ばっと飛び起きる。心臓がバクバクする。じわりと目元がにじむのが分かった。
真っ暗な部屋のなか、カチカチと秒針が時を刻む音だけがやたらと大きく響いている。
「どうしたの?」
隣から寝起きのためか掠れたいつもより少し低い嶺二の声。
「悪ぃ。起こしたか」
横を見れば暗闇の中でも心配そうにおれを見上げているのが分かった。
「ぼくよりランランは大丈夫?怖い夢でも見た?」
怖い夢。ああ、とても怖い夢だった。夢の内容を思い出すだけで体が震えそうになる。途方も無い喪失感はまるで現実に起こったかのようだ。
何も返事ができずにいるおれに、嶺二は布団から起き上がり、おれをその胸の中に抱き寄せた。
「もう怖くないよ。ぼくがそばにいるからね」
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