オルレアンの乙女が捕えられた日…?」
    正直に答えることがはばかられて苦し紛れに披露した雑学を、七海は「博識ですね」と言って流した。
     よもや七海が「キスの日」を知らなかったとは。イベントにかこつけてめくるめく愛を交わすという五条の淡い期待は粉砕された。
     しかし、それでも、五条は諦めきれなかった。是が非でも七海とキスがしたかった。何ならキスの日という絶好のいちゃつきチャンスを七海が認識していなかったことに怒りすらわいてきた。
     粉微塵になったかつての期待を一粒残らず拾い上げ、五条は必ずや七海とキスをしてみせると、熱く胸を燃やした。もはやほとんど意地になっていた。

     午前、一方的に稽古をつけてやった合間の休憩時間にて。
    「問題!サンデー、マンデー…その次は!?」
    「……チューズデー」
    「そう、『ちゅー』ズデー」
    「ええ、Tuesday…」
     突如として繰り出された問題に七海は困惑した。五条の目はあまりに真剣だった。ふざけてはいないらしい、と判断したが、しかし脈絡がなさすぎて五条の狙いが読めなかった。発音を改めてみるも、五条の期待には添えられなかったらしく、しょんぼりと眉を下げられてしまった。
     ツンと尖った唇が何か言いたげであるが、五条が自ら話すまではそっとしておいたほうが良かろうと思い、妙な沈黙を誤魔化すように、七海はペットボトルに口をつけた。
     五条はほんのりと突き出された恋人の薄い唇に目を奪われていた。

     昼、任務から戻った灰原と昼食をとっていた食堂にて。
    「灰原は何食ってんの?」
    「天むすです!天つゆが米に染みてて美味いです!」
    「そっかー、良かったね。ちなみに七海は天ぷらは何が好き?」
    「その流れだと聞いたとしてもおにぎりの具を聞くものでは?」
    質問に質問を返す七海の眉間には、わずかに皺が寄せられている。
     五条が「オマエは恋人と親友、どっちが大事なんだ」という愚かな質問をぶつけずにいられたのは、口の端に米粒をつけたおちゃめな灰原が「僕も知りたい!」と無邪気な援護射撃を打ってくれたおかげである。
    「……たけのこです」
    「そ。ちなみに俺は『キス』の天ぷら」
    「はぁ。そうですか」
    キとスの間が一瞬つまっていたような気がするが、指摘するほどおかしなことでもない。五条のことだから世界的なハードロックバンドの名前とかけてくだらない洒落を言ったつもりなのかもしれない。その場合はなおさら指摘するに値しない。
    「僕はやっぱりエビが好きです!」
    元気よく答えてくれる灰原へ微笑みを送ってから、五条は食器を返し終えた夏油と共に食堂を後にした。
     親友との会話を楽しみながらも、五条の脳裏にはカレーパンの油分で艶めいていた七海の唇が焼きついていた。

     夕方、任務終わりの新幹線内にて。
    「それ、なんて読むの?」
    「『せっぷん』です」
    「ふーん、せっぷん…」
    「ええ、接吻」
    時間潰しにと読んでいた小説を横から覗き見していた五条が、何を言い出すのかと思えばコレである。博識の五条であれば読めないはずもないのに、むしろ「なにヤラシーもん読んでんだよ」と読書の邪魔すらしてくるだろうに、一体何を企んでいるのだろうか。
     恋人であるのに五条の真意が汲めない自分の幼さに情けなさを、恋人である自分へ考えを打ち明けてくれない五条にもどかしさを感じる。いずれにしても七海は自身の頼りなさに打ちひしがれた。
     朝一から質問をぶつけられて以来、五条の天然で色付いている唇が七海に向かって弧を描く様子を目にしていない。
     五条は、質問に答えて文庫本に目を落としたきり、一切目を合わせてくれなくなった七海の唇に視線を移した。固く引き結ばれていた。

