「ぅんんッ!」
腕で顔を覆っているせいで快楽でびくりと腰を浮かせる様も、ぴんと紅く張った胸の飾りも、全てが強調されているようでより一層いやらしく見える。
「イオリ、力を抜け。私の背中に手を回していいから…」
「はぁっ、あ…」
己の首に腕を掛けさせんと伊織の手を優しく取ろうとすると、ぐっとその腕に力が入る。
「っ駄目だ…!」
「イオリ…」
「頼む、セイバー…。顔を見られたくないんだ」
顔を覆う腕の隙間から見える瞳は快楽に蕩けているものの、やはり僅かに正気が残っている。
目尻に溜まる涙を見て、セイバーは今夜も仕方なく伊織の腕から手を離した。
発端は、只の魔力供給の筈だった。
太夫や鄭からサーヴァントとの魔力供給の方法を幾つか聞くと、できる限り側にいる事や血液からの摂取が主といった事だったので、セイバーと伊織はそうしていたのだが。
ある時伊織達は若旦那、もとい逸れのルーラーにも効率的な魔力供給について聞いてみたところ、最も効率的な方法は閨で体液や粘膜から魔力を摂取する事だとあけすけに言われた。
『さ…流石に無理があるな…。イオリ、君は嫁入り前の娘だろう。テイやタカオ達の言う通り、やはり血液から…』
『? 問題ないだろう。俺は女を捨てた身。師匠と同じように、誰かと添い遂げるつもりは無い。それに俺に高い魔力は無いのだから、質より量を取るべきだ』
『な、え、イオリ…? まさかとは思うが…』
『まさかも何も。一度まぐわうぞ。それで血液の方が良さそうであれば、これまで通りでいいだろう』
『しょ……正気かきみは!?』
そういった理由で始めた、体液を直接触れ合わせる魔力供給。
だったのだが。思わぬ事態が起こった。
それは──。
『あっ、ぁっ…! っ、あァ!』
『っ、イオリ、イオリっ…!』
『ゃだ、せいばー、もっ、これ以上は、むり、で……!』
『きみが! 言い出したんだろう!』
『んやっ、んんんっ…!』
身体の相性が良過ぎたのだ。それはもう、セイバーも伊織も我を忘れる程に。
はじめのうちは「あくまで魔力供給を滞り無く行えるように」と、丹念に、しかし事務的に事を進めていたのだが。
触れて、解して、蕩かせていくうちに。はじめは気まずげに視線を逸らしていたが段々と肩口まで赤く染め上げて嬌声を漏らしていく伊織の姿に、セイバーはもっと見たいと欲を見せたのだ。
閉じる事を忘れた口元から零れ落ちる唾液を舐め取り、腰を掴み直して奥を抉るように突くと、とぷりと泉のように溢れた愛液から魔力をじわりと感じる。
『あっ、あっ、んぁ…』
『ん、く……っ、はぁ……』
動かずに心地良さと快楽を愉しんでいると、もっと動けと言うように膣壁がうねり、セイバーは口角を上げてみせる。
『ははっ…、イオリ。ココは随分と素直だな』
『ふッ、や、ァ、あ』
『嫌、ではなかろう。安心しろ。きみを満足させるくらいの技量は持ち合わせているつもりだ』
たった数時間で見つけた好い所を亀頭で擦るように腰を回せば、白い喉を晒してまた高い声を上げた。
『んぁ、あ! せ、いばー、セイバー!』
『あぁ…、愛いなぁ、イオリ』
静謐さを感じられる月夜の瞳が涙に濡れ、まるで海を感じさせる。海に良い思い出は無いが、この瞳に浮かぶ海だけは何故か好きだとセイバーは思った。
それと同時に、唇を合わせる。
『!』
『……唾液にも、魔力は含まれている。嫌だったか?』
目を見開く伊織を落ち着かせるように額に貼り付いた前髪を払ってやると、ゆっくりと首を振ってみせた。
『嫌、では…』
『なら良い。…そら、こうするともっと気持ち良くなれる』
『っんぅ、セイ、バー…』
もう一度唇を重ね、上顎を舌で擽りながら腰を揺らす。ぞくぞくと腰から背中にかけて走る快感に、伊織の瞳は再び蕩けたのだった。
翌日。セイバーが目を覚ますと、目の前にあったのは朝日に照らされた伊織の寝顔だった。
普段は敷布で眠る伊織の隣でただ静かに座って朝日が来るのを待ちながら瞑想しているのだが、流石に昨晩は寝落ちてしまったらしい。