【弓鄭】うつくしいひと 我が主、鄭明儼はうつくしい男だ。
夜から朝に変わる薄灯りの中、同じ寝台の上でまどろんでいるそのひとの、端正な顔をかたちづくるひとつひとつを目でなぞる、そのひとときが気に入りだ。
一切の無駄なくなめらかな曲線を描く輪郭の線、切れ長の瞼を縁取る長い睫毛、筋の通った鼻、かたちの好い唇、深い緑の長く艶のある髪。
それらすべてが夜の中で自分を求めて手をのばす、己の腕の中にいる、他の誰にも見せないような顔で。それにどうして愛おしさを感じずにいられるだろうか。
浅ましいと思うのと同じくらいに満たされている、どうしようもない程に。
同じ時を、体を、重ねたら重ねただけ彼にとっての唯一が自分であればいい、自分だけであってほしい、なんて、ありもしない夢を見る。
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