負けたくないけど(いこおき)「……っ、ぷ、はっ」
ぴったりとくっつけていた唇と擦り合わせていた舌をほどいて顔を逸らし、肺に空気を取り込んだ。
息苦しさで目元に滲む涙を手の甲で拭うと、イコさんの手に捕まえられた。
「ああ、こすったらあかんて。赤なっとるやん」
目元と耳は赤みを帯びているものの、少しも息を乱していないイコさんをじっと見つめる。
「ねぇイコさん、ほんまに息止めてます?」
「止めとるて。ちゅーしながら鼻で息よぉせん、てゆうとるやん」
「イコさんの肺活量、どないなっとるんです……?」
「体力測定ん時に水泳やらんか、て誘われたことあったわ」
おれの腰に回ったイコさんの腕は太く、多少体重を預けてもびくともしない。
小さい頃から刀を振って鍛えているから腕力だけでなく体幹も強いし、サッカーもやってたそうだから足腰もがっしりしている。
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