夏にエアコンが壊れたら「凛ー! りん! りーんー!!」
騒々しい声。けれど俺の好きな声。意識が浮上しかけた俺はそのまま浮き上がるかもう一度沈むかを考える。今日は盆休みの一日目、しかも同棲している男との休暇が奇跡的に重なっている。そして先ほどの騒々しい声の主は、昨日の夜はもっと熱っぽく俺を呼んでいた。外は大雨で、雷も鳴っていて。そんな夜だったからルーティンのランニングに行くことも出来ず、あるいは周囲の家に配慮して声を押し殺す必要もなかった。
『無理させちゃってるから、明日は俺が朝ご飯作るよ。好きなだけ寝てていいし。だからさ……もう一回シよ?』続けて『お願い♡』なんて言われたら、まぁ5回も6回も変わんねぇか、なんて絆されてしまう俺も俺だ。これから起こることも知らずに、自分の順番だったはずの朝ご飯担当をやってくれるならいいかなんて思ったのが運の尽き。まさかその『一回』が3時間もかかるなんて思いもしなかった———いやそんな事はどうでもいい。とにかく主張したいのは、俺には朝ゆっくりとベッドを占領する権利があるという事だ。
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