香りが教えてくれた恋の行く末「葵、今度の土曜日暇?」
「あ、ごめん。その日は黒橡のライブチケット発売日なんだ」
「黒橡、黒橡って、ちょっと時代遅れのビジュアル系どこがいいのよ」
クラスメートの里穂の言葉に思わず苦笑してしまう。
黒橡。堂本大我さんと御門浮葉様のふたりによるクラシック系ユニット。
今年初めにデビューしたばかりで、ふたりが奏でる音色はクラシックのことがわからない私でも引き込まれてしまう。
そして、演奏以外でもふたりはそれぞれ違った意味でカッコよく美しく私は見惚れてしまう。
ネットやテレビ越しで見ていたふたりだけど、ようやく念願のライブ参戦が叶いそうで私は浮かれていた。
「いいよ。わからなくて」
里穂の言葉ももっともだ。
黒橡のふたりは高校生でありながらも人生をどこか達観したところがある。
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