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    hisoku

    DOODLE過去作に「猫は火を恐れない」という杉尾小説があるんですけど、そのうちの一章が雪の日の話だったので今日の気分で引っ張ってきました。物語のあらすじは車に轢かれそうになった猫と魂を半分ずつ使って山で炭焼きとして生きていた杉の元へ逢いに行った尾の話で、百というのが尾と猫が半分ずつ魂を使って生きていた頃の猫耳猫尻尾持ちの男の子のことで、今は尾の心の一部として生きていて、尾自身は百之助と杉から呼ばれています。
    猫は喜び庭駈けまはる ぎしりと畳の上を歩く足音がした後、しゃっとカーテンを勢いよく開く音と共に、寝室に柔らかい乳白色の光が射し込んできた。尾形だ。

    佐一、起きろ。

    んー。

    起、き、ろ。

     被っていた布団を捲ると前髪を退けて、尾形が眠っている人の額に顎を押しつけてごりごり擦り付けてくるという嫌がらせのような起こし方をしてくる。朝の髭は短く新しく生えたばかりのものが混ざっていて、夜に触れる時よりもちくちくとして痛い。じょりじょりと音がしている気すらする。これをしたら絶対起きると解っていてやるのだ。独特すぎて、ふふふ、と目を閉じたまま笑ってしまった。ここで一緒に暮らしているうちに性格も以前より穏やかに丸くなってきたと思うが、時々、こういう変なことをしてくる。
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