800
高間晴
TRAINING敦太800字。雪の夜。雪の夜 しんしんと雪の降る夜。部屋の灯も消したので真っ暗な中。敦と太宰は二人で布団に潜り込んで小さな声で話していた。今夜は敦が孤児院時代、好きになった女の子の話をしている。
「――それで?」
太宰が敦の話の先を促す。
「……僕は、その女の子に点数稼ぎのために売られたんです。食料庫へ忍び込んで、せっかく来客用のお菓子だった、チョコレートを手に入れてきてあげたのに」
「へえ」
敦は、太宰になら孤児院時代の話を素直に話せるようになっていた。別に親身になって聞いてくれるとかではなくて、ただ相槌を打ちながら静かに聞いてくれるからだ。否定も肯定も、称賛も慰めもない。敦にはそれがただ心地よかったから。話すと胸の中でつかえていた辛い過去の出来事が、楽になっていくのが自分でもわかる。
773「――それで?」
太宰が敦の話の先を促す。
「……僕は、その女の子に点数稼ぎのために売られたんです。食料庫へ忍び込んで、せっかく来客用のお菓子だった、チョコレートを手に入れてきてあげたのに」
「へえ」
敦は、太宰になら孤児院時代の話を素直に話せるようになっていた。別に親身になって聞いてくれるとかではなくて、ただ相槌を打ちながら静かに聞いてくれるからだ。否定も肯定も、称賛も慰めもない。敦にはそれがただ心地よかったから。話すと胸の中でつかえていた辛い過去の出来事が、楽になっていくのが自分でもわかる。
高間晴
TRAINING敦太800字。飴玉の話。飴玉 二人暮らしを初めて間もない時。最初に提案したのは太宰の方だった。
「これから悲しいことやつらいことがあったら、この飴玉を食べていいことにしよう」
甘いものは気分を落ち着かせるからね。そう云って玄関の靴箱の上に、籠を置いて飴玉を入れておいたのだ。
しかしなかなか減らないので、敦はあまり気にしなくなってきた。時々太宰の方が飴玉を食べたい言い訳として、「国木田君に怒られた」等と云って取っていくことがある程度だ。
ある日、敦は急遽一日だけ乱歩の付き添いで出張することになった。「今日は帰れません」と太宰に電話すると「気をつけて帰ってきてね~」と軽く返事された。
そして翌日の夜になって帰宅した敦は、籠の中の飴玉が明らかに減っているのに気づいた。最近は家を出る時にちらりと見るくらいだったが、昨日の朝はもう少し入っていたはずだ。
944「これから悲しいことやつらいことがあったら、この飴玉を食べていいことにしよう」
甘いものは気分を落ち着かせるからね。そう云って玄関の靴箱の上に、籠を置いて飴玉を入れておいたのだ。
しかしなかなか減らないので、敦はあまり気にしなくなってきた。時々太宰の方が飴玉を食べたい言い訳として、「国木田君に怒られた」等と云って取っていくことがある程度だ。
ある日、敦は急遽一日だけ乱歩の付き添いで出張することになった。「今日は帰れません」と太宰に電話すると「気をつけて帰ってきてね~」と軽く返事された。
そして翌日の夜になって帰宅した敦は、籠の中の飴玉が明らかに減っているのに気づいた。最近は家を出る時にちらりと見るくらいだったが、昨日の朝はもう少し入っていたはずだ。
ajisaien3260
MENU2023年7月29日翡翠忌憚弐で頒布します。※p70とp71が入れ替わっています。
大変申し訳ありませんがご了承いただける方のみご購入いただきますようお願いいたします。該当ページ掲載しています。
A5/表紙込p78予定/¥800
とんでも捏造満載二番煎じ帰還を目指す漫画。
シリアスに見せ掛けた力業ハッピーエンドです!!!
部数調査ご協力ありがとうございました! 21
ななめ
DONE言紡弐で展示していたお話です。800字小説……といいつつ、ちょっとオーバーしてました。800字に納めるの難しい!カプなし・ほのぼのです。やさしい羽【中里と新美】「中里さん、図鑑を見せてください」と南吉が言った。私は快く承諾して、南吉を部屋へ招き入れた。
「どの図鑑が見たいのかね」
「あのね、鳥さんがのってる本が見たいの。鳥の羽根を拾ったから、どの鳥か知りたいんです」
なるほどよく見れば南吉の手には小さな羽根が一枚握られている。三寸ほどの茶色い羽根だ。私は彼を椅子に座るよう促して、図鑑を取りに本棚へ向かった。背中越しに南吉に尋ねる。
「その羽根は拾ってきたばかりなのかね」
「ううん。さっき鴎外さんとすれ違ったら、鴎外さんが羽根を拾ったのならちゃんと洗いなさいって」
「ほう、それで」
私は目当ての本を持って南吉のそばへ行った。椅子を引き寄せて隣に座り、机の上に図鑑を広げる。南吉は羽根を私にも見える場所に置き、図鑑を覗き込みながら話を続けた。
848「どの図鑑が見たいのかね」
「あのね、鳥さんがのってる本が見たいの。鳥の羽根を拾ったから、どの鳥か知りたいんです」
なるほどよく見れば南吉の手には小さな羽根が一枚握られている。三寸ほどの茶色い羽根だ。私は彼を椅子に座るよう促して、図鑑を取りに本棚へ向かった。背中越しに南吉に尋ねる。
「その羽根は拾ってきたばかりなのかね」
「ううん。さっき鴎外さんとすれ違ったら、鴎外さんが羽根を拾ったのならちゃんと洗いなさいって」
「ほう、それで」
私は目当ての本を持って南吉のそばへ行った。椅子を引き寄せて隣に座り、机の上に図鑑を広げる。南吉は羽根を私にも見える場所に置き、図鑑を覗き込みながら話を続けた。
スドウ
TRAINING【主明】明智の部屋に侵入して勝手に朝ご飯を作るぺごの話を半分の文字量にした。※文舵練習問題10 800~2000字の作品を切り詰めて半分にする。1930字→965字にした。
(元:https://poipiku.com/376555/7916690.html)
これにて文体の舵取りは終わりです! 頑張ったぞ〜! 最後まで出来てえら〜い!