     夜、五条の自室にて。
     小気味よいノックの音がした。扉を開けると、その叩き方から連想した通りの人物が立っていた。
    「なに?」
    「つれないなぁ。浮かない顔をしてたから様子を見にきたのに」
    七海と何かあったのかい?と尋ねる夏油の声は優しいが、昼に食堂を出てからずっと悪戯っぽい笑みを隠していたから、恐らくおおよその内容はすでに見当がついているはずである。
    「今日、何の日か分かる?」
    「世界亀の日、だろ?」
    「俺、傑のそういうとこ嫌い」
    こっちは真剣に落ち込んでいるのだと、五条がむくれて主張すると、夏油はへらりと笑ってゴソゴソとポケットを弄った。
    「そんな悟にコレ。貸してあげる」
     夏油が差し出したのは、ポータブルオーディオプレーヤーである。五条は顔を顰めた。
    「そんな顔しないでよ。今の悟にピッタリな曲を選んだからさ」
    再生ボタンを押したらすぐに流れるようにしてあるからと言い残し、突き返す間もなく夏油は去ってしまった。
    「今の俺にピッタリぃ…?」
     的外れに思える親友の励ましを一応は受け取っておくかと、五条はベッドに寝転がってイヤホンを装着した。
     再生ボタンを押すと、アカペラで英詞を歌う女性の声がした。
    「…あ?これってまさか」
    プレーヤーの画面を見ると、記憶通りのタイトルが表示されていた。
    「やっぱふざけてるだけじゃん!」
     気遣いの皮を被った親友の悪ふざけに苛立ちが募ったが、一日中サブリミナルにアピールしていた七海へのキス要請作戦がことごとく不発に終わった五条には、イヤホンを外すという簡単な動作すら億劫に感じられた。
     五条は不貞寝を決めて目を閉じた。イヤホンからは女性から男性へのいじらしくエゴイスティックな愛が赤裸々に流れている。
     バンドサウンドの間から、誰かが部屋に侵入した気配がした。おずおずと体を揺する手の温度には覚えがある。
     目を開けると七海がいた。気配はするのにノックをしても返事がないため、扉を開けて入室してみたといったところだろう。鍵をかけておけば良かったと思いつつ音量を下げると、
    「私は何かしてしまいましたか…?」
    という静かな声が聞こえた。
     何かをしたかと問われれば、七海は何もしていない。五条が勝手に期待を膨らませて、勝手に萎んで、勝手に意地になって、勝手に一人相撲に疲れてしまっただけである。であるけれども、素直に打ち明けられるような性格なら、五条はとっくに七海と一緒にキスより上の階段を上れている。
     拗ねて不貞寝を貫き、楽曲に集中する五条の耳へ、歌声の隙間を縫って七海の声が訴えた。
    「答えてくれないんですか?」
    ふーん、主人公の想い人は他の女子に目移りする男なんだ。俺の恋人はそんなことしない。ざまあみろ。
    「私は、そんなに頼りないですか?」
    残念。俺は綺麗で美人系。しかも可愛い。
    「……私のこと、嫌いになりましたか?」
    そうだね。俺もアイツの手、大好き。ソイツと違って体が華奢だけど、手は大きくて意外とゴツゴツしてて、きっと将来、今よりもっといい男になる。睫毛は俺のほうが長いけどね。
    「それでも私は、五条さんが好きです」
    俺も好き。七海の全部が大好き。
     背を向けたまま一向に返事をしない五条に焦りを募らせたのか、七海は
    「さっきから何を聴いてるんですか?」
    と尋ねた。
     違う角度の質問から打開策を講じているのか、それとも五条の機嫌を探るためか。いずれにしても七海は追い詰められているらしい。
     チラリと視線を寄越すと、七海の深緑とかち合った。それまで暗く沈んでいた緑は、五条の瞳の色が混ぜられたように光を灯した。
     愛くるしい反応に絆された五条は、悪戯心から努めて平坦な声で「ここでキスして」と答えた。
     七海は目を見開いた。それから五条の目を真っ直ぐに見つめ、天井を仰いだと思ったら盛大な溜め息を吐きながら萎むように項垂れた。「また揶揄われた…」とぶつぶつ低く呟いている。
     ようやく顔を上げたと思えば、七海は酷く疲れた顔をしていた。しかし、どこか安心したようにも見えた。大好きな手が五条の頬に触れて、手のかかる子供へ向けるような晴れやかな諦めを含んだ瞳が近づき、認識できないほどに近くなったと思ったら、唇に柔らかいものが触れた。
     それが七海の唇だと理解した五条は大いに動揺した。
     曲名を答えただけでキスをするとはどういう理屈だ。まさかキスの日を知っていたというのか。それともサブリミナルなキスアピールが効いていたのか。
     全身が茹で上がっていることをまざまざと自覚しつつ七海に目を向けると、七海は五条の赤面にキョトンとした表情を浮かべていた。今さら何をそんなに照れることがある?と問われているようだ。
     予想がすべて外れていることを読み取った五条の脳内に、不意に先ほど放った自身の言葉が蘇った。
     愕然としながらも、五条は恐る恐る言葉を紡いだ。
    「あの、…曲名、なんだけど……」
    「曲名?」
    なおも小首を傾げる七海に、五条は片方のイヤホンを外して七海の耳に装着した。曲が終わっていたために、最初から再生されることとなった楽曲のイントロを聴いた七海は、
    「聴いたことがあります」
    と言った。
    「この曲のタイトルが…?」
    「『ここでキスして』」
     七海は微動だにしなかった。と思ったら、一瞬にして顔を赤く染め上げた。気まずさからか、冷や汗まで滲み出ている。
     顔面を沸騰させている七海は、一縷の望みにかけるかのごとき切迫さで
    「今日は一日中拗ねたフリをして、私を動揺させて遊んでいたのでは…?」
    と尋ねた。むろん、五条の答えは否である。
    「今日はキスの日だから、たくさんキスしようと思ってアピールしてたのに、オマエ全然乗ってこないから…」
    「…それで、この曲を聴いて気分を慰めていたと」
    「いや、そういうわけでもないんだけど。確かに拗ねてたと言えば拗ねてたぜ?でもコレは傑に無理やり渡されたのを渋々聴いてただけ」
    「……すみません、理解するのに時間がかかりそうです」
     真っ赤な顔を覆う手も同様に赤く、七海がどれほど狼狽しているのかは想像に容易かった。
     ひとまず落ち着かせようと背をポンポンと撫でると、七海は力なく五条の胸元に倒れ込んできた。それを受け止めて、重力に逆らわずにベッドへと身を沈めた五条は、図らずも七海に押し倒される形となった。
     夢にまで見た構図であるが、今は夢の実現のときではないことぐらい、五条にだって分かる。そのくらいの分別はつく。
     さらさらの金糸が守る頭骨の中では、事態の把握を試みようと脳がフル回転していることだろう。しかし、可哀想なことに羞恥による熱と動揺のせいで出来の良い頭は思うように働かず、一向に問題は整理されていないようだ。
     一足先に混乱から回復した五条は、滅多に見られない七海の姿をもっと堪能したいと思った。しかし、可愛らしい恋人をこれ以上苦しめるのは心が痛いとも思った。欲望と思いやりを天秤にかけた五条は、問題を単純化して解決し、なおかつ自身の欲望と思いやりを叶える妙案を閃いた。要するに、この事態を生み出した原初に立ち返れば良いのである。
    「キスの日だから、キスしよ。ななみ?」
     甘えるような声で呼びかけると、しばらく逡巡したのちに、胸の上の愛しい人がむくりと体を起こした。
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    ちゃん

