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    setsuen98

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    setsuen98

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    同棲してる🔗🔮が仲直りする話。

    #violisko

     サニーが思うには、喧嘩のきっかけは些細なことだったと思う。……多分。
     同じ家に住んでいてもすれ違う事ばかりで、ここ数日はお互いの顔をろくに見ることもなかった。
    時間に余裕が無くなると共に、心にも余裕がなくなる。いつもなら軽く流すような浮奇の一言に苛立ってしまい、わざと神経を逆撫でする様な嫌な物言いをした自覚はある。一度言い合いになり始めると売り言葉に買い言葉で互いに止まらず、応酬は次第にヒートアップしていった。そんな中で投げ合う言葉はひどいもので、これ以上はまずいと頭の隅に残る冷静な部分が警鐘を鳴らす中、互いに仕事の為に家を出なくてはいけない時間が迫り強制的に終了となった。口論の〆は、サニーの「お互い頭冷やしてちゃんと考えたほうがいいかもね」という言葉になり、その日、二人が顔を合わせることは無かった。
     日付を越える頃帰宅すれば、二人の家のどこにも浮奇の姿は無く、焦りを感じながら互いの予定を書き込むスケジュールボードを見ると今日はもとより泊まり込みでの収録があるようで、家を出て行ったわけではないと分かり安堵のため息が溢れる。
    昼間はカッとなってしまったものの、時間が経てば襲い来るのは散々なことを言ってしまった罪悪感で、顔を見たら真っ先に謝って抱きしめようと考えていた。浮奇はなかなか許してくれないかもしれないが、何度でも謝って仲直りをして、キスをして、抱き合って温かい布団の中で二人で眠ろうと思っていたのに…仕方がない事とはいえ出鼻を挫かれた気になり、さっさとシャワーを浴びて潜り込んだ布団の中はひどく冷たく感じた。

