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    泡沫実践

    DONEトラファルガー・ローはパンを食わない。葡萄酒で咽喉を潤さない。かれの主人はドフラミンゴではないからだ。
    呪え祝うな あの、忌わしい、運命の夜から七年が経った。愛を注いだ。庇護下に置いた。腹心の相棒を据えていた心臓の席を与え、これは重要なものだと誰の眼にも分かるよう、色を違えた揃いの羽織も遣った。そうやって、心からだ、心の底から、己の心臓のようにたいせつに可哀がっていた弟の、手酷い裏切りに遭い、胸を裂く想いで鉛玉を撃ち込んだ夜から、七年。堕ちた身が被った獣の暴力、父を我が手で殺めた記憶が悪夢として今尚蘇るように、七年前のあの夜も又、ドフラミンゴを苛み続けて、いる。重く伸し掛かる、痛む、思い、痛みは絶えることがない。記憶が薄れることなどある筈も無い。況してあの夜は、弟を殺した、耐え難く、怒りと屈辱と心痛、喪失、に極まる一件、それだけでは済まなかったのだ。あの日、ドフラミンゴは奪われた。決定的に、致命的に。ロシナンテ、ロー、愛、信頼、心臓、右腕、未来。奪われた全てをひとつに集約するならば、それはハートだった。ハートが全ての言葉になる。空席、赤い、血より濃い、同類。ハートの席。其処に座るべき男の名前。失い、奪われ、未だ手に入らない。その境目を判別することなぞ最早出来まい。
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    tono_bd

    DOODLE・『未完のワインに思いを馳せて』後の話。未読の方は一部ネタバレが含まれます。
    ・ファウストの火傷の跡のある脚について触れます。

    ファウストがうっかりシャイロックの機嫌を損ねたため、葡萄踏み体験をしていた事をフィガロにバラされた事により、怒ったフィガロがファウストのズボンを脱がす話。(※付き合ってない)

    イベント期間中(9月)から書いていました……。
    フィガロがファウストの脚に触れる話 どうしてこんな事になったのか――。若干だが酔いが醒めて来た頭で考えるがまるで答えは出ない。
     ただ事実を述べるとすれば、ファウストは自室のベッドの上に座らされていて、目の前には床に膝をついて傅くフィガロがいる。そして恭しくも強引にファウストの裸の足を掴んで離してくれない。
     普段なら決して素足に触れさせる事も、床に膝をつく事もさせはしないのに、今この状況の主導権はファウストには無いに等しかった。
     優れた陶器を撫でるような手つきで膝から下を撫で下ろしたフィガロの顔を信じられない目で凝視していると、それに気が付いたフィガロは挑発的な上目遣いで見せつけてくる。そして少しだけ普段よりも熱を持った頬を臑に頬ずりをしてから肉厚の舌で自身の唇を舐めた。緊張で乾いてしまった唇を潤す仕草にも見えるが、捕食者の顔で獲物を前に舌舐めずりしているようにも映った。どちらが本当かなんてファウストに分かる筈も無く、ただ少しでもこの男から離れようと後ずさるが、実際どれくらい距離が取れたかなんてたった数センチくらいに違い無い。いや寧ろ……離れた数センチを咎めるようにその数倍は引き戻される。
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