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    Ao_MiNaMii

    PROGRESSししんでんしんそくぜんしゅぞく本Side玄武 人間族の章2

    正義
    手負いの獣人。知らん人間が仲間に触ろうとしていたのでバチギレ

    海晴
    人間の村の医者。怪我人の手当をできるほど周囲の安全が確保できない

    氷船
    獣人たちの第一発見者。村の子どもの一人。
    正義登場「……さっき、草の中に何か……誰か?が、いた。見てきてもいいかい」
    「構わないが……本当にいるのか? 僕には見えな……あっこら一人で行くんじゃない、今の失態をもう忘れたのか」
     海晴に叱られながら氷船は斜めに斜面を登り、その草むらを覗き込んで息を呑んだ。
     山を滑りながら氷船が見た草の中には、氷船よりもいくらか年下くらいの少年が寝かされていた。ただ、その傷の大きさや顔色から、もう息をしていないことが分かる。
     後からついてきた海晴が、またも呆然としている氷船の横をすり抜けて草むらの脇に膝をついた。
    「……獣人族、だな。どういうことだ? 仲間割れでもしたのか。この傷は獣の爪だろう、妙にでかいが」
     草の中へ丁寧に寝かされた少年のそばには、氷船と同じくらいの年頃らしい金赤毛の獣人、それからもっと大きな、見たことのない黒い獣の体が転がっていた。少年を挟んで川の字に金赤と獣が並んでいて、草の倒れ方が荒れていないことから、少年の傷はこの場所でついたものではなさそうだと氷船は考える。獣も金赤も酷く傷だらけで、とても氷船たちの村を襲った犯人とは思えなかった。
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    plntanightlunch

    DONE残響スピンオフ。もういくつめかわからない。三井酒店で働くモブの久保さんが、「7」に行く話です。
    おいしいお酒が飲みたいだけなのに 店に入る少し前に約束をしていた友人から遅れると連絡をもらった久保は急がずにきてと返信し、そのまま店に入るか本屋に行って時間を潰すか数秒迷った後で、やはりそのまま歩を進めるほうを選んだ。かばんには読みかけの本が入っていたし、今日行く予定の店は一人で飲むことに躊躇するような店の雰囲気でもない。なにより喉が渇いていた。

     歌舞伎町はそれほど行きたい街というわけではない。ごちゃごちゃしているし、道には人も多ければゴミも多い。そのくせ隠れた名店みたいなのが多いのが、ついつい好きでもない街に足を向けたくなってしまう理由でもあるのだが。「7」だってそのひとつかもしれない。ホテルほど敷居も値段も高くなく、だからといってカジュアルに振りすぎていることもない。外の喧騒とは逆に静かに飲むことだけを目的としている客が集まっているし、酒はうまい。カウンターに座るとわかるが、バーテンダーの後ろの棚に並ぶ酒は結構なコレクションで、これはまあ、うちの社長の営業の成果だろう。口はうまいからあの人は……考えるともなしに考えて、そこまで思考が到ったところで、久保は息を吐き出した。仕事が終わってまで会社のことを考えるなんてよくない。オフィスを一歩出たら仕事のことは忘れる。これが日々を穏やかに過ごす大原則だというのに。
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