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    指輪

    おもち

    TRAININGPsyBorg。指輪の話。メリークリスマス!
    彼が眠っている間に気が付かれることなく触れることは簡単だった。眠りが浅いし人の気配には敏感だと、付き合い始めたばかりの頃は一緒に眠ることにすこし緊張していたらしい彼も、今ではすっかり俺と眠ることに慣れていたから。いつもなら穏やかな寝息を立てる彼の隣へすぐに潜り込んで無意識で俺のことを抱き寄せる彼に一人ニヤけたりしているのだけれど、今日はとある用事を手早く済ませてスマホのメモ帳に忘れないよう書き込んでから、俺はようやくベッドに入った。見つめた彼の寝顔は少しの変化もない。ぐっすり眠っている可愛らしい恋人に触れるだけのキスをして、俺も静かに目を瞑った。彼の腕の中は、どこよりも寝心地がいい。
    知り合いを最大限に活用して良いアクセサリーを作ってくれるという人と繋がり、何回かのミーティングを経て数ヶ月後に俺は特別なアクセサリーを手に入れた。予想していたよりうんと良い出来のそれは予定より少し高くついたけれど、必要経費だ。問題はない。引き出しの奥にしまい込んだそれを一人きりの時に何度も取り出しては光に当てて煌めきに酔いしれる。飽きることなく美しく、という俺の理想論のような要望を、腕のいい職人は見事に叶えてくれていた。
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