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    nekotakkru

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    ほんのり暗め

    #ニック亀
    #TMNT
    #ML

    堕ちた太陽暗闇はずっと仲間だと思ってた。いや、仲間という表現はどこか違和感を感じる。でも幼い頃からずっと側にあって当たり前の存在だった。地上を知らなかった俺達にとって、時々下水道に降り注ぐ太陽の光は暗くなるに連れて姿を消すから暗闇が嫌いなんだと思っていたし、ドナテロが電気の通った照明を作るまでは先生が持っていた蝋燭の明かりだけが光だった。なのに、どう言うわけかミケランジェロは暗闇を怖がった。

    「ねぇレオ、一緒に寝てもいい?」

    くまの人形を抱きながら真っ青な瞳を潤めて俺にそう訊いてくる。ミケランジェロは寝相が悪いし、たまにイビキもかくからあんまり一緒に寝たくはなかったけど、俺は兄と言う立場で、頼られることが嬉しかったからいつも、しょうがないな、と言ってベッドに末弟を招き入れた。
    ミケランジェロは俺のベッドに潜り込むと決まって俺を抱きしめる。人形を抱いていたらいいのに、温もりがある方が安心するからと俺の首に手を回してた。眠りにくいと文句を言っても聞かないからそのままにしておく、その内夢の中に旅立つと離れることを知っていたから。

    「レオ。レオはさ、なんで怖くないの?」
    「何がだ?」
    「真っ暗なのが。」

    自分で言っていて怖いのか俺を抱きしめる腕に力が籠もる。苦しい、と訴えれば多少緩くなったがそれでも強ばったままだ。緊張を解すように腕を撫でてやれば嬉しそうに笑ったのが分かる、それでもミケランジェロは怯えていた。恐怖を吐き出すためにぽつりと言葉をこぼしていく間も、俺はミケランジェロを慰めた。

    「暗闇って、何かが出てきそうで怖くない?お化けとか、モンスターとか。いきなり腕を掴まれて、引きずり込まれて、それでそれで、バリバリバリバリ頭から食べられちゃうんだ...!」

    縮こまるミケランジェロには悪いが、俺にはそんなの漫画の世界としか思えない。もちろん漫画は好きだけど、現実と織り交ぜるなんて馬鹿げてる。お化けやモンスターなんて存在するわけがない、自分自身はともかくとして。それに、この下水道には自分たち親子しか住んでいない。もし暗闇で腕を掴まれたとしたら、それは遠くへ行きすぎたミケランジェロを連れ戻しにきた家族の誰かだろう。

    「心配するな。この暗闇には俺達家族しかいないし、マイキーを襲う奴もいない。俺達はずっとずっと一緒なんだ。だから、もう怖がるなよ。」

    力強くそう言ってやればミケランジェロもようやっと安心したのか、少し体の緊張が解れる。本当?と聞き返す言葉に俺は何度も本当だ、と返した。ミケランジェロがさっきよりもより笑顔になり、俺もつられて笑う。

    「ありがとう、レオ。ずっとずっとボクの傍にいてね。」

    そう言って一度ぎゅっと抱きしめられると、力が抜けたようにあっさりとミケランジェロは寝息を立て始めた。少し呆れてから、俺も静かに目を瞑る。部屋の暗さとは違う、新たな闇。でも、怖いとは感じない。やはりこれは俺にとって当たり前の風景で、常に傍らにある存在だ。それが怖いだなんて、俺には一生理解できない感情だと思っていた。








    そう、思っていたんだ。









    吊された腕は鎖が食い込んで痛いし、薄皮はめくれて血が滲んでいる。視界はマスクの部分をずらされもう随分と光を見ていない。何時からこうしているのかも忘れてしまった。先生や、他の兄弟はどうしているだろう。何よりも、俺をこうしている犯人は誰だろう。
    ギギギ、と不快な音がした。恐らく扉が開いた音なんだと思う。かび臭いこの部屋から察するに扉も相当年期が入っているはずだ。古い場所にある部屋なら、廃墟と認識されて俺がいることも気付かれないだろう。そうだ、だから兄弟達は俺に気付かないんだ。そうに違いない。

    「レオ。」

    高い、幼い声が俺を呼んだ。よく知っている温かくて甘えん坊の弟の声に似ていると思った。俺の頬に温もりが触れる、包み込まれる感触から手の平だと分かった。この手も、俺のよく知る弟に似ていると思った。

    「レオ、ごめんね。こんな所に一人にしちゃって。ボクが帰ってきたからもう怖くないよ!」

    鼻や唇に触れる皮膚は、相手の唇だろうか。小さくて柔らかい。体全身にくっついた塊、きっと俺は抱き締められている。俺をこんな目に遭わせている相手。なのに何故憎悪を向けることが出来ないんだろう。悲しいという感情が浮かんでくるんだろう。ふと頭を過ぎったのは太陽のように明るい笑みを向けるミケランジェロの姿。光を見ていない俺にとって、想像とはいえその笑顔はとても眩しかった。

    ああ、ミケランジェロが言っていた恐怖とはこれなんだろうか。

    姿が見えない相手に対して抱く嫌悪と、何をされるか予想できない未知に対しての想像。加えて、為す術がない自分の状態。頭にミケランジェロの姿が過ぎったのも、恐怖からの逃走だったのかもしれない。今なら弟の気持ちが分かったから、恐怖に震えるあの小さな体を抱き締めてやるのに。

    「レオ、震えてるね。大丈夫だよ、怖くないよ。だってボクがずっと傍にいてあげるから。ずっとずっとずぅーっと、離さないからね。」

    ミケランジェロの笑顔が黒い闇にかき消されていく。昔感じた、太陽が消えるという感覚は間違っていたんだと思う。きっと、太陽は闇に飲まれてしまったんだろう。だって、開いているはずの目を限界まで広げてみても、目の前の太陽は何処にも見えないんだから。
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