じゃんけんぽん!「ウぬいくん、お願い!この通り!」
「ぬや」
集会所の屋根の上で、一人とひとぬいが押し問答を繰り返している。
ウツシが両手のひらを合わせて必死に頭を下げるも、ウぬいくんは頑なに首を縦には振らない。
今日はウツシの愛弟子であり恋人である少女が、一週間の狩猟任務から帰還する日。
たった一週間、されど一週間。ウツシにとっては果てしなく長い時間に感じてたまらなかった。
今頃どんなモンスターと対峙しているのだろうとか、きっと燃えるような激しい戦いぶりを見せているのだろう、とか。目を瞑れば瞼の裏側に愛弟子の頼もしい姿が浮かぶほど。
集会所の屋根の上で見張りの番についている時ですら、頭の大部分が愛弟子でいっぱいに埋め尽くされていた。けれど、そんな悶々とした日々は今日でおしまいだ。
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