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    かいこう

    @kaikoh_h

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    かいこう

    TRAINING顔/伊吹と志摩
    バットリの悪夢に囚われている伊吹
    切断とか嘔吐とか出てくるので好きな人はどうぞ
    甘々字書きワードパレット22金平糖と23ティラミス
    「ん、志摩ちゃん、ありがとー」
     志摩が新しく買ったという動物の顔を模したクッションの写真が表示されているスマートフォンを相棒に返す。
    「今回のもかわいー」
    「だろ?」
     胸を反らして誇らしげに言う志摩の可愛さに、伊吹は声を上げて笑った。結構酔っているので、知らない内に声が大きくなる。つられて志摩も笑っていた。もうすぐ日づけが変わろうとする深夜の、闇に包まれた官舎の一室が笑い声で満ちる。先月、久住を逮捕してから、自分に対する志摩の空気が、柔らかくなったと伊吹は思っていた。俺が悪い、何もかも俺のせい、というような気負った鎧が、目の前のビールの泡みたいに、すっかり薄くなった、いい感じ。久住の件で相棒としての仲がこじれるまで、結構です、の頻度は四月に比べればだいぶ少なくなっていたが、今は一層、心を開いてくれているようだった。自ら初めて部屋に招いてくれたり、柔らかくて丸みを帯びたフォルムのぬいぐるみやクッションが好きなんだと教えてくれたり。当番勤務の後で、よく互いの部屋を訪れて、今夜みたいに飲むことが増えた。最初はその日の夕方頃には帰路に着いていたのに、気づいたら、一晩泊まって、翌朝帰るという流れになっている。嫌ではなかった。伊吹にとっては楽しい。伊吹から受け取った私用のスマートフォンを手に、志摩が室内を見回した。
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    TRAINING惚気を聞くなら/smib+きゅーちゃん
    惚気を聞くなら 居酒屋で個室の座敷に案内され、メニューを手に取ったところで向かいに座った伊吹が話しかけてきた。予定がなかなか合わず、ようやく会えた今日は偶然週末で、店内はざわざわと騒がしい。話を聞こうと顔を上げれば、居酒屋の天井の明かりが映りこんだ伊吹の目は、きらきらと輝いて、明るい表情と相まって、今夜を楽しく思ってくれていることが伝わってくるようだった。
    「九ちゃん、元気してた?ちょっと聞いてほしいんだけど、志摩の話、この前、めっちゃ報告書書かなくちゃいけない日があったの、俺、報告書書くの苦手じゃん?でも負けてらんねーなって頑張ったわけ、で全部書いて、たいちょーんとこ持ってって一発オッケーもらって、一緒に帰ろつって待っててくれた志摩にお待たせって、やり直しなしだったーってピースしたらさ、何て言ったと思う?今の可愛かった、伊吹の可愛さは5,000点だなって言うわけ、えー志摩ってばちょーきゅるきゅるーつて思いながら、俺も乗って、何点満点中?なんて聞いてみたわけ、そしたら、ふふっ、なんと、100点満点中の5,000点だけどって…もーさぁ、俺さぁ、志摩の方こそ可愛過ぎのきゅるきゅる魔人でまじで分駐所でどーにかなっちゃうかと思った」
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    TRAINING君に夢中/smib
    君に夢中『あの人はどうなった?』
    『もうだめだよ。まるで腐った時計だ。過去の栄光に縋りついて、前に進もうとしないまま、すっかりあそこで朽ち果てようとしている…』
    「志摩ー、コーヒー淹れていいー?志摩も飲むー?」
     ドラマのセリフに続いて、伊吹の声が聞こえていた。リビングのテレビから台所へと視線をやる。流しの前でこっちを振り返っている伊吹と目が合った。
    「んっ?」
    「ああ、いいよ、俺のも頼む」
    「もしかして、いいとこ邪魔しちゃった?」
    「大丈夫」
     この部屋に伊吹以上のいいことはないから。頭に浮かんだ返事に志摩はひとりで照れた。志摩の返事にならいいけど、というように笑った伊吹が背中を向けてコーヒーを作り始める。つき合うようになって二ヶ月、未だに信じられないでいた。多分、奥多摩に返すかどうかはひとまず保留すると桔梗に告げた理由となったあの時にすでに好きになっていて、自覚したのは香坂のビルの屋上で生命線を見せられた瞬間で、メロンパン号で謝った後の泣きそうな顔に気持ちを伝えたくて我慢できなくなって…いろいろ考えたが、隠したつもりの好意がばれて気づかわれるよりは自分から動きたかった、だから冬の前に告白した、そうしたらちょっと考えた後で、いーよつき合おっか、と伊吹が言ったから、今では相棒の他に恋人という関係が二人を繋いでいる。信じられない…手を繋いだり抱き締めたりキスしたりセックスしたりしたけれど、志摩はまだ、どこか夢見心地だった。これまで味わったことのないような多大な幸福感、まるで地に足が着いていない。ふわふわと空に浮いているようだ。ただその感覚を楽しめばいいのに…いちいち考えずにはいられない自分が嫌になる。
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    TRAINING写真の話/smib
    写真の話 新発売のスニーカーの情報を確認し終えた伊吹は、ブランドのサイトをスマートフォンの画面より大きく見たくて借りていた志摩のパソコンから顔を上げた。ダイニングテーブルの向かいの席では志摩が私用のスマートフォンを操作している。氷入りの麦茶のグラスを取り上げた。官舎の部屋だったらとっくに融けている氷がグラスの中でからからと揺れる。昨日、当番が終わってからそのまま泊まりにきているマンションは、同じようにクーラーと扇風機を使っていても、官舎より涼しかった。それが目的でこの部屋に入り浸っているわけではないけれど。伊吹はグラスをテーブルに戻すと頬杖をついた。去年、志摩から告白された時のことを思い出すと、今でも胸がきゅんとする。きゅるきゅるしていたのは顔を赤くして好きだと打ち明けてくれた志摩なのに、こっちまで、引きずられて、誰かや何かに向かって感じるだけだったきゅるきゅるになっていくような不思議な感覚に陥るぐらい、きゅんきゅんした。実際、そうなったのだろう。その証拠に、目の前の彼氏からよく、きゅるきゅるしてると言われるのだった。無意識の内に、伊吹はにやける。にやけが伝播したかのように視線の先で志摩もふっと口角を上げた。
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    TRAININGままならない/ダニーとスティーヴ
    ままならない※s10のドリスの回を見て…勢い任せなのでいろいろあれです