     漸く浮奇の目を見ることが出来たのは、それから二日後のことだった。
    ひとり寂しく眠った翌日は帰宅した時既に浮奇は自分のベッドで眠っていて、いつもならばたとえ一人だろうと当然のようにサニーのベッドで眠っているのにも関わらず、滅多に使われることのない浮奇用のベッドで眠る姿にまだ怒りは鎮まっていないのだろうかと小さなため息が溢れる。泊まりがけの仕事で疲れているであろう浮奇を起こすわけにもいかず、明日こそはと願いながら二日連続でひとり寂しく眠れない夜を過ごした所為で、その翌日は浮奇が帰宅する前に寝落ちてしまうという失態を犯した。朝日が差し込む誰もいないリビングのソファーで目を覚ました瞬間の絶望は、身体にかけられた浮奇愛用のブランケットに気づいた瞬間消え、今夜こそはちゃんと仲直りをしようという意気込みに変わった。
    そんな意気込みを胸にきっちりと時間通りに仕事を終え帰宅すれば、灯りの灯る室内に思わず脱いだ靴を揃えることも忘れ、廊下を足早に通り抜けリビングへ繋がる扉を開くもそこに焦がれた姿はない。が、その奥の寝室のドアが完全に閉まる瞬間を捕え、後を追うように入り電気を点けるとまるで怯えた猫が逃げ込むように自身のベッドへ潜り込もうとしている背中が目に入り、引き止める為に名前を呼ぶ。
    「…ねぇ、浮奇」
    「何」
     呼び掛けを叩き落とすような、短く鋭い声音の返事だった。だけどそれは怒りや拒絶などではなく、怯えからだと分かる。浮奇のことはこんなにもよく分かっていた。
     人を揶揄って遊ぶ時は獲物を狙う猫のように生き生きとした様子を見せるくせに、他の部分では感情の発露が下手くそで、時に勝手な思い込みで暴走する面倒臭い子。なのに、そんな所も可愛いと思えるのは、正真正銘惚れた弱みというやつで。
    そんな臆病な浮奇は、きっと不用意に近づけばどうにかしてこの場から逃げてしまうだろう。なるべくゆったりと静かに足を進め、自分のベッドへと腰掛けその背中に向けてそっと言葉を投げかける。
    「浮奇、話をしよう。隣に座るのが嫌なら、そっちに座ってくれていいから。ちゃんと顔見て話したい」
    「…何を話そうって?別れ話?」
     僅かな迷いを見せながらもこちらを振り向いた顔色は、いつにも増して青白い。そんな顔色に思わず眉根を寄せてしまうと、それを目にした浮奇が怯えるようにぴくりと肩を震わせ唇を噛むのが目に写り、咄嗟にいつもの調子でその行動を咎める。
    「あ、こら。噛んだらだめだよ。傷つくし、唇の形悪くなるって言ってたのは浮奇じゃん」
    「…自分の口なんだから、どうしようと俺の勝手でしょ」
    ちらりと一瞬こちらを窺い見るも、再び視線は床へと落ちていき、意地を張るようにぽしょぽしょと小さく返す姿はまるで警戒する猫のようで、それすらも可愛らしく思えてしまい意図せず口元は緩く弧を描く。
    「だめだって。それは俺のものでもあるんだから」
    その言葉に弾かれたように顔を上げ漸くまっすぐこちらを見る浮奇を見ると、数日前の自分の言葉でこんな風に怯えさせてしまった後悔と、そんなに自分と離れたくなかったのかと愛おしさで胸が痛み、僅かに歪んだ笑顔になってしまう。それでも、少しでも安心してもらえたらと願い、笑顔を崩す事なく口を開く。
    「全部もう俺のでしょ。…浮奇が好きだよ。絶対に別れたりなんかしない。仲直りさせてよ」
    心からの言葉が浮奇にちゃんと聞こえるように、届くように、はっきりとした声音で告げベッドに腰掛けたまま両腕を広げる。これをされるのが好きだということも、二人で過ごす中でちゃんと分かっている。
    見つめ合ったままお互い無言の時間が過ぎるも、差し出したままの腕を軽く揺らし「ん、」ともう一押ししてやれば、漸くそろりと足を踏み出すのを見逃すことなく自らも身を乗り出し捉えた腕を引いて華奢なその身体を抱き込み、自身の膝の上へと乗せる成功した。少し強い程の力で抱き締めながら、背を丸め覆い被さる様に包み込んでふわふわとした髪に鼻先を埋め、固まってしまった身体をゆらゆら揺らし「おにょー、俺のねこちゃんが怯えきっちゃってる。よーしよし、怖くないよー」とおどけてみせるうちに、腕の中で吐息まじりの小さな笑い声が溢れ、強張っていた身体から力が抜ける。くたんと全身を預けてくるこの瞬間が、それはもうたまらなく好きで、みぞおちから喉にかけて締め付けられるように甘く痛む。
    「…ごめん。余裕がなくて、浮奇に沢山ひどいこと言った。ごめんなさい」
    「俺も散々言い返したし…、おあいこでしょ」
    「……ありがと。でもちゃんと謝りたかったから...うん、じゃあお互い様ってことで、仲直りしよっか。…今日は一緒に寝るだろ?」
    有耶無耶にして終わらせることはしたくなくて、反省を声音に含ませ自分なりに丁寧に丁寧に謝罪する。腕の中で大きく息を吸って僅かに膨らむ薄い背中を手のひらで撫で、すんなりと与えられた赦免の言葉に有難く甘える事にして顔を覗き込み問えば、こくんと頷くのを確かめそのままベッドへと倒れ込む。
    「あー……浮奇の匂い…最高……」
    「ふ…、なに言ってるの。変態っぽいよ」
    「猫吸いならぬ浮奇吸いを楽しんでるだけです。健全です」
    片腕で抱え込んだまま掛け布団を何とか引き摺り出しつつ何度も深呼吸をして存分に堪能し、何気ない軽口にすら癒しを得ながら浮奇の顔を覗き込むと既に瞼は閉ざされ、うとうとと微睡むその目元に薄らと浮かぶ隈に喧嘩なんかするものじゃないと大いに反省しながら灯りを落とす。
     浮奇がもうサニーのぬくもり無しでは眠れないように、サニーにとっても浮奇無しでは満足に眠れなくなってしまった。こんな風に以前の自分とは変わった部分に気付く度、僅かな驚きと共にそれほどまでに恋人を愛している事を実感し、とてつもない幸福に満たされるのだ。
     そっと目を閉じ、もう一度深く、深く息を吸う。肺と共に胸中が満たされるのを感じながら、吐く息が肌を掠め擽ったそうに身動ぐその身体をぎゅっと強く抱き締めると、猫の尻尾の様にしなやかに動く足がぺちりと脛を打ち不満を訴える。そんな可愛らしい仕草に、噛みたい、頬をつまみたいと次々湧き上がるキュートアグレッションを押し殺す為に大きく溜め息をつけば、寝不足な恋人の安眠の為にと葛藤している事などつゆ知らず、幸せそうに眠りにつこうとする浮奇の足がまた布団の中で踊った。
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    Replies from the creator

