「お師匠」
月の瞳が私を見る。
「お師匠はどこから来たんですか?」
生き物が寝静まった頃、膝の上に広げた地図を見て、ふと尋ねる。ランタンの灯が揺れている。
「この中にありますか?」
この森が位置する箇所、らしい印を指でなぞる。お師匠が隣に腰掛けて答えてくれた。羊皮紙を眺める横顔を盗み見ていた。
「いや、この地図にはないね。…僕の生まれはもっと北にある」
「とおい、ですか」
「遠いね。名前もない土地だよ。…生まれ故郷ではあるけど、過ごした年月は旅をしている年月の方がずっと長い」
ゆらり、ゆらり。揺れ動く影が一瞬あのひとを覆う。
「…いつか、連れてってくれますか」
「知りたい、です。お師匠が過ごしたところ。お師匠が歩いたところ」
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