ozaka05333
DONEテキストでの会話を基に制作*Special Thanks*
TMさん(@MT_466)
焚火町と街の中間地点で野宿をするのも慣れた。夜番は寝静まった深夜帯を担うことが多い。横たわったところでどうせ眠れないのだから。
「……交代」
寝返りを繰り返し、寝つけていないのを彼は分かっているのだろうか。それを噯にも出さず、今気づいたところだという風に顔を上げた。
「ああ、そんな時間か。すまない…もう少し待ってくれ。キリのいいとこまで書き上げたい」
男は、書き物をしていた。義手の利き腕をはじめ、身体の多くに機械的な特徴を持つ背高の男の顔が暗闇の中でぼんやりと浮かぶ。横顔が非常に穏やかに見えた。
男は石の上に腰を掛け、器用に膝の上でノートを広げている。手元を照らしているのは目の前で揺れる小さな火だけだった。手元を照らすには心許ない。
7641「……交代」
寝返りを繰り返し、寝つけていないのを彼は分かっているのだろうか。それを噯にも出さず、今気づいたところだという風に顔を上げた。
「ああ、そんな時間か。すまない…もう少し待ってくれ。キリのいいとこまで書き上げたい」
男は、書き物をしていた。義手の利き腕をはじめ、身体の多くに機械的な特徴を持つ背高の男の顔が暗闇の中でぼんやりと浮かぶ。横顔が非常に穏やかに見えた。
男は石の上に腰を掛け、器用に膝の上でノートを広げている。手元を照らしているのは目の前で揺れる小さな火だけだった。手元を照らすには心許ない。
ozaka05333
DONE※自己解釈による魔動機文明語の文法事項ありキースがバレットに魔動機文明語を教わり始めた頃の話。
テキストでの会話を基に制作しました。
*Special Thanks*
TMさん(@MT_466)
焼き菓子と紅茶「キリが良いから今日はここまでにしようか」
バレットが本を置き、終わりを告げた。張り詰めていた息を零すが、視線は広げられた本をなぞる。
まだ、多くの文字を識別することは難しい。どれも似たような形に見える。
冒険者となって一年。数多の迷宮へ潜り、よく目にしていた魔動機文明語。学ぶ機会もなく放置していたものを、気まぐれというわけではないのだが――言語の習得に興味を示したところ、彼が教師役を買って出たのである。以前記録をつけたらどうだ、という口約束を律儀に覚えていたらしい。自分に学が無いことは分かっていた。教えてくれるのならやる、などと言ったが、まさかこんなに早く現実になるとは思っていなかった。やると言った手前、投げるわけにもいかず、慣れない作業に疲れる。
8425バレットが本を置き、終わりを告げた。張り詰めていた息を零すが、視線は広げられた本をなぞる。
まだ、多くの文字を識別することは難しい。どれも似たような形に見える。
冒険者となって一年。数多の迷宮へ潜り、よく目にしていた魔動機文明語。学ぶ機会もなく放置していたものを、気まぐれというわけではないのだが――言語の習得に興味を示したところ、彼が教師役を買って出たのである。以前記録をつけたらどうだ、という口約束を律儀に覚えていたらしい。自分に学が無いことは分かっていた。教えてくれるのならやる、などと言ったが、まさかこんなに早く現実になるとは思っていなかった。やると言った手前、投げるわけにもいかず、慣れない作業に疲れる。
ozaka05333
DONEケルデイオン大陸に生きた妖精魔法使いの師弟の話夜明けを告げる者朝は日が昇るよりも早く始まる。
井戸から水を汲み、顔を洗う。朝の冷ややかな空気が肌を刺す。
最も森の呼吸が聞こえる時間。
「マナの制御は?」
私の気配で先生も起き始める。薬草を鍋にかけ、果実の皮を剥きながら答える。
「やってる」
「ん?」
「……やってます」
「よろしい。記録はどう」
「気温は例年通り。魔力の流れの方が気になる。午後は外でサンプルを取りますか」
「マナを読み取る方が得意なのは分かるけれどね。水質の変化の方が深刻。気づかなかった?」
先生の周りには妖精が漂う。その一つ一つに挨拶を交し、窓辺で草笛を吹き鳴らした。
妖精の森がその呼びかけに応える。枝を揺らし、葉を輝かせ、先生に木魂を送るのだ。
953井戸から水を汲み、顔を洗う。朝の冷ややかな空気が肌を刺す。
最も森の呼吸が聞こえる時間。
「マナの制御は?」
私の気配で先生も起き始める。薬草を鍋にかけ、果実の皮を剥きながら答える。
「やってる」