    setsuen98

    DONE🌊🔮♀。大学生×社会人。
    過去あげた大学生×社会人のシリーズですが、これだけでも読めます。ですが良ければそちらも読んでみてください。
     先週のデートの際スハがそわそわとしながら手渡してくれた箱の中に収まっていたのは、うっかり指を引っ掛けでもしたら千切れてしまいそうなほど華奢なシルバーチョーカー。
    チャームも何も無いシンプルなデザインながら、フリルのような繊細な動きのあるチェーンはそれだけで上品に存在感を放ち、どんな服装にもマッチするセンスの良い品だが、箱を開けて真っ先に浮かんだ言葉は「誰と選んだの?」だった。ファッションやアクセサリーにそれほど興味がないスハが選ぶとしたら、シンプルなものだとしても何かしらの石やモチーフがついた無難とも言えるネックレスを選ぶはず。彼が一人で選ぶには、デザインが洗練されすぎていた。
     流石にスハのセンスじゃないでしょ、なんてそのまま問うなんてことはせず、オブラートに包んで包んで、それはもう遠回しに訊けば大学の友人達と出かけた際ショップについて来てもらいアドバイスをもらったのだと言うが、「その時に教えてもらったんだけど、チョーカーって“傍にいてほしい”って意味があるんだって」と伏し目がちに照れながら口にしたスハに、そのメンバーの中に女がいたことを確信して問おうとした矢先に続けられた「あと、彼氏がいますって印になるって聞いて……着けてくれる…?」と、私よりも背が高いにも関わらず器用に上目遣いで見つめてくる年下彼氏の可愛さにやられて、もういいか、という気になってしまいイチャイチャタイムに突入した、というのがその時のハイライト。
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    setsuen98

    DONE🌊🔮。芸能人×メイクさんパロ。
    まだ付き合ってない二人です。
     大きな鏡に写る自分の顔を見れば、あまりに不格好な表情に苦笑が溢れる。無意識に眉間に力が入り平素に比べ険しい目元に反して、口元はスタンプを押したようにわずかに口角が上がったまま。デビュー当時から、基本的にいつでも笑顔で、と口酸っぱく言われ続けた教えに忠実に従う自分の表情筋が今は恨めしい。
     デビューしてから駆け抜けてきたこの数年、自分なりに努力を積み重ねてきたおかげか、歌だけではなくテレビ出演や演技など、様々な仕事をもらえるようになった。有難いことに熱心に推してくれるファンもつき、かつて夢見た姿に少しずつではあるが近づけている。それなのにどうにも自分は欲深いようで、同じ事務所の後輩たちがデビューするなり順調すぎるほどのスピードでテレビやステージなど華々しい活躍を見せる度、劣等感と羨望が溢れどうしようもない気持ちに苛まれ、手のひらに爪が食い込むほどに握りしめそうになるのを堪えてすごい!と手を打ち鳴らす。そんな自分の姿が滑稽で醜くて、後輩たちに合わせる顔もなくなって、思考が自己嫌悪で埋め尽くされる。そんな気鬱が続く時がたまにあり、今まさにそんな気持ちを抱えながら雑誌撮影のためにメイクルームに入れば鏡に映るのはこの様。思わず項垂れ、少しでも胸中がすっきりしないかと大きく長く息を吐く。
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    setsuen98

    MOURNING🦁👟みたいな何か。付き合ってません。
     ほぼ満席状態の店内。二人掛けのテーブルにルカと向かい合って座ってから、なんとも言えない無言の時間が過ぎていく。と言っても実際には大した時間は経っていないけど、黙り込んだまま相手が口火を切るのをただ待つ時間は何倍にも長く感じられる。だからと言って、いつもの快活とした姿とは異なり神妙な顔でテーブルを見つめるルカに「話って何?」なんて無遠慮に本題へ切り込むことなんて出来なくて、手持ち無沙汰にカップに口をつけブラックコーヒーをちびちびと啜るしか出来ず、日差しが降り注ぐ外をいい天気だなぁ…なんて現実逃避まがいに眺めていた。
     「シュウに相談したいことがある」と改まって連絡がきた時は、一体何事かと身構えてしまった。まさかルカの身に何か深刻な問題でも起きているのかと心配になり即座に了承の返信を打てば、カフェでお茶でもしながら聞いて欲しいとの思いのほかゆったりとした回答に、勝手な杞憂だったのかと胸を撫で下ろしたのが数日前のこと。ただ実際に顔を合わせてみるとこんな風に一切読めない様子で、大きな問題でないことを願う最中、突然ルカが顔を上げ僕の方を見つめたかと思えば、また直ぐに視線を落とし何度か口をモゴモゴとさせてようやく口を開いた。
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