かいとうしぐさ Another 朝からカレーは重すぎると思っていた。そんな胃に革命を起こす程、このカレーは特別製だ。
甘く炒めた野菜に、辛くも繊細な配合のスパイス。隠し味は躊躇なく鍋に放り込む。繰り返し作ったから、もうお手の物だ。
カラスの声を時計代わりに、そろそろコーヒーを淹れなければと考える。カレーもちょうど仕上がった。
殺風景な机にランチョンマットを二枚敷く。色はエプロンとお揃いのモスグリーン。似合ってると以前褒められたからだ。
メニューは、サラダとカレーとフルーツヨーグルト。本当は豪勢なものを用意したかったが、次にでも作ってやろう。機会なんて、これからいくらでもある。
コーヒーケトルを回し傾けるのも、随分と手慣れた。フィルターの中でコーヒー豆を、俺の中で幸福感を膨らます。
978甘く炒めた野菜に、辛くも繊細な配合のスパイス。隠し味は躊躇なく鍋に放り込む。繰り返し作ったから、もうお手の物だ。
カラスの声を時計代わりに、そろそろコーヒーを淹れなければと考える。カレーもちょうど仕上がった。
殺風景な机にランチョンマットを二枚敷く。色はエプロンとお揃いのモスグリーン。似合ってると以前褒められたからだ。
メニューは、サラダとカレーとフルーツヨーグルト。本当は豪勢なものを用意したかったが、次にでも作ってやろう。機会なんて、これからいくらでもある。
コーヒーケトルを回し傾けるのも、随分と手慣れた。フィルターの中でコーヒー豆を、俺の中で幸福感を膨らます。
八百(ヤオ)
DONE共鳴者のステータスカードのテンプレ置いておきます。1〜3枚目 テンプレ用素材
4枚目 使い方一例
5枚目 完成図一例
加工・使用ご自由に。報告いらないです。
【追記】共鳴感情用の欄を忘れる痛恨のミスをしたので、入れたい方は各々で入れてあげて下さい。
【追追記】ダウンロードはこちらから
https://yao-800.booth.pm/items/5145667 5
310kouri
DONE変異体の二人は市警の優しさで独身寮の一室を貸してもらってる設定です。あと冒頭で2人がやってるのは800が指先で触ったところだけ素早くピンポイントに肌機能解除するどうでもいい戯れです🥺つづくかも 7giiico
MENU2022/12/18 閃華の刻 年納 もんめ新刊『うたってばかり』A5/68p/¥800
前編になります 後編は総集を春コミ発行予定&表紙装丁はほぼ変わらない予定
今回入らなかったページ補稿が巻末から飛べます(イベント後数日中には更新します)
通販:https://ecs.toranoana.jp/joshi/ec/item/040031028738 23
caffeine_inochi
DOODLE反社オメガバース(前編となりますご注意ください)R18/800円(会場)/92P/A5/オフ
*サンプルは繋がっていないページもあります
シリアス・ハピエンです
反社なので善人ではないです
場(アルファ)×冬(オメガ)です
モブへの暴力があります(グロはないです)
冬は場さん以外に性的接触は過去含め無
原作ベースですが出会ってない世界軸
高卒済みの18歳以上ですか?(y/n) 35
kcn_maho
INFO12/11開催「I Miss your Routine」の新刊サンプルです。東6ホール【グ34b】eto
「アシストロイドは金紅石の夢を見るか?」
パラドックスロイド設定のミスルチです。
B5/66p/800円
五十嵐さん(@igrs_kyhz /@vegetale_igrs_t)にゲストで10p小説頂いてます!
通販はイベント終了後に残部があればboothにて行う予定です。 26
mboj_fdk
INFO【Graffiti Book】∟B5/フルカラー/24P/800円
・義兄弟(ガイディル)のみの描き下ろしイラスト集です。
▼通販ページ(BOOTH)
https://fdkgrbr.booth.pm/items/4039818 2
芹沢モブおじ
INFOダポプチアンソロジー『D♡P 明るい家族計画』R18サンプル(サンプル順)
弓桂緋紗さま(漫画)
ヨミ屋さま(小説)
へちまさま(表紙・挿絵)
芹沢(主催・小説)
の四名のダポが集まりました。全体的にR18濃いめの内容となっております!