    DONE家事代行がお仕事の七とお笑いがお仕事な五の恋模様についてのお話
    ハラホソパロ

    妄想がおもむくままに書いてしまったばかりに
    あまりに注意点が多いので何でもばっちこいな方向けです。
    タイトルは個人的にハラホソの出囃子っぽいな〜と思ってた曲のタイトルをもじったものです。
    甘い天国 今をときめくお笑いコンビ『祓ったれ本舗』といえば、初舞台から熱心なファンを獲得し、感度の鋭いマニアからはネタのクオリティに一目置かれ、同業者からはいつか必ず奴らの時代がくると恐れられ、結成三年目には日本一面白いコンビを決める賞レースの敗者復活戦を制して、勢いそのままに「しょせん人は猿か否か」を議論するというセンセーショナルなネタで最年少優勝を果たしたコンビである。
     ネタの内容は物議を醸したが、確かに彼らはあの日、誰よりも爆笑をさらっていたし、審査員から見てもネタの構成、間、声の強弱、表情、立ち振る舞い、際どい内容を笑いへと昇華する技術は群を抜いており、審査員はみな口を揃えて「これほどまでに美しい漫才を見たことがない」と評した。コンビの見目が良いこともあって、メディアは彼らを新時代のニュースターとしてもてはやした。
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