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    ナッシュ

    yomo_IV

    DOODLEシードルとガナッシュ
    ED後/尻切れ
    ◆◆◆
     ボク、キミを知りたいと思ったんだ。
     シードルと向き合うように置かれたカンバスの奥に置かれたスツールへ腰掛けて早々、そんな言葉が飛んできた。予想だにしていなかった言葉だったものだから、ガナッシュは驚いて「そうなんだ」と素っ気ない返事しかできなかった。
     一呼吸おいてから、カンバスに姿を切り取られたシードルの様子を窺う。別段気を悪くした様子はなかった。琥珀色の絵筆がするするとカンバスの上を泳いでいくのが、たまにガナッシュの方からも見えた。
     知りたいとは、どういうことか。
     臨海学校を終えてから、以前にも増して芸術一辺倒となったシードルのことを、ガナッシュは理解できない時がある。知りたいのならば、膝を突き合わせて話した方がいい思うのだが、どうやら彼にとって語らうことは知ることではないらしい。

     選んだ授業を終えて、さあ帰るかとガナッシュが荷物をまとめていると、別の授業を選択していたはずのシードルがガナッシュの元にやってきた。絵のモデルになってほしいのだと言う。
     オレでいいのかと聞くと、キミがいいんだよ、と何故だか笑われてしまった。そう言われては、断る理由がない。カバンに荷物 1305

    yomo_IV

    TRAININGカシスとガナッシュ
    ED後。大学みたいな場所というのを失念してました。大学なら……みんな一緒に卒業だよな……。
    くたびれた靴で踏みしめた砂利が、レンガと揉まれてざりざり悲鳴を上げている。日中の喧騒であれば取るに足らないその音も、深夜ともなれば街並みによく響いた。時間さえも眠ってしまったのではないか。そう錯覚するほど静かな暗い道の先に、最低限のあかりを灯したウィル・オ・ウィスプが静かに佇んでいる。

     ここまで足を運んだのは、ただの好奇心だった。夜間に学ぶ人々がいると聞いたから、なんとなく夜に浮かぶ学校を見てみたかった。
     いざ目の当たりにしてみると、もっと早くに訪ねたらよかったな、と思った。よく知った建物の、知らない空気を歩いてみたかった。先日、晴れて卒業生となったばかりのカシスには、学び舎に立ち入る用事がない。
     不意に街並みを嘗めた風に煽られて、カシスは肩を震わせる。インバネスを羽織っていても、冬の風は刺さるように冷たい。
     明日から、カシスは旅に出るつもりだ。それなのに体調を崩すのはまずい。寒さに縮んでしまった背筋を伸ばして、踵を返そうとした。その時だった。
    「こんな時間に、遠くまで買い物?」
     誰もいないと思っていた場所に、聞き馴染みのある声が響いた。驚きこそしたものの、知っている声であ 1693