「ん?」
「……やってます」
「よろしい。記録はどう」
「気温は例年通り。魔力の流れの方が気になる。午後は外でサンプルを取りますか」
「マナを読み取る方が得意なのは分かるけれどね。水質の変化の方が深刻。気づかなかった?」
先生の周りには妖精が漂う。その一つ一つに挨拶を交し、窓辺で草笛を吹き鳴らした。
妖精の森がその呼びかけに応える。枝を揺らし、葉を輝かせ、先生に木魂を送るのだ。
ozaka05333
DONE一人で鍛錬しているところに出くわすバレット君との話テキストでの会話を基に制作しました
*Special Thanks*
TMさん(@MT_466)
歳日は沈み、あたりは静まりかえる中、一心不乱に獲物を振る。夜闇に慣れ、視界は非常に明瞭。槌を振り下ろしている瞬間が、最も五感が冴えわたっている。背後に何者かの気配を感じる。視線。コルバンを握る。足を踏み込む。重心移動。呼吸。肺に酸素が満ちる。その瞬間に最も高い打点に到達する。あとは鉄塊を落とすしかない。血流が張る。そして――耳に届く、鉄の擦れる音。視界の端に捉える、鉄の肩に息が詰まる。
温度のない、金の瞳。
「熱心だな」
男は鈍器を当てられそうになったにも関わらず、眉一つ動かさない。
コルバンを引き、地面に突き立てる。汗が額を伝った。
「……殴られたいのか」
気が昂ぶったまま、殺意を隠そうともしないまま、言葉が滑り落ちる。
5115温度のない、金の瞳。
「熱心だな」
男は鈍器を当てられそうになったにも関わらず、眉一つ動かさない。
コルバンを引き、地面に突き立てる。汗が額を伝った。
「……殴られたいのか」
気が昂ぶったまま、殺意を隠そうともしないまま、言葉が滑り落ちる。
ozaka05333
DONE骨と斧夢を見るときは、いつもそうだと分かる。
現実よりも尤もらしく虚実よりも奇怪なその場所には、いつも同じ顔をした自分が待っている。
だから「そういうこともあるのだろう」と思った。
青い肌。突き出た角。
体中の入れ墨。
禍々しい斧。
隠そうともしない闘争心と露骨な殺気を掲げ、斧の重心を傾けた。
かつんと金属が嗤う。
持ち主に似た音だ。
奴が左足を引く。心臓を抉るような殺意に喉を鳴らした。
己の腕がひしゃげ、[[rb:橈骨 > とうこつ]]がずるりと抜け落ちる。骨周りの筋肉は螺旋状に収縮をくり返し、尺骨を支え、グロテスクな容貌を曝す。骨の槌が手中に納まる。
言葉なぞ何も要らない。奴の口角が上がり、は、と空虚な息が漏れ、そして。
1461現実よりも尤もらしく虚実よりも奇怪なその場所には、いつも同じ顔をした自分が待っている。
だから「そういうこともあるのだろう」と思った。
青い肌。突き出た角。
体中の入れ墨。
禍々しい斧。
隠そうともしない闘争心と露骨な殺気を掲げ、斧の重心を傾けた。
かつんと金属が嗤う。
持ち主に似た音だ。
奴が左足を引く。心臓を抉るような殺意に喉を鳴らした。
己の腕がひしゃげ、[[rb:橈骨 > とうこつ]]がずるりと抜け落ちる。骨周りの筋肉は螺旋状に収縮をくり返し、尺骨を支え、グロテスクな容貌を曝す。骨の槌が手中に納まる。
言葉なぞ何も要らない。奴の口角が上がり、は、と空虚な息が漏れ、そして。
ozaka05333
DONE斜陽芝生の庭に立ち、孤児院を仰ぎ見る。逆光も相まって、少女の表情は見えない。彼女は窓に凭れかかって遠くを見ていたが、俺の姿を見つけると弾かれるように立ち上がって言った。
「なんで」
今更会いに来たのかと。
舌足らずな声で少女は問うた。
子どもらの声が園庭に響く夕暮れだった。見通しの良い大きな窓に白いレースのカーテンが揺れている。それは洛陽を透かし早秋を告げながら、幼い少女の輪郭を隠す。
見られるのを恐れるように。
あるいは、俺を目にしたくなかったのかもしれなかった。
「——様子を見に」
「……こなくてよかったのに」
本当を言えば、こちらも顔を合わせるつもりはなかった。あの幼い少女は——オリムは、どのように過ごしているのか、様子を見て帰ろうと思っていた。
1831「なんで」
今更会いに来たのかと。
舌足らずな声で少女は問うた。
子どもらの声が園庭に響く夕暮れだった。見通しの良い大きな窓に白いレースのカーテンが揺れている。それは洛陽を透かし早秋を告げながら、幼い少女の輪郭を隠す。
見られるのを恐れるように。
あるいは、俺を目にしたくなかったのかもしれなかった。
