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    恐怖

    ケミカル飲料(塩見 久遠)

    DONE病めど狂えないノスと、恐怖に怯えつつ支配されないクラのノスクラ。程度は軽いですが、虫や痛々しい表現を含んでいます。人によっては心に負担がかかると思うので健やかな時にどうぞ。
    2023/2/10にTwitterにアップしたものの再掲です。
    父への献身 これは夢だと気付いている。夢魔の仕業かと見紛う悪夢だ。しかしそれを認識できたからといって、眠りから覚めることはない。どこか遠くから話の行く末を眺める自分と、哀れな登場人物としての自分がぼんやりと交わっていく。

     夢の中で自分は羊になっていた。黒と白の斑の羊だ。荒野を当てもなくさまようのだが、やがて力尽きて動けなくなってしまう。歩みを止めると、何処からともなく鷲が舞い降りてきて体を突かれる。毛皮は既にボロボロで、自らを守るすべと言えば体を丸めて目を閉じるくらいしかない。なされるがまま、肉を食い破られる。血が止めどなく流れ出し、体が冷え切っていくのを感じた。
     満足した鷲が飛び立っていくと、今度は鴉の群れがやってきた。普通の羊であればとっくに絶命しているはずなのに、意識が鮮明に保たれているのは、やはりこれが夢だからなのだろう。痛みはぼやけているが、生きたまま血肉を食われる感覚は何物にも代え難い恐怖となって襲ってきた。それでもまだ目は覚めない。
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    shirataki_himo

    PAST恐怖!何年前かわからない文章
    るりちぇり 初夏、うんざりする程の日ざしが肌をじりじりと照り向ける。気付かぬ間に肌を濡らしていた汗が、防水性の絆創膏をするっと避けて流れ落ちる。まだ夏は本番では無いというのに、この調子では来月の自分がちゃんと生きているかすら、ひどく不安になってしまう。

    「ねぇ、どうしてこんなに暑いんでしょうかね…」

    「知らなぁい……」

     きっちりまとめられたヘアアレンジから長く伸びている蒼髪が風に吹かれて揺らぐ。頼れる相方のヤヨイが動きを止めて、それはそれは暑そうに手を団扇みたいにして動かす。我慢強い方である彼女が愚痴をこぼすのは珍しい、きっとこの暑さには勝てなかったのであろう。
     それでも絶対に休んだりしないのはいつも通りだ。魔法少女としてのこだわりが強い故に、見つけた仕事は全てこなそうとする姿勢にはちょっぴり尊敬するけど、本当に無理をしていそうに見えるときがあるから直してもらわないとそろそろ困る。自分ならめぼしい報酬の依頼だけ受けて、他は全部無視するのにヤヨイは対照的に片っ端から受けていく。人助けにやりがいを感じる程まっすぐな人間ではないからと流しているが、いつも一緒に行動する相方として少々肩身が狭い思いをするのは、少なくはない。
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