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    いしえ

    DONE趙公明の生い立ちと、仙界入りの経緯について、想像して書きました。それからさきの、本編についてもさらりと。通天教主との会話が多少ある。
    最初、紙にざっくり書いて、それからそれを見ずにパソコンで実際に書き始めたところ、データのものと紙とで扱う時間の長さがめちゃめちゃ違っていて、紙のは部分的に没にしたんですが、これはこれでアリだな…と思ったので、話のあとに、おまけとして載せています。
    語り継がれし伝説の花よ、鬼神じみたヤマユリよ/趙公明にまつわる話 伝説の花よ、ヤマユリよ。語り継がれし強大なる鬼神よ。バラの宿命さだめに生まれし気高き騎士ナイトのままに彼は生き、神話へとなお、生き続ける。これは、そんな彼、趙公明の生い立ちにまつわるこの地球ほしの比較的新しい記憶だ。
     それは初め、原初性を未だ残したムラより離れた山中に荘厳に咲き誇るヤマユリの、ごく一株に、過ぎなかった。その個体がほかと違っていたのは、寿命が少々、長かった点。幾ら多年草でも、長すぎたのだ。かと言え、山に住む動物たちも付近の植物も、あるいは、稀に足を踏み入れた人間も、それをそのように認識することは叶わなかった。それよりさきに、皆、天寿を全うするのだから。あるものは何となく、自らの生まれたときより同じ場所に咲き誇り続けるそれが、死を目前にしてなお咲いていることを、薄れゆく意識のなか思いながら、天に召された。けれど、それを語り継ぐものが在るでもなし。そのころまだ仙界というものはなかったものの、仮にあったとて、木々に隠れている一株の花を、あえて観測する者もいなかっただろう。そのころちょうど、人間のつくる集団単位は、規模を徐々に伸ばしつつあった、転換期と言えよう。そんななかで、時が、静かにたった。そのヤマユリは、それでも密かに山中に、誇らしげに、咲き続けていた。
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