この世界には性別の他に第2の性というものがある。支配階級のα、平凡な中間層のβ、被支配階級にして最下層のΩ。この3つである。これらが発現するのは主に10代。早い者もおり個人差はあるが、俺に関して言えば、親の意向によりまだ10にも満たない歳の頃に専門機関にて診断を受けた。
「青柳さん、ご子息ですが……Ωでした」
「そうですか……」
実に残念そうに、申し訳なさそうに医師が告げる。その後の父との会話は幼い俺にはよく理解はできなかったが、ただ、自分が父の期待に添えられるような存在ではなかったのだと、それだけは理解できた。
「お前にヒートを起こしている暇はない。わかるな?」
「はい」
父はまず俺にそう言った。たとえΩであっても青柳家の人間として恥ずかしくない演奏をお前はしなければならない。そのためにはΩの本能など不要である、と。
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