    「おやすみ」
    「ああ、おやすみ」
     部屋の電気が消され、ダニーは靴を脱いだ足をソファに上げた。長いフライトの後だったので伸び伸びと手足を伸ばしたかったが、ソファの座面はそこまで大きくない。自分の身長でも膝を曲げなけりゃならないなんて、とダニーはわざと嘲笑めいたことを思った。思いどおりにはならない。辿り着いたホテルのこの部屋で、差し出されたビールを手に向かい合ったスティーヴの言葉がずっと頭の中に響いていた。暗闇の中でスティーヴが横たわっているベッドに目を凝らす。人生なんてそんなもんだ。今日までのことで思いどおりになったことと、ならなかったことを振り分ければ、断然後の方が多い。そもそも、ハワイに来るつもりなんてなかった。ファイブ・オーに入るつもりも、こんなにも長く暮らすつもりも、排他的なところがあって海が嫌いな自分が故郷だ家族だと愛するつもりも…ソファの上でダニーは身じろぐ。スティーヴのベッドからは何も音が聞こえてこなかった。思いどおりにならない。そうだ、こんなに愛するつもりじゃなかった。ダニーはシャワーを済ませた後の下着姿の自分が、今からスティーヴのベッドにもぐり込む姿を想像してみる。あるいはスティーヴから呼ばれるのだ。悲しみでかすれた声で、こっちに来てくれと。からだがじんわりと熱くなってきた。今いるソファから、スティーヴのベッドへと移動することが、ダニーにとっての思いどおり。だがダニーはこの気持ちをスティーヴに打ち明けるつもりはなかった。だからこの瞬間もまた、思いどおり…例え何やかんやあってそういう仲になっていたとしても、うまく心を癒せるとは限らない。いくらからだが近くても、心の距離もそうだとは限らないのだ。レイチェルとぎすぎすしていた頃が脳裏に浮かぶ。そんな痛みをスティーヴと味わうぐらいなら今の関係のままでよかった。そう、人生は思いどおりになっている。あるいは初めは激しかった恋の熱も、そばにいる時間が長くなるにつれ、どんどんと凪いでいった。今はもう、自分以外の人間と親密になっても胸は苦しくならない。どうかいい人生を送ってくれと願うばかりに、ここ何年かはいい相手をつくれとけしかけもした。どうかいい選択をしてくれ…ああ、でも…人生は思いどおりにはならない…思うに任せられない。自分の、あるいは子どもたちの、
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