ページ数150P前後
価格(予定)800-900円前後
18歳以上ですか?(yes/no) 7
amika1021a
MEMO💚💜光闇Shu《800K賀文》極度OOC注意,今日文筆渣注意
非CP向光闇
——————
直播結束了,Shu伸了個懶腰,看著螢幕上的數字,感到相當的感動,沒想到自己已經走到了這一步。
Shu放鬆的躺在床上滑起了手機,看著滿滿的祝賀文和祝賀圖感到窩心,他笑著繼續滑下去,然後,他看見了一張圖。
『那Hikarino也同樣是800K了吧?』
圖片中,Shu和Hikarino開心的牽著手,一起迎接800K的到來,那畫面是多麼的親密。
『畫的還真好。』
腦內響起了那個嗓音,Shu皺了眉頭嘆了口氣。
「我們關係可沒這麼好。」
「真是無情呢,Yamino。」
「這是事實。」
Shu無奈的看向前方的鏡子,Hikarino正緩緩的現身在鏡中。
「你出來做什麼。」
「我只是想一起慶祝這特別的一天。」
1204非CP向光闇
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直播結束了,Shu伸了個懶腰,看著螢幕上的數字,感到相當的感動,沒想到自己已經走到了這一步。
Shu放鬆的躺在床上滑起了手機,看著滿滿的祝賀文和祝賀圖感到窩心,他笑著繼續滑下去,然後,他看見了一張圖。
『那Hikarino也同樣是800K了吧?』
圖片中,Shu和Hikarino開心的牽著手,一起迎接800K的到來,那畫面是多麼的親密。
『畫的還真好。』
腦內響起了那個嗓音,Shu皺了眉頭嘆了口氣。
「我們關係可沒這麼好。」
「真是無情呢,Yamino。」
「這是事實。」
Shu無奈的看向前方的鏡子,Hikarino正緩緩的現身在鏡中。
「你出來做什麼。」
「我只是想一起慶祝這特別的一天。」
せきせー爽歩
INFO【22/12/18 全国大会GS】《together》サンプル
謙i光*漫画
B6/74P/800円
同世界線、15本の短編集。
二人の出会いから始まる二年間の物語。
⚠️複数のモブが登場します
⚠️女装要素を含みます
⚠️ストーリーの流れ上、原作に基づいたセリフ・展開がありますことをご了承ください 20
しんや
MENU【既刊サンプル】◆『時が満ちれば花は咲く - 篠唯 短編集 -』
◆A6文庫/120P(表紙込)/800円 別途送料
※カバー付。カバー下に差分イラスト有。
これまでの再録+同棲後設定の書き下ろし2作をまとめた小説本。
https://stoc4ny1.booth.pm/items/4284426 10
tamaoxxx_0
PROGRESS11月中旬にBOOTHで販売予定の藍一新刊サンプルです。A5/58P/全年齢/¥800
ショタ藍染とその世話役一護のお話です。シリアス寄り。
なんでも許せる方向け。
passは藍一を小文字ローマ字で(6文字) 18
高間晴
TRAINING敦太800字。惚気。生活能力皆無のあの人 ある日の武装探偵社。昼休みに、敦が国木田に訊いた。
「国木田さん、ずっと謎に思ってることがあるんですけど」
「どうした、敦」
「太宰さんって僕と暮らすようになるまで、日常生活送れてました……?」
そこで国木田は眼鏡を押さえる。レンズが光を反射して表情が読み取れなくなる。
「――何かあったのか?」
「いえ……あの人ってば料理はできないし、ポケットに物を入れたまま洗濯に出すし、お風呂上がりは髪の毛もろくに乾かさないし……」
そこで国木田は深いため息をついた。単なる惚気だと思われたのだろう。
「知らん。どうせ女の世話にでもなってたんじゃないか?」
「……ですかねえ……」
あの太宰のことだ。女性をたらし込んで面倒を見てもらうくらい、わけはないだろう。
950「国木田さん、ずっと謎に思ってることがあるんですけど」
「どうした、敦」
「太宰さんって僕と暮らすようになるまで、日常生活送れてました……?」
そこで国木田は眼鏡を押さえる。レンズが光を反射して表情が読み取れなくなる。
「――何かあったのか?」
「いえ……あの人ってば料理はできないし、ポケットに物を入れたまま洗濯に出すし、お風呂上がりは髪の毛もろくに乾かさないし……」
そこで国木田は深いため息をついた。単なる惚気だと思われたのだろう。
「知らん。どうせ女の世話にでもなってたんじゃないか?」
「……ですかねえ……」
あの太宰のことだ。女性をたらし込んで面倒を見てもらうくらい、わけはないだろう。
高間晴
TRAINING敦太800字。爪を切るのは誰のため?爪を切る ぱちん、ぱちん、と爪切りの音だけが響く昼下がりの部屋。敦が手の爪を切っているのだ。
太宰は窓辺に腰を下ろして、その姿を見るともなく見ている。
やがて終わったのか、敦は爪切りを引き出しにしまった。
「敦君ってさあ、マメだよね」
太宰がそう云って敦の手を取る。爪は綺麗に切り揃えてあって、敦の几帳面な性格が見て取れる。
「……こうしておけば、太宰さんを傷つけずに済みますから」
