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    ヒョウ

    waremokou_2

    DOODLE毎日更新がもくひょうなので! 内容よりかいすうですので!
    製本時には加筆しますので!
    ねやねが紅茶を飲む話 ――午後三時。黒柳家のおやつ時はいつも決まってこの時間である。今日の黒柳は午前中、年末に向け使用人たちの年末手当や年始の契約更新手続きなどの書類作成や事務手続きに追われていた。昼食後も暫く作業に追われながら、どうにか半日掛かりですべての事務処理を片付けたところで軽食のご準備が整いました、とメイドに声を掛けられたのだが。
    「――おやおや、随分と立派な角じゃないか」
     ごろりと寝そべるのは虎も紛うような大型の三毛猫だ。子供二人に伸し掛かられ、体を好き勝手にされながらも、爪を立てることも抵抗するそぶりも見せない従順っぷりである。頭に巻かれたリボンには、段ボールと色画用紙で作ったのだろう角らしき装飾が施されており、まるで絵画やおとぎ話に登場する架空の生き物そのものの様に、黒柳は思わず口角を緩めた。すごかろう、と自慢げに三毛縞を見せる二人の子供は、先日の動物園でみたトナカイの大きな角にさぞ感動したようで、その遊びに付き合ってやっているのだろう三毛縞の、無抵抗なさまが黒柳にはあまりに新鮮で愉快だった。角の生えた大きな猫は、子供二人もぶら下げたままのっしのっしと部屋を闊歩し、おやつの時間なんだからさっさと席に着きな、と言わんばかりである。子連れ虎さながらに二人をあやす三毛縞に、黒柳は助けを出すでもなく自らも用意された席に着いた。
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