西北西に進路を取れ陽光が照りつける荒野の街で、鳴神なるはぼんやりとただ空を見上げていた。
白い和服に軍刀を吊った姿はこの街でも目立つもので、先ほどから通行人がちらちらと視線を送ってくるが本人は気にした様子もない。
傍らには、華奢な彼女には似つかわしくない無骨な側車付きオートバイ。これまでの旅ですっかり砂埃に塗れているが、それでも黒いボディは陽光を反射して鈍く輝いている。
「暇ですね……」
手持ち無沙汰になって、いまや商売道具となった三味線を取り出してベベンと鳴らしてみる。
心なしかいつもより乾いた音を奏でているような気がする。
バイクの持ち主であり、旅の相方である藍染は買い物に出ている。なるも同行を申し出たものの、バイクの番をして欲しいと言われ先ほどから油を売ることを余儀なくされている。

10 Bullets泥だらけのパリの街角に立ち並ぶ家々や通りは飾り付けられ、人々は祭りに参加するために外に出ていた。どこへ行っても賑やかで、花火の音も聞こえる。

デルは酔っぱらいの男が歩いているのを見て、ついていくことにした。その足音は、他の人々の騒ぐ声にかき消された。デルは、その男があまり知られていない道を通り、街の中心部から離れ、森の中に入っていくのを見た。

「完璧だ」デルはそう思った。後始末の心配をしなくていいし、何よりだ。

数分後、デルは黙ってその男の後を追って森の中に入っていった。明らかに酔っていた。しかし、転んで痛みを感じないほど酔ってはいなかった。

デルは目の前の哀れな男に笑いかけ、男は体を動かして音のしたほうを見た。