淡恋歌⑥唄を忘れた 金糸雀は 後の山に棄てましょか いえいえ それはなりませぬ
唄を忘れた 金糸雀は 背戸の小藪に埋めましょか いえいえ それもなりませぬ
唄を忘れた 金糸雀は 柳の鞭で ぶちましょか いえいえ それはかわいそう
唄を忘れた 金糸雀は 象牙の船に 銀の櫂 月夜の海に浮かべれば 忘れた唄をおもいだす
「もし!そこの旦那。そこの、眼帯の」
家の風呂を新しくするんでその工事のため家のは使えず、銭湯通いが続いていた。今日は少しばかり普段より早めに汗を流そうかと思い立って、昼餉を納めた胃袋が落ち着いてから早々に散歩がてら家を出た。ぶらぶらといつもと違う道を歩いていると、ちょうど通りすがった店から声を掛けられたのでそちらを見ると、そこは飼い鳥を主に扱う店で、様々な色をした鳥が入った籠が店先に吊られ、中を覗くと店内にもまた同じように籠が整然と並んでいた。無意識にあの鳥はいるのだろうかと、目を走らせる。
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