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    引き金

    Maohnmeow

    PAST線香花火をする太刀二の話です。季節外れですが……
    2022.09.18の吾が手に引き金を29で発行した短編集「杪夏」からweb再録しています。
    通販も一応残っておりますので、ご入用の方はどうぞ。
    https://maohnmeow.booth.pm/items/4176835
    白露 ひゅるる~、ドーン。ぱらぱら。花火が打ち上げられては散っていく音が聞こえる。ベランダから少し顔を出すと夜空に大輪の花が咲くところがよく見える。華々しいそれらは夏のふーぶつし、ってヤツだ。漢字でどう書くのか思い出せない。
    「なぁ二宮、見るのもいいけどこれやろうぜ」
     言いながら俺は線香花火を取り出した。普通の手持ち花火をやるにはこのベランダじゃちょっと狭いけれど、線香花火くらいならできるからと持ってきてみた。見るのが嫌なわけじゃないけど、なにもしないのも暇だし。二宮はゆっくりと瞬きをして、笑って答えた。笑ったと言っても口の端がすこーし上がったかなっていう程度。
    「仕方ないな」
    「よっしゃ、やろうぜ」
     許可が下りたのでいそいそと準備を進める。ベランダにろうそくを立ててライターで火をつけた。袋のテープを剥がして、線香花火の本体を取り出す。ひらひらしたピンク色の部分を持って、二宮に手渡した。
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    人生は沼だらけ

    MENU5/4 スパコミ 超吾が手に引き金を2023 にて頒布される、二犬合同誌に参加させていただきます。
    東2ホール ヌ19a「アルマの名前」(佐々川ささらさんのスペース)で頒布予定です。

    タイトル:Rendez-vous
    頒布価格:700円
    規格:A5/54P
    執筆者:佐々川ささらさん(イラスト) / くみこ・+さん(小説) / 人生は沼だらけ(小説)

    本文は私の分の冒頭サンプルになります。
    合同誌「Rendez-vous」サンプル 低く唸る自動ドアをくぐり、息をつく。自分と同じようにビルから吐き出される人波に乗って、そのまま通りへと歩き出した。腕時計を確認すれば、時刻は既に夕方頃。今日は他に予定もない。それでも思ったより長引いたと、肩の力を抜いた。ラフな格好でいいとはいえ、気を抜くことはできない。白い息を吐きながら、駅へと足を向けた。
     二宮も大学三年になり、既に一月半ば。来年の卒業に向けて、ボーダーでの防衛任務に加えて忙しい日々が続いている。就職先はほとんどボーダーで内定しているとはいえ、見聞を広めることは悪くない。今日もインターンの説明会を受けるために、三門から二駅離れたこの街に足を伸ばしていたのだ。
     丁度帰宅ラッシュか何かと被ったのか、随分と人通りが多い。だがその煩雑とした喧騒の中、とびきり高い金切り声が耳に飛び込んできた。
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