少し照れたように笑う敦に、太宰は頬に朱が上るのを感じる。敦は太宰を抱くときのために爪を切ってくれていたのだ。
その発想は無かった。太宰は心臓が跳ねたので、敦から手を離すと、口を覆ってそっぽを向く。
「太宰さん?」
「なっ、なんでもない!」
865太宰は窓辺に腰を下ろして、その姿を見るともなく見ている。
やがて終わったのか、敦は爪切りを引き出しにしまった。
「敦君ってさあ、マメだよね」
太宰がそう云って敦の手を取る。爪は綺麗に切り揃えてあって、敦の几帳面な性格が見て取れる。
「……こうしておけば、太宰さんを傷つけずに済みますから」
少し照れたように笑う敦に、太宰は頬に朱が上るのを感じる。敦は太宰を抱くときのために爪を切ってくれていたのだ。
その発想は無かった。太宰は心臓が跳ねたので、敦から手を離すと、口を覆ってそっぽを向く。
「太宰さん?」
「なっ、なんでもない!」
高間晴
TRAINING敦太800字。うどん食べたい。夜食 敦は目を覚ました。
「……お腹すいた……」
部屋は薄暗い。枕元の時計を見ればまだ夜中の三時。隣では太宰が眠っているので、そっと寝床を抜け出した。
――何か食べるものあったかな。
台所に行き冷蔵庫を漁る。
孤児院時代には一度だけした、夜食。ある時、空腹に耐えられなくて食料庫に忍び込んだことがある。味気ない乾パンを食べたがそれはとても美味しくて。でも結局、後に受けた罰でもう二度とはするまいと思ったのだ。
冷蔵庫から冷凍うどんと卵、葱を見つけたので、これでうどんを作ろうと思って腕まくりする。
まず鍋に水を入れてお湯を沸かす。その間に葱を刻むことにした。
「あーつーしくーん♡」
背後から声をかけられて敦はびくっと肩を震わせる。葱を刻む手元が狂わなくてよかった。振り返れば太宰が立っている。夜着を適当にひっかけただけのその姿は目に毒だ。
918「……お腹すいた……」
部屋は薄暗い。枕元の時計を見ればまだ夜中の三時。隣では太宰が眠っているので、そっと寝床を抜け出した。
――何か食べるものあったかな。
台所に行き冷蔵庫を漁る。
孤児院時代には一度だけした、夜食。ある時、空腹に耐えられなくて食料庫に忍び込んだことがある。味気ない乾パンを食べたがそれはとても美味しくて。でも結局、後に受けた罰でもう二度とはするまいと思ったのだ。
冷蔵庫から冷凍うどんと卵、葱を見つけたので、これでうどんを作ろうと思って腕まくりする。
まず鍋に水を入れてお湯を沸かす。その間に葱を刻むことにした。
「あーつーしくーん♡」
背後から声をかけられて敦はびくっと肩を震わせる。葱を刻む手元が狂わなくてよかった。振り返れば太宰が立っている。夜着を適当にひっかけただけのその姿は目に毒だ。
高間晴
TRAINING敦太800字。よくある三択。よくある三択、実質一択「敦君、ご飯にする? お風呂にする? それともわ・た・し?」
残業でへとへとに疲れて帰ってきた敦。それを出迎えた太宰は、どこから調達したのかフリフリの白いエプロンを身に着けていた。
さすがに裸エプロンではなかったが、敦はとりあえず太宰を抱きしめる。そして思い切り深呼吸してから、台所へ向かう。
「……うわ」
台所は想像以上に荒れていた。まな板は真っ二つになっているし、鍋は焦げ付いている。その上小麦粉があたり一面に散らばっている。粉塵爆発の実験でもしたんだろうか。
「何を作ろうとしたんですか」
「えーとね、コロッケ?」
小首を傾げてそう云うものだから、敦はめまいがしてきた。
太宰は敦の手を引いた。
「でもお風呂はちゃんと沸いてるよ?」
838残業でへとへとに疲れて帰ってきた敦。それを出迎えた太宰は、どこから調達したのかフリフリの白いエプロンを身に着けていた。
さすがに裸エプロンではなかったが、敦はとりあえず太宰を抱きしめる。そして思い切り深呼吸してから、台所へ向かう。
「……うわ」
台所は想像以上に荒れていた。まな板は真っ二つになっているし、鍋は焦げ付いている。その上小麦粉があたり一面に散らばっている。粉塵爆発の実験でもしたんだろうか。
「何を作ろうとしたんですか」
「えーとね、コロッケ?」
小首を傾げてそう云うものだから、敦はめまいがしてきた。
太宰は敦の手を引いた。
「でもお風呂はちゃんと沸いてるよ?」
高間晴
TRAINING敦太800字。鍋が美味しい季節です。すき焼き 敦と太宰は日用品の買い出しに出ている。
太宰が台所用品の売り場を見回しながら歩いている。と、目に留まったそれに思わず感嘆の声をもらす。
「あ、これいいな~。ねえ敦君、これ買おう?」
「なんですか?」
敦はカートを押しながら後ろからついてきた。太宰が嬉しそうな顔で指差すのは、底が浅めの平たい鍋だ。
「すき焼き用の鍋。
ほら、私って今まで一人暮らしだったから、鍋なんてなかなか出来なくてさあ」
「いいですね。僕も鍋とかそういう料理ほとんど食べたことなくて」
ふたりとも納得して鍋を買うと、家路を辿った。
帰り道に、敦がなにか云いたげにしているのに気づくと、太宰はその頬をつつく。
「どうしたんだい?」
