第83回お題【重陽の節句】 東海国、金華山の頂にそびえ立つ王宮から雲海を下ってあるのは、禁軍の長である長可の屋敷である。
屋敷といっても禁軍の大将となれば、その広さは蓬莱でいうなら村と変わらず、慣れない者などは一日そこにいる賢明だと己のに与えられた仕事をこなしながら、徐々に屋敷の構造を覚えていく。
その長可の屋敷に訪れた春は、使用人達の間で毎夜のように話題に上がる。
里木から人がなるこの世界で婚礼とは、天が選んだ夫婦の結びつきだけで、なすものである。
だが長可が選んだ嫁はようやく正丁を迎えたような青年であった。
長可も見た目だけなら嫁御と年は変わらないが、彼は不老の仙である。
不思議に思っても長可の主、すなわち主上である信長が認めたのだから一介の下働き達が何を言おうとも無駄である。
2883