まほろ
DONEアネモネの城下、港に近い海に面したビストロ店主(捏造モブ)の呟きと、ある客とのやりとり。カラム隊長バースデイを祝った拙作『春。近く。』の後日談。
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BenHato_no_numa
DONE他人様の創作ちゃん(フェヴマチ)をお借りしました 面倒見のいい右手が、目の前のアップルパイを切り分ける。ざっくりと生地がこぼれる事も無いまま、マーチの眼前の皿にふわり、リンゴの香りが乗せられた。
「……フェヴ。別に俺、それくらい自分で切れるんだから」
じっと目の前の男を見据え、マーチは苦言を呈する。それを意に介さないようすで受け流す男──フェヴは、肩をすくめてフォークを差しだした。剥げた持ち手のデイジーは、見慣れ過ぎた二人の目を惹けない。
ジュンが手土産と共にやってきたのは一時間前のことであった。
「マーチはこういうの好き? 甘すぎないから大丈夫だと思って持ってきたんだけど」
手に提げられた箱に彫られた洋菓子店の名前を最初に読んだのはフェヴであった。評判のいいパティスリーに並んで買ってきたそれを、手厚く歓迎したのがマーチだ。甘い匂いは袋越しにも漂い、無邪気に笑う少年の耳飾りは持ち主の急く足取りに合わせて揺れた。その光景を、横にいたフェヴはなんとも言えない顔で見据えていた。
3219「……フェヴ。別に俺、それくらい自分で切れるんだから」
じっと目の前の男を見据え、マーチは苦言を呈する。それを意に介さないようすで受け流す男──フェヴは、肩をすくめてフォークを差しだした。剥げた持ち手のデイジーは、見慣れ過ぎた二人の目を惹けない。
ジュンが手土産と共にやってきたのは一時間前のことであった。
「マーチはこういうの好き? 甘すぎないから大丈夫だと思って持ってきたんだけど」
手に提げられた箱に彫られた洋菓子店の名前を最初に読んだのはフェヴであった。評判のいいパティスリーに並んで買ってきたそれを、手厚く歓迎したのがマーチだ。甘い匂いは袋越しにも漂い、無邪気に笑う少年の耳飾りは持ち主の急く足取りに合わせて揺れた。その光景を、横にいたフェヴはなんとも言えない顔で見据えていた。