「いえ……買っちゃったのはいいんですけど、すき焼きってどんな食べ物ですか?」
958太宰が台所用品の売り場を見回しながら歩いている。と、目に留まったそれに思わず感嘆の声をもらす。
「あ、これいいな~。ねえ敦君、これ買おう?」
「なんですか?」
敦はカートを押しながら後ろからついてきた。太宰が嬉しそうな顔で指差すのは、底が浅めの平たい鍋だ。
「すき焼き用の鍋。
ほら、私って今まで一人暮らしだったから、鍋なんてなかなか出来なくてさあ」
「いいですね。僕も鍋とかそういう料理ほとんど食べたことなくて」
ふたりとも納得して鍋を買うと、家路を辿った。
帰り道に、敦がなにか云いたげにしているのに気づくと、太宰はその頬をつつく。
「どうしたんだい?」
「いえ……買っちゃったのはいいんですけど、すき焼きってどんな食べ物ですか?」
高間晴
TRAINING敦太800字。煙草の理由。偲ぶ煙 太宰さんから時々、煙草の匂いがする。特に天気の良い日。
けれど吸っているところを見たことがない。別に隠れて吸うこともないだろうし、なんでだろうと思っていた。
ある日。僕は国木田さんから、太宰さんを連れ戻してくるように云われた。異能を使って嗅覚を強化すると、息を吸い込んだ。匂いを辿って街を駆け抜ける。
たどり着くのは街外れの、海が見える墓地。
「……やあ、敦君」
振り返らずに答える太宰さんは、まだ新しい墓の前で煙草を吸っていた。嗚呼、こういうことだったのか、と僕は合点がいった。太宰さんが煙草を吸うのは、故人を偲んでのことだったのだと。
今の太宰さんは近づきがたい雰囲気をしている。僕はその背後からおそるおそる足を踏み出した。
891けれど吸っているところを見たことがない。別に隠れて吸うこともないだろうし、なんでだろうと思っていた。
ある日。僕は国木田さんから、太宰さんを連れ戻してくるように云われた。異能を使って嗅覚を強化すると、息を吸い込んだ。匂いを辿って街を駆け抜ける。
たどり着くのは街外れの、海が見える墓地。
「……やあ、敦君」
振り返らずに答える太宰さんは、まだ新しい墓の前で煙草を吸っていた。嗚呼、こういうことだったのか、と僕は合点がいった。太宰さんが煙草を吸うのは、故人を偲んでのことだったのだと。
今の太宰さんは近づきがたい雰囲気をしている。僕はその背後からおそるおそる足を踏み出した。
高間晴
TRAINING敦太800字。風邪。風邪ひいた ――敦君の怪我はすぐ治ってしまう。
ポートマフィアや組合と戦ったときも、虎の異能で驚異的な治癒能力を発揮している。
けれど。
「太宰さん……伝染るからあっち行っててください……」
布団で横になっている敦君は、ごほごほと咳をしている。
そう。風邪を引いたのだ。
怪我なら簡単に治ってしまう彼だけど、病気はその限りでないらしい。
こんな状態なのに、私はなんだか嬉しくなってしまっていた。だって、敦君の看病が出来るんだもの。
「何を云ってるんだい。私がちゃんと看病してあげるから」
胸を張ってそう云うと、私は一考した。
病人には何をしたらいいか。それは森さんのところにいた時、ある程度は学んでいた。
「ええと、敦君。何か食べる? お粥とかうどんとか。なんでも作るよ」
925ポートマフィアや組合と戦ったときも、虎の異能で驚異的な治癒能力を発揮している。
けれど。
「太宰さん……伝染るからあっち行っててください……」
布団で横になっている敦君は、ごほごほと咳をしている。
そう。風邪を引いたのだ。
怪我なら簡単に治ってしまう彼だけど、病気はその限りでないらしい。
こんな状態なのに、私はなんだか嬉しくなってしまっていた。だって、敦君の看病が出来るんだもの。
「何を云ってるんだい。私がちゃんと看病してあげるから」
胸を張ってそう云うと、私は一考した。
病人には何をしたらいいか。それは森さんのところにいた時、ある程度は学んでいた。
「ええと、敦君。何か食べる? お粥とかうどんとか。なんでも作るよ」
高間晴
TRAINING敦太800字。口内炎。しみるから 敦の作った朝食を目の前にして、太宰は一口だけ食べたと思ったら、箸を持ったまま難しい顔をしている。
「どうしました? 食べないんですか?」
「いやほら……ちょっと口の中が痛くて」
左側の頬を手で押さえたまま、太宰は憂鬱そうな表情でいる。
卓袱台の向かいにいた敦が近づいてきて、「見せて下さい」と云うので太宰は素直に口を開ける。敦がよく見ると、左の頬、その内側にぽつんと白い点ができていた。
「あー……口内炎ですね」
「やっぱり?」
太宰は口を閉じると、箸を置いてため息をついた。
「敦君の作ってくれたご飯、無駄になっちゃうね」
寂しそうな顔で敦を見てくるものだから、敦は困ったように笑う。
「食べたければ何時でも幾らでも作りますから」
843「どうしました? 食べないんですか?」
「いやほら……ちょっと口の中が痛くて」
左側の頬を手で押さえたまま、太宰は憂鬱そうな表情でいる。
卓袱台の向かいにいた敦が近づいてきて、「見せて下さい」と云うので太宰は素直に口を開ける。敦がよく見ると、左の頬、その内側にぽつんと白い点ができていた。
