揺れる想いは雪に閉ざされて※ラストは公式展開を捏造しています
プロローグ
「ふう」
すっかりクリスマスのムードで溢れている銀座の街。
その一角のカフェで朝日奈唯は小さくため息をついた。
「また思い出したのかい、京都で会った彼のことを」
向かい側に座る仁科諒介が優しげで、それでいながら切なげに唯を見つめてくる。
「ごめんなさい」
何度も繰り返してきた光景。
彼と初めて会って間もないときから、唯はため息をついては仁科に心配をされた。
「いいよ」
こう返されるのも数えきれない程になる。
その言葉が彼の本心だとわかっているからこそ、余計申し訳ない気持ちになる。
それが彼ー仁科諒介と出会い、親しくなってから定期的に繰り返される光景だった。
窓から見える風景はすっかり日が落ちている。
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