【狂聡】青春18切符2「んー……聡実くん、その言葉の意味、本当にわかってんの?」
星々の輝きが届かない真っ暗闇のような双眸に射抜かれ、聡実はごくりと喉を鳴らす。逃げ場がない助手席でおずおずと頷くと、狂児は徐に聡実の頬をなでる。元々、不健康そうな青白い顔をしているが、かさついた指先は真夏だというのにひんやりしていた。緊張しているのか頬が熱くて、余計に狂児の指先が冷たく感じられる。
狂児は聡実の輪郭をなぞり、ほっそりとした首の真ん中辺りをつつく。最近気になり始めた喉仏を優しく押し込まれ、思わず息をとめてしまう。無防備にさらされた急所にじっとりとした視線が絡みつき、冷たい汗が背中を伝う。狂児はいつもヘラヘラとしているが、ふとした瞬間に見せる気配はやはりその筋の人のものだ。聡実なんか狂児の手にかかれば赤子の手をひねるより簡単に殺せるはずで、まさぐるように喉仏を撫でられ、引きつった悲鳴がもれる。
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