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    師走

    ehara5

    DONE風降と二十四節気を書きたいという野望(その5)
    師走です。
    021_大雪(12月7日頃) 暦の上でも本格的な冬が到来していた。今週に入ってから、平均気温が十度を割るようになった。ハロウィンの終了後、世間は速やかにクリスマスの準備を整えつつあったが、いよいよ聖夜間近という空気が漂い始めていた。
     風見はコンビニで購入したホットコーヒーのカップを片手に、駅前広場の中央に飾られたツリーを眺めていた。そこそこの大きさで、しかし、これでもかと電飾が施されている。待ち合わせにはちょうど良い目印だ。風見がここにいるのは、イルミネーションを見る約束がある訳ではなく、上司に物品を渡すためだ。
     先日、薄手のカーディガンが欲しいと降谷から連絡が入った。何かの暗号ではないかと一瞬考えを巡らせたが、折り返してみると彼の持っている服では、涼しいか暑すぎるかになってしまうとのことだった。確かに冬に備えて、厚手のセーターやら裏起毛のトレーナーやらを購入した覚えがあったが、体温調節に適した物を買っていなかった。というのは、冬物の備品を渡した際、彼はちょうど薄手のカーディガンを着ていたからだ。降谷のことなので、何らかの理由で汚すなり破くなりしたのだろう。
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