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    耀

    sumitikan

    DONEさねひめ、全年齢、手も握りません。モブあり、軽く戦って鬼の首が飛びます。耀哉の指示で実弥が偽の写真屋になり、悲鳴嶼さんが霊能者の似非坊主をやります。雰囲気です。ピクブラにも同じものを投稿しています。
    蟷螂館上座の耀哉が静かに湯呑で唇を湿し、じっとこちらを見つめてくる視線が優しい。あれからというもの、耀哉と会うとなぜか母親に会ったような気になってしまう実弥が、我ながら従順で大人しかった。

    残暑の季節に鴉が軒先に飛び込むようにして呼び出され、大急ぎで産屋敷家に来た。控室で一緒になったのは悲鳴嶼で、彼がいるなら確かに鬼の話になる。隣り合わせに耀哉の前に、出された茶は一口も飲めなかった。当主はじっと悲鳴嶼と実弥を見て、ようよう口を開いた。

    「二人とも、急な呼び出しなのによく来てくれたね」

    笑みが深くなる。悲鳴嶼は見えない目でじっと耀夜を見つめているようだった。何でもないことのように耀哉が話しはじめた。

    「今回は少し珍しい頼み事だったのと、他の隊士の手に余ってしまったから、行冥と実弥に行って見て来て欲しいんだ。頼み事と言うのは、鬼殺隊が色々と面倒を見て貰っている、さる男爵のお宅に病弱な御令息がいてね。普段は東京の外の別邸に静養していて、家庭教師をつけて引き籠っている。世間を知るために教養のある文化人を世代問わずに集めていて、絵画や彫刻を何点も見たり、洋物のレコードの感想を言い合ったりするらしい。文化人たちの集まりだという話だね。
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    michi2_

    DONE服部悪夢合同誌『on the bubble』に載せたおはなしの再録です。
    服部と菅野班。メインスト前提のためseason4までのネタバレを含みます。

    この耀玲は服部が四十になる年のいい夫婦の日に入籍する、という設定ありきで書きました。これを知った上で読むと腑に落ちる部分があるかもしれません。
    いつか美しくなる未来にゴォオ、と巨大な動物の唸り声のような音を上げて、古いエアコンから吐き出された温風が首もとを撫でる。さりさりと風に揺られる毛先がくすぐったくて、その感触を知覚したと同時に、意識がひと息に浅瀬まで引き上げられた。次いで耳が拾ったのは、誰かのデカいいびき。それから、うすい仕切り越しの喧騒、肉の焼ける音。香ばしい匂いと、煙たさ。壁に寄り掛かった身体はそのままに薄目を開ける。が、目の前がぐるりと回ったような不快感に、開けた目はすぐに閉じる羽目になった。
    (いッ……た)
    磨かれたテーブルに反射した光に目を貫かれたかと思った。眉間とこめかみが軋むように痛む。
    いったい何がどうして今こうなっているのか。記憶を遡ろうとしても、熱に浮かされたように頭がぐらぐらするばかりでまったく要領を得ない。少なくとも視覚以外から拾える情報としては、ここは平和な焼肉屋であり、なにか危機的な状況であるわけではなさそうだということくらいだが。
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