「あー……口内炎ですね」
「やっぱり?」
太宰は口を閉じると、箸を置いてため息をついた。
「敦君の作ってくれたご飯、無駄になっちゃうね」
寂しそうな顔で敦を見てくるものだから、敦は困ったように笑う。
「食べたければ何時でも幾らでも作りますから」
高間晴
TRAINING敦太800字。寒い朝。冬きたる 朝、敦は寒さで目を覚ます。
「さっむ……!」
思わず鳥肌の立つ腕をさすりながら体を起こした。
カーテンの隙間から冷えた朝日が部屋に射し込んでいる。いつの間にか、もう冬になっているのだ。
それにしても、なんでこんなに寒いのかと敦は思った。だが、気づけば、毛布や掛け布団は隣で寝ている太宰に全部奪い取られてしまっている。
全く仕方のない人だなあ、なんて思いながら、こちらに背を向けている太宰の肩にそっと手をかける。
「うーん……敦君、そこはだめぇ……」
触れた瞬間、妙に艶っぽい声の寝言。思わず敦は昨夜のことを思い出してしまって、手を離す。ごくりとつばを飲む音が聞こえそうな気すらして――。
「って、太宰さん! 起きてるでしょ!?」
837「さっむ……!」
思わず鳥肌の立つ腕をさすりながら体を起こした。
カーテンの隙間から冷えた朝日が部屋に射し込んでいる。いつの間にか、もう冬になっているのだ。
それにしても、なんでこんなに寒いのかと敦は思った。だが、気づけば、毛布や掛け布団は隣で寝ている太宰に全部奪い取られてしまっている。
全く仕方のない人だなあ、なんて思いながら、こちらに背を向けている太宰の肩にそっと手をかける。
「うーん……敦君、そこはだめぇ……」
触れた瞬間、妙に艶っぽい声の寝言。思わず敦は昨夜のことを思い出してしまって、手を離す。ごくりとつばを飲む音が聞こえそうな気すらして――。
「って、太宰さん! 起きてるでしょ!?」
giiico
MENU10/16 BrilliantDays34『名称未設定』A5/64p/¥800(会場)
通販: https://ecs.toranoana.jp/joshi/ec/item/040031018564/
病院帰りのHiMERUと巽が血迷ってふたりで遠出して傷は舐めてやらないで帰ってくるだけの兄巽 思考整理本なので本当にただ喋ってるだけ 27
高間晴
REHABILI敦太800字。完全自殺読本。読書の秋「いや〜、すっかり秋になったなぁ。こう涼しいと読書が捗るね」
太宰はそう云いながら部屋の布団の上で寝そべりつつ、本の頁をめくっている。
「読書はいいですけど、太宰さんってそれ以外の本読まないんですか?」
敦が指差すのは、真っ赤な表紙に白で棺桶と十字架のデザインが目を引く『完全自殺読本』だ。太宰は暇さえあればこれを開いて読みふけっている。付箋がびっしり貼られた彼の愛読書。それは聞いた話によると彼の生まれる前に出版されて一躍話題になったものの、有害図書認定されて絶版になった稀覯本らしい。
「何を云ってるんだい敦君。これより素晴らしい本なんてこの世にないよ?」
太宰が熱弁する。敦は本能で「あ、変なスイッチ押した」と思ったが後の祭り。
853太宰はそう云いながら部屋の布団の上で寝そべりつつ、本の頁をめくっている。
「読書はいいですけど、太宰さんってそれ以外の本読まないんですか?」
敦が指差すのは、真っ赤な表紙に白で棺桶と十字架のデザインが目を引く『完全自殺読本』だ。太宰は暇さえあればこれを開いて読みふけっている。付箋がびっしり貼られた彼の愛読書。それは聞いた話によると彼の生まれる前に出版されて一躍話題になったものの、有害図書認定されて絶版になった稀覯本らしい。
「何を云ってるんだい敦君。これより素晴らしい本なんてこの世にないよ?」
太宰が熱弁する。敦は本能で「あ、変なスイッチ押した」と思ったが後の祭り。
高間晴
REHABILI敦太800字。相合傘。傘の中「参ったなぁ……」
夜更けにバーに飲みに出かけて、マスターと少し話し込んでいたら雨が降り始めた。大きめの雨粒がばらばらと店の窓ガラスを叩いては滑り落ちていく。
マスターが店に置いてある傘を貸してくれると云ったが、太宰は断った。コートのポケットから携帯を取り出してボタンを操作すると、耳に当てた。
「あ、もしもし敦君?」
「太宰さん、今どこにいるんですか?
雨が降ってますけど……云ってくれれば迎えに行きますよ」
太宰は丸椅子をくるりと回して、カウンターに肘をついた。
「じゃあお願いしていいかな。
駅前から裏通りを入ってすぐの、ノーチラスってバーだよ」
通話を終えると、太宰はもう一杯飲もうと、ブランデーを注文する。
926夜更けにバーに飲みに出かけて、マスターと少し話し込んでいたら雨が降り始めた。大きめの雨粒がばらばらと店の窓ガラスを叩いては滑り落ちていく。
マスターが店に置いてある傘を貸してくれると云ったが、太宰は断った。コートのポケットから携帯を取り出してボタンを操作すると、耳に当てた。
「あ、もしもし敦君?」
「太宰さん、今どこにいるんですか?
