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    宇沢@niji_uzawa

    MDZS/cql 忘羨/曦澄

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    宇沢@niji_uzawa

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    忘羨ワンドロお題「禁言術」をお借りしました〜

    #忘羨
    WangXian

    211016 忘羨ワンドロ「禁言術」 当時、藍忘機にとって、予期せぬ嵐のように現れた魏無羨という人の存在は、彼がそれまでの十五年の人生で懸命に築き上げて来た堅固な牙城を、まさに砂の城の如く、いとも簡単に吹き飛ばしてしまった。逆撫でた人の神経を、さらに畳み掛けるように平気で逆撫でてくる無遠慮さ。全く道理の通っていない言い分。誰に睨まれようと顔色一つ変えない大胆不敵さ。こんな人に会うのは初めてだった。藍忘機は、元来、人と馴れ合うことを望んではいなかった。修行の道は己と向き合うこと。師と呼べる人から教えを請うこと。それを邪魔するものは、人であれ物であれ、極力避けることが肝要だ。しかし、彼はその避けるべきことを、その言動と行動全てで自分に押し付けてくる。酒、兎、忌まわしい図絵。厳粛なる雲深不知処において、大声で人の字(あざな)を呼んで周り、座学で邪道を語れば、神聖な冷泉で飛沫を上げて泳ぎ回る。そして、そこにあるのはいつもあの笑顔だった。

     あれから二十年以上経った。
    「魏嬰、お茶だ。そこへ座るといい」
    「うん!」
     茶を淹れたことを知らせると、静室の床に寝転がって日向ぼっこをしていた彼は、パッと起き上がってこちらへやって来た。しかし、魏無羨は藍忘機が茶器を置いた場所を無視して、机の向かい側に座らず、真っ直ぐに藍忘機のところへやって来た。そのきらきらとした瞳は期待に満ちている。
    「藍湛、俺を抱き締めて」
    「うん」
     かけがえのない笑顔は今この腕の中にある。二人は毎日ように飽きもせず、こうして抱き合い、愛し合っている。藍忘機にとっては、彼を失っていた十三年を思えば、何度抱き合おうとその度に胸の奥から熱い思いが溢れて来るのだった。藍忘機は彼と出会った日々のことを詳細まで鮮明に覚えているが、目の前にいる物覚えの悪い夫はどこまで覚えているだろうか。
    「なぁ、藍湛。お前はいつから俺のことを好きだったんだ?」
     無邪気に見上げる澄んだ瞳に藍忘機は言葉に窮する。いつからと言われると簡単には答えられない。雲深不知処から彼が追い出された後は、心から望んでいた筈の平穏な日々に物足りなさを感じていた。抹額を解かれたあの日から、彼に抱く劣情がちらちらと頭を過ぎるようになった。玄武洞での死闘の後、眠り続ける彼の頭をそっと膝に載せ、穏やかな寝顔を見詰めながら春の陽射しのようにあたたかで、鳥のさえずりのように擽ったい感情が自分の中に芽生えるのを感じた。百鳳山で無理矢理唇を奪った時、見ないようにして来た己の中の強い衝動をもう無視することはできなくなった。そして……
    「どうした?俺はお前に禁言術をかけてないぞ?」
     長いこと何も言おうとしない藍忘機に痺れを切らした魏無羨が揶揄うように言う。
    「おい、藍湛。そうやっていつも黙ってれば済まされると思うなよ。何とか言え」
     柳の枝のようにしなやかに垂れ下がる青糸の髪を掬い取り、人差し指にくるりと巻きつけた。挑発的にこちらを見る彼の愛らしさに藍忘機はしばし言葉を失って、魏嬰の腰を抱き寄せる。
    「俺の顔をそうやってじっと見て。俺の顔がそんなに好きか?」
     藍忘機は迷うことなく頷いた。
    「君の全てが好きだ」
     突然面と向かって告白された魏無羨は顔を赤らめざるを得ない。
    「おいおい!だから愛の告白をする時は前もってそう言えって言ってるだろう!」
     藍忘機は口元に微笑みを浮かべ、魏無羨の頬に手を添えた。
    「君がいつから私を好きになったか教えてくれるのなら、私も言おう」
    「な……!ずるいぞ、藍湛!」
     それを交換条件に出されてしまったら黙るしかない。冷静に振り返るには、まだあのむず痒い感情を抱いていた記憶はあまりにも鮮明だ。魏無羨は少し考えてから、にやりと笑ってみせた。
    「いつからかは思い出せないから、代わりにお前の好きなところを言おう」
     魏無羨は藍湛の目を真っ直ぐに見詰めた。
    「お前のその瞳の色、鋭い眼差し。鼻のかたち」
     鼻筋をスッと撫でて、自分の鼻先を相手の鼻先へ擦り付けて楽しそうに笑う。
    「毎晩、俺の体の隅々まで一生懸命、乳飲み子みたいに吸うこの唇」
     唇と唇が触れそうな距離で囁かれ、藍忘機の口元が緊張したように、きゅっと結ばれるのを見て、魏無羨はますます機嫌を良くした。
    「ここも、ここも好きだ」
     魏無羨の悪戯好きな指先は藍忘機の喉仏を擽り、恥知らずな手はその逞しい胸元をそれはいやらしく撫でる。
    「それから、特にこちらのすごい……」
     彼の手が危険な領域へ達する前に、藍忘機は魏無羨を床へと押し倒していた。目論見通り、藍忘機を挑発することに成功した魏無羨は、声を上げて笑う。
    「あははっ!藍湛!含光君!まだ昼間だぞ?こんな雲深不知処中の人間が起きてそこら辺を歩いている時間に俺を犯そうなんて、お前、正気か?いいか?俺は恥ずかしくもなんともないから、大声で喘いでやるからな。お前は俺に禁言術をかけないかぎり、今、俺を犯すことなん……んんっ!?」
     突然、口を開くことができなくなり、魏無羨はまさか本当に藍忘機が自分に禁言術をかけたのかと信じがたい気持ちで彼を見返した。
    「んんー!んんっ!?んんんんーっ!!」
     いくら叫ぼうとしたところでそれは叶わない。藍忘機の手が魏無羨の両手首を掴み、頭の上で押さえ付ける。
    「いつからかはわからない。しかし、君に対する想いは君に会った時から年々強くなっって行った。それは今も同じだ」
     その鋭い視線を見た瞬間、すっかり怒りを忘れてしまった魏無羨の脚は愛する夫の腰へとしっかり巻きついていたのだった。
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