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    歌舞伎町

    plntanightlunch

    DONE歌舞伎町で働くバーテンダーのリョというご都合AU。チンピラの沢を拾い、三井サンとバスケットし、深さんにコーヒーせがまれ、ヤスとパピコ食べてます。
    リョとモブの性行為を匂わせる描写あり。流血あり。かけざんはリョと三ですが、左右はなし。

    前編>>https://poipiku.com/8143004/9277437.html
    3.不穏 バーテンダーという仕事は派手な印象を与えがちだが、全くそんなことはない。夜が遅いから生活は不規則になるし、酔っ払いの世話や、嫌な客に絡まれるときもある。シェイカーを振るかっこいい姿なんてほんの一瞬で、レシピは記憶力との勝負だし、季節ごとに何かしらオリジナルのカクテルを作ろうと思ったら、センスも必要になる。
     そこに歌舞伎町が加わると、厄介さはさらに増す。客同士が一触即発になることもあれば、女の子が逃げ込んでくることもある。今晩は決めるぞ、って思っているお客がいるときはスタッフ一同陰ながら応援しますって感じだが、事件が起こりそうな気配があればなんとか未遂で終わらせなければならない。
     レストルームには「危険を感じていたり、助けが必要だと思ったら、遠慮なく」とスタッフに助けを求めるサインをポスターにして貼ってある。暴力とドラッグは厳禁。気配を察したら、放置はしない。堂々と「これ、次の飲み物に入れて」と頼んでくるお客さえいるから、気が抜けない。
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    plntanightlunch

    DONE歌舞伎町で働くバーテンダーのリョというご都合AU。チンピラの沢を拾い、三井サンとバスケットし、深さんにコーヒーせがまれ、ヤスとパピコ食べてます。
    リョとモブの性行為を匂わせる描写あり。流血あり。かけざんはリョと三ですが、左右はなし。

    前編>>https://poipiku.com/8143004/9264197.html
    2.予兆 雨の気配は家を出るころに急に濃くなった。遠くで雷鳴が響いている。遠くの空はわかりやすく鉛色で、ああもうすぐ一雨来るぞ、と思う。家から店までは自転車で二十分と少し。雨が先か、店に着くのが早いか、迷う時間も惜しく自転車に跨った。店に着く頃には空は今にも泣き出しそうな様相で、厚い雲の隙間からたまに雨粒が落ちてきて、リョータのシャツにぽつぽつと染みを作っていた。それでも濡れたうちには入らない。自転車を停めて、思わず勝ったぜ、と呟いた。

    そのままコンビニに足を向けた。仕事前になにか腹に入れるものを買うためだが、コンビニに行くという行為が半ば習慣みたいになっていて、なんとなく行かないと落ち着かなくなっている。買うものはたいてい決まっている。おにぎり、具は鮭。ミニバスをしていたころ、コーチが疲労回復にいいからおにぎりの具は鮭にしろと言ったことがあって、それからなんとなく手が伸びる。こんなものでたまった疲労がなんとかなるとは思えないし、おにぎりの中のひとかけらの鮭にそんな大役を負わせることはないだろうと思いつつ、それでもやっぱり手が伸びる。それから野菜ジュース。こっちは不規則生活のせめてもの良心といったところだ。今日はビタミンプラスと書いてあるものを選んだ。
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    plntanightlunch

    DONE歌舞伎町で働くバーテンダーのリョというご都合AU。チンピラの沢を拾い、三井サンとバスケットし、深さんにコーヒーせがまれ、ヤスとパピコ食べてます。
    リョとモブの性行為を匂わせる描写あり。流血あり。かけざんはリョと三ですが、左右はなし。

    続き>>https://poipiku.com/8143004/9277437.html
    1.境界線 歌舞伎町の時間の流れは独特だ。午前8時、世の人々が日々のささやかな営みを始めるころ、この界隈にはやっと静寂が訪れる。どこからか集まってきてゴミを漁るカラスと、悠々と散歩を楽しむ猫がでかい顔をし、通りを行く人の姿はまばらで一様に疲れて見える。この場に人が戻ってくるのは夕方以降。日が落ち、夜の帳が降りてから、昼間とは打って変わって街は活気を取り戻す。大きすぎるネオンサイン、歩道に突き出た看板。あらゆる言語が飛び交うにぎやかでスリルに満ち、少し危険な街。今日もまた、あと数時間もすれば、ネオンの美しく光るライトに吸い寄せられる蛾みたいにたくさんの人がここに集まるのだろう。そのネオンの輝きが偽りかどうかはあまり関係ない。本物だと夢を見る人もいれば、偽りとわかっていてそれでも楽しむ術を知っている人もいる。ある種の人たちにとってはこのまがいものの光こそが本物だ。どの人たちにも共通するのは、みんながそれを楽しんでいること。リョータはそんな人たちがちょっとだけうらやましいと思う。そのどこにも属さず、ただぼんやりとそれを眺めているような自分がどこか壊れている気がするからだ。だが、それでもこの街から去ることもなく、リョータは小さなカウンターの中からそんな世界を眺め続ける。手を出し、感触を確かめることもなく、摺りガラスを通して外をぼんやり眺めている感じ。
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