「——様子を見に」
「……こなくてよかったのに」
本当を言えば、こちらも顔を合わせるつもりはなかった。あの幼い少女は——オリムは、どのように過ごしているのか、様子を見て帰ろうと思っていた。
ozaka05333
DONEミルドの町での事件を経て、ジネちゃんとお話しました!special thanks 霧さん(@kk14ac)
黎明を告げる言の葉 ふと目が覚めた。
心身ともに疲弊していたはずなのに意識が徐々に浮上していく。
ギルドが手配してくれた宿で床についてから、まだ数時間しか経っていない。ホーリー・クレイドルの効果か気怠さはなかったが、下手な時間に目覚めたせいで二度寝もできない。
上着だけ羽織って宿の軋む外付け階段をなるべくゆっくりと降りる。家々の屋根を一望できる高台の宿だった。紫がかる空は薄暗く、冷やかな空気と静寂さが心地いい。
「キースくん」
階段の上から声が掛かる。見上げれば、朝冷えしたのか鼻先と頬を赤くしたマニングが立っていた。カーディガンに腕を通しながら階段を軽やかに降りる。
「おはよう、ございます。キースくん、早起きですね」
2519心身ともに疲弊していたはずなのに意識が徐々に浮上していく。
ギルドが手配してくれた宿で床についてから、まだ数時間しか経っていない。ホーリー・クレイドルの効果か気怠さはなかったが、下手な時間に目覚めたせいで二度寝もできない。
上着だけ羽織って宿の軋む外付け階段をなるべくゆっくりと降りる。家々の屋根を一望できる高台の宿だった。紫がかる空は薄暗く、冷やかな空気と静寂さが心地いい。
「キースくん」
階段の上から声が掛かる。見上げれば、朝冷えしたのか鼻先と頬を赤くしたマニングが立っていた。カーディガンに腕を通しながら階段を軽やかに降りる。
「おはよう、ございます。キースくん、早起きですね」
桃空@ ポイピク
DONE2024.5ワンドロ「デュラン」+2時間くらい?飛び飛びで描いていたのでちょっと正確な時間がわかりません。
デュラン、自分の理想通りに描くのがハイパー難しくていつも苦戦しますが、今回は理想に近づけた気がする。デュランの中の、爽やかカッコいい部分を描きたいのかも。
ヤマノ鹿子
DONEズタボロなうちの子まとめ過去絵もすべて描き直しました
リソグラフ印刷のイラスト集『etude』
通販行っています↓
https://booth.pm/ja/items/5743837
24/05/23 10
ほなや
DONEスiクiウiェiアiのiトiムi・ソiーiヤ』のトム&ディック絵。設定としては本編より少し成長した姿で描いてみました。ボタンを外そうとしてるトムをじっと見るディック…のつもり汗
状況としては無茶して怪我したトムに内心おこな、怪我を診ようとしてるディックということで。
isekida_
DONE24/05/26 無配のレオルク両片想い
24/05/26「おはよう獅子の君。おや?前髪が一か月前より一センチ伸びているようだね…それでは視界が妨げられてしまうよ」
教室に入るや否やどこからともなく現れたルークにそう言われ、レオナはわかりやすく眉を顰めた。
「…うるせぇな、ほっとけ」
「ノン、そうはいかないよ。そのままで困るのは君なのだから…」
いろいろとね、と含み笑いをされるとカッと頭に血が昇った。
ルークが三年に上がり、レオナと同じクラスになってから、レオナはなにをしていてもルークの気配を感じるようになっていた。じわりと溜まったフラストレーションを隠すことなくグルルと威嚇するも、ルークはハッハッハと楽しそうに笑い、興を削がれたレオナは行き場がなくなった苛立ちを舌打ちにして吐き出す。最近はその繰り返しだ。そしてそれは今回も同じだった。
2416教室に入るや否やどこからともなく現れたルークにそう言われ、レオナはわかりやすく眉を顰めた。
「…うるせぇな、ほっとけ」
「ノン、そうはいかないよ。そのままで困るのは君なのだから…」
いろいろとね、と含み笑いをされるとカッと頭に血が昇った。
ルークが三年に上がり、レオナと同じクラスになってから、レオナはなにをしていてもルークの気配を感じるようになっていた。じわりと溜まったフラストレーションを隠すことなくグルルと威嚇するも、ルークはハッハッハと楽しそうに笑い、興を削がれたレオナは行き場がなくなった苛立ちを舌打ちにして吐き出す。最近はその繰り返しだ。そしてそれは今回も同じだった。