これが私が選んだ未来プロローグ
仁科諒介は関東特有のからっ風が吹き抜ける中、ひとりで佇んでいた。
あたりを見渡すとクリスマスの装飾をほどこされたもみの木があり、そして建物にはイルミネーションが灯されていた。
先ほど行われた国際コンクール出場をかけた本選。先月から加入しているスターライトオーケストラは、本命と言われたグランツ交響楽団を下し、見事に国際コンクールへの出場を決めた。
そして、中心となってヴァイオリンを弾いていた彼女のことを眩しく思いつつも、今まで出会った女性とは違う感情で見つめていることも仁科は気がついていた。
だからこそ、演奏会直前の大切な時間にも関わらず彼女に話しかけた。「コンクールが終わったら、ホールの外のもみの木の下で待っている」と。
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