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    mgn_t8

    DONE「これは人の弱さと醜さのお話です」
    そう言ってリリーベルが語り出したのは痛みに満ちた過去だった。自分は聖女と呼ばれるべきではないというリリーベルの真相と本心とは。
    リケとの衝突で明かされる革命軍時代にリリーベルが背負った罪の話。
    その決意は幾千の日没を越えて 人形師の魔法使いのグランヴェル城襲撃後、怪我を負った賢者の魔法使いの回復のために治癒の魔法を使った。フィガロ先生の魔法に重ねがけをする姿を見た誰かにより、建国の聖女が再降臨したと噂が広まった。別に隠していたわけじゃない。ただ黙っていただけ。いつか知られることだろうと思っていた。それがわかった時、どういうことになるのかもわかっていた。……わかっていたはずだった。



    「リリーベル、見つけましたよ。今日こそあなたのお話しを聞かせてください」
     魔法舎内での細々とした仕事の合間にちょこちょこリケが話しかけにくるようになった。彼はとある教団で神の使徒として育てられてきた。人間に都合よく利用されるその姿に思うところはあるけれど、本人への刷り込みが強固なことと、それほどまで親しくないためにこれまで積極的に関わろうとしてこなかった。使命に熱く信心深いリケの熱量についていける気がしなかった。
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    mgn_t8

    DONE診断メーカー「三題噺」より
    「不機嫌」「言い訳」「昼下がり」
    フォロワーさんとワンドロ(+5分)

    リリーが魔法舎に来てすぐ後くらい。ファウスト語りで主にファウスト+レノックス。リリーはチラッとな革命軍組の話。
    胸に隠したそれは 再会してからずっと気になっていることがある。レノックスのリリーに対する呼び方だった。昔は敬称付けでリリーベル様と読んでいたが、今はリリーと愛称で呼んでいる。ここに至るまでどんな経緯があったのかは知らないが、共に南の国から魔法舎にやってきて親交もあったというから僕の知らない間に親しくなったのだろうということは考えなくても分かる。分かるけれど、レノックスとリリー、時にはフィガロを加えた三人の様子を見ていると胸の奥がざわりと騒ぐのを抑えることができなかった。

     ある日の昼下がりだった。東の魔法使いたちの午前の実地訓練を終えて食堂で皆で昼食を取った後だった。図書室で今後のカリキュラムを考えようと足を向けた時だった。廊下の向こうから歩いてくる人影を認識した瞬間、口を引き結んだ。レノックスとリリーだった。和やかに会話をする姿は親しみに溢れていて信頼に満ち満ちていた。未だここにいる魔法使い全員に慣れていない様子が窺えるリリーの朗らかな笑顔が向けられているのは微笑を浮かべたレノックスだった。何となく彼らから視線を逸らして黙ってそのまま歩を進める。
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    ms_teftef

    DONEフィガファウ/ファンタジーになる予定だったもの
    ▼あるもの
    ・意識はしていないけど、見ようによってはアレファウかも
    ・革命if
    ・フィやウサギなど死の描写(ぬるめ)
    ・捏造のファの家族
    月に追われて退場 その年の冬は、例年よりも早くやってきていた。

     ガタガタと揺れる列車の二等車の窓側で、ファウスト・ラウィーニアは、はらはらと空から降りはじめた今年初めての雪を眺めていた。
     ファウストの手荷物は少なかった。膝に抱えたボストンバッグ一つのみ。
     街を離れていく列車に、人はさほど乗り込んでおらず、数少ない乗り合わせた乗客は、皆どこか後ろめたい雰囲気で、誰とも目を合わせようとはしない。気休め程度の暖房では、窓から入る隙間風に負けてしまい、車内はさほど温かくもなく、乗客たちは着込んだゴワゴワしたほつれ気味のコートの襟を合わせ、背中を丸めて静かにじっと座っている。その中でファウストだけが、しっかりと背筋を伸ばし、どんなに揺れても美しい姿勢を保っていた。着ている服の質は、そのあたりの苦学生同様、着古してくたびれてはいたものの、出来る限りの手入れを施して身綺麗にしているのが分かる。真っすぐな紫色の瞳は澄んでいた。美しい青年は、この中で奇妙に浮いて見えた。
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