雨が降ってますけど……云ってくれれば迎えに行きますよ」
太宰は丸椅子をくるりと回して、カウンターに肘をついた。
「じゃあお願いしていいかな。
駅前から裏通りを入ってすぐの、ノーチラスってバーだよ」
通話を終えると、太宰はもう一杯飲もうと、ブランデーを注文する。
高間晴
REHABILI敦太800字。ちょっとした悪戯に遭うあつしくん。髪を切ろうか 敦がデスクでPC作業をしているが、どうにも前髪が目に入ってきて集中できない。
「髪の毛切らなきゃなぁ……」
前髪をいじりながらつぶやくと、背後からナオミが近づいてきて声をかけてきた。
「あら、敦さん。お困りの様子ですわね。ナオミがいいものを差し上げますわ」
そう云うとナオミは振り返った敦の前髪を素早く顔の横にまとめると、何やらヘアピンで留めてくれた。
「あ、ありがとうございます」
「いえいえ。お礼には及びませんわ」
そう微笑むとナオミは長い黒髪をさらりと翻して給湯室の方へと消えていった。
しばらく敦がPCに集中していると、入口のあたりで国木田の怒声と適当にあしらう太宰の声が聞こえてきた。
「――だから太宰! 貴様はどうしていつもそうなんだ!」
885「髪の毛切らなきゃなぁ……」
前髪をいじりながらつぶやくと、背後からナオミが近づいてきて声をかけてきた。
「あら、敦さん。お困りの様子ですわね。ナオミがいいものを差し上げますわ」
そう云うとナオミは振り返った敦の前髪を素早く顔の横にまとめると、何やらヘアピンで留めてくれた。
「あ、ありがとうございます」
「いえいえ。お礼には及びませんわ」
そう微笑むとナオミは長い黒髪をさらりと翻して給湯室の方へと消えていった。
しばらく敦がPCに集中していると、入口のあたりで国木田の怒声と適当にあしらう太宰の声が聞こえてきた。
「――だから太宰! 貴様はどうしていつもそうなんだ!」
高間晴
REHABILI敦太800字。酒は飲んでも飲まれるな。呼ばう声「あ〜あ、飲みすぎちゃった〜」
真夜中のネオンが輝く歓楽街を、ふらふら歩きながら太宰は笑っている。
酒精の上った頬に当たる夜風はひやりと冷たく、いつの間にか秋が来たのだと告げている。
今日は敦とくだらないことで口喧嘩になり、むしゃくしゃしたのでとことん飲んでやろうと思って一人でここまで来ていた。
「もう一軒行くかな」
一人でつぶやいて、雑然とした人混みの中を歩いていく。
「……?」
ふいに自分の名を呼ぶ声があった気がして、太宰は路地裏の方へ目をやる。
――太宰……太宰。
どこか聞き覚えのある低い声に、太宰は朦朧とした頭の中で答えを導き出す。
「織田作……?」
相変わらずその声は太宰の名を呼んでいて、太宰はそちらへと歩を進めてしまっていた。
886真夜中のネオンが輝く歓楽街を、ふらふら歩きながら太宰は笑っている。
酒精の上った頬に当たる夜風はひやりと冷たく、いつの間にか秋が来たのだと告げている。
今日は敦とくだらないことで口喧嘩になり、むしゃくしゃしたのでとことん飲んでやろうと思って一人でここまで来ていた。
「もう一軒行くかな」
一人でつぶやいて、雑然とした人混みの中を歩いていく。
「……?」
ふいに自分の名を呼ぶ声があった気がして、太宰は路地裏の方へ目をやる。
――太宰……太宰。
どこか聞き覚えのある低い声に、太宰は朦朧とした頭の中で答えを導き出す。
「織田作……?」
相変わらずその声は太宰の名を呼んでいて、太宰はそちらへと歩を進めてしまっていた。
高間晴
REHABILI敦太800字。薔薇を一輪。貴方しかいない「好きって言ったら怒る?」
出し抜けに太宰からそう訊かれて、敦は何のことだろうと口を半分開いたまま振り返った。
今は事務所の応接室に飾る花を敦が生けているのだが、傍のソファに太宰がゆったり沈み込んでいる。
――好き? 太宰さんが好きって言うと僕が怒るかもしれないもの……?
「なんの、ことですか……?」
敦はおそるおそる訊いてみた。心臓がばくばくして口から飛び出そうなのを堪えながら。
「私が、敦君以外の人を」
予想した通りの台詞を口の端に乗せて太宰は微笑む。
「勿論、仮定の話としてだけど」
敦は重いため息をついた。
「……怒りませんよ。僕なんかよりその人のほうが太宰さんにお似合いでしょうし」
そこで太宰は眉根を寄せて不機嫌な顔をした。
908出し抜けに太宰からそう訊かれて、敦は何のことだろうと口を半分開いたまま振り返った。
今は事務所の応接室に飾る花を敦が生けているのだが、傍のソファに太宰がゆったり沈み込んでいる。
――好き? 太宰さんが好きって言うと僕が怒るかもしれないもの……?
