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    結婚

    moonrise Path

    DOODLE結婚しないまま父親となった久遠道也の感慨とふどふゆ夫婦
    煙社降臨節暦 第十二夜/久遠一家 恋を忘れ走り続けてきた。淡く濃やかな感情が自分にも芽生えうる可能性に目を向ける暇もなかった。それが不幸であるとは思わなかった。
     今でも悔いてはいない。悔恨の情が生まれる出来事はいくつもあったし、そのたびに痛みも生まれた。だが、どれひとつ欠けても今現在には辿り着けなかった。楽を選ぶことができない人生だから、掴めた手もある。
     久遠はクルマに積み込むための荷物を整理しながら手を止めた。アルバムの入った段ボール箱は一つではなかった。自分が関わった選手たちのデータに比べれば少ない数だが、それでも久遠はことがるごとに娘の写真を撮り、アルバムに収め続けてきた。FFIで監督を務める少し前、冬花を撮った写真がある。どんな感情を出すことも拒むような頑なな表情。反抗期らしい反抗期もない娘だったが、自らその奇妙さに気づいている節があった。彼女は久遠以上に聡く、人間らしい感情の機微を備えていた。カメラの前で笑顔を作らないのは、父である自分への信頼と彼女なりの甘えだと久遠は分かっていた。笑顔でない写真は事務的に言えば使いやすい写真でもあり、それはFFIにおいてマネージャーとしての登録、また渡航の際に必要な証明写真としても使われた。
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    ha_na_da_a_o

    DONE契約結婚茨あん(致死量に至る恋)の、本編後のおまけです。愛を知らないふたりの話。
    (お誕生日おめでとうございます!)
    愛のマニュアル 最近、茨くんが優し過ぎて困る。なんてそんな惚気みたいなこと──実際多分、ほとんど惚気なんだろうけれど──誰にも言えない、というのも困る。

     茨くんとは、約半年前に利害の一致で契約結婚をして、それから何だかんだあって本当の夫婦になった。
     そもそも契約結婚をする前は完全に同い歳の同僚でライバル、という関係だったので、彼のプライベートなことはほとんど何も知らなかった。まぁ確かに、あの頃からやさしいところはあった──会議の合間に自分の分のついでとは言え飲み物を取ってきてくれたり、資料のコピーを作ってきてくれたり──けれど、まぁそれももちろん同僚の範囲を出ないものだったと思う。
     それが、最近はどうだ。私がリビングでパソコンを開いていれば必ずと言っていいほど飲み物を持ってきてくれるし、一緒にテーブルを囲むことが出来なくても食事はいつの間にか作り置きされているし、掃除も洗濯もあと少ししたらやろうと思った時にはすでにやられている。誕生日でも記念日でもなんでもないのに、プレゼントです、なんて言って洋服や小物を渡される。優し過ぎると言うか、甘やかされていると言うか。このままだと私は何もしなくても良くなるし、駄目人間になりそうなのだ。まぁ、企画書には容赦なく指摘が入ったりするけれど……それも、私にとってはありがたいことだし。
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