「なんの、ことですか……?」
敦はおそるおそる訊いてみた。心臓がばくばくして口から飛び出そうなのを堪えながら。
「私が、敦君以外の人を」
予想した通りの台詞を口の端に乗せて太宰は微笑む。
「勿論、仮定の話としてだけど」
敦は重いため息をついた。
「……怒りませんよ。僕なんかよりその人のほうが太宰さんにお似合いでしょうし」
そこで太宰は眉根を寄せて不機嫌な顔をした。
高間晴
REHABILI敦太800字。ストリップってこれでええんか……?君の上で踊る 粘る水音がアパートの一室に響いている。
敦と太宰は二人で家に帰ってきた後、もつれるようにして布団に転がった。今は、太宰が覆いかぶさるような形でくちづけをかわしている。
「はっ……太宰さんっ」
太宰の手慣れた様子に圧され気味の敦は、思わず制止をかける。太宰の肩を軽く押して、唇が離れた隙にじっと太宰の目を覗き込んだら、その鳶色の瞳には熱に浮かされた自分の顔が映り込んでいた。思わず、顔を逸らしてしまう。
それを見た太宰は、体を起こして敦の腰のあたりに跨る。そうして敦が驚く間もなく、ループタイに手をかけると、挑発的な笑みを浮かべた。
「ストリップをご所望かな?」
ごくり、と敦の喉が鳴る音すら聞こえそうな距離。太宰は満足げに微笑むと、するりとループタイを外して放った。いつもの砂色のコートはすでに脱いでいる。次はベスト。ボタンをひとつひとつ外していく。
886敦と太宰は二人で家に帰ってきた後、もつれるようにして布団に転がった。今は、太宰が覆いかぶさるような形でくちづけをかわしている。
「はっ……太宰さんっ」
太宰の手慣れた様子に圧され気味の敦は、思わず制止をかける。太宰の肩を軽く押して、唇が離れた隙にじっと太宰の目を覗き込んだら、その鳶色の瞳には熱に浮かされた自分の顔が映り込んでいた。思わず、顔を逸らしてしまう。
それを見た太宰は、体を起こして敦の腰のあたりに跨る。そうして敦が驚く間もなく、ループタイに手をかけると、挑発的な笑みを浮かべた。
「ストリップをご所望かな?」
ごくり、と敦の喉が鳴る音すら聞こえそうな距離。太宰は満足げに微笑むと、するりとループタイを外して放った。いつもの砂色のコートはすでに脱いでいる。次はベスト。ボタンをひとつひとつ外していく。
高間晴
REHABILI敦太800字。一緒にお風呂。背をなぞる 太宰と敦が住む安アパートの風呂は、言わずもがな狭いし古い。トイレと風呂が別なだけまだましなのかもしれないが。
ポートマフィア時代は、こんなアパートと比べ物にならないくらい広くて豪奢な部屋に住んでいたけど、今のほうが満たされていると太宰は思ってしまう。
――それもこれも、今の私には敦君がいるから。
太宰が湯船に浸かっていると、敦が帰ってきた。そのまま浴室から声をかけると彼は入ってきて、洗い場で髪を洗い始めた。
もこもこ泡立つシャンプーが温かい湯気の中で弾けていくにつれ、二人で共有している香りが浴室に広がっていく。
敦は髪を洗うのに専念していて、目も閉じている。太宰はその背に人差し指を這わせた。
「ひゃっ!? 太宰さん!?」
836ポートマフィア時代は、こんなアパートと比べ物にならないくらい広くて豪奢な部屋に住んでいたけど、今のほうが満たされていると太宰は思ってしまう。
――それもこれも、今の私には敦君がいるから。
太宰が湯船に浸かっていると、敦が帰ってきた。そのまま浴室から声をかけると彼は入ってきて、洗い場で髪を洗い始めた。
もこもこ泡立つシャンプーが温かい湯気の中で弾けていくにつれ、二人で共有している香りが浴室に広がっていく。
敦は髪を洗うのに専念していて、目も閉じている。太宰はその背に人差し指を這わせた。
「ひゃっ!? 太宰さん!?」
greenpeas1223
MENUムパラ9/17のお品書き●新刊「月虹」+踊るテセニュピンズセット
フルカラーイラスト本(ツイッターログ加筆修正あり)/本文26P/1000円
ピンズサイズ30mm×30mm
●グッズ
おてて繋ぎテセニュピンズ/800円
ピンズサイズ30mm×30mm
高間晴
REHABILI敦太800字。暖房器具を買いに行く二人。冬の過ごし方 今日の敦と太宰は、家電量販店に暖房器具を見に来ていた。秋も深まったので、朝晩など肌寒い時があるのだ。
「あ、太宰さん。炬燵がありますよ」
敦が指差すのは二人で向かい合わせに入るとちょうどよさそうなサイズの炬燵。うーん、と太宰は顎に手をやる。
「いいと思うんだけど、これ買ったら最後、私はトイレに立つのも面倒になりそうな気がする」
「確かに……」
炬燵に入ったままの太宰が「もうずっとここにいたい」などと云うのが、敦には容易に想像できた。これは却下だ。
「じゃあ電気毛布や電気あんかは?」
「布団に入る時は敦君の体温が高いからいらないかなぁ」
それを聞いて敦は少し顔を赤らめてしまう。一方太宰は真剣に暖房器具を見ている。二人で売り場をゆっくり歩きながら見ていく。
867「あ、太宰さん。炬燵がありますよ」
敦が指差すのは二人で向かい合わせに入るとちょうどよさそうなサイズの炬燵。うーん、と太宰は顎に手をやる。
「いいと思うんだけど、これ買ったら最後、私はトイレに立つのも面倒になりそうな気がする」
「確かに……」
炬燵に入ったままの太宰が「もうずっとここにいたい」などと云うのが、敦には容易に想像できた。これは却下だ。
「じゃあ電気毛布や電気あんかは?」
「布団に入る時は敦君の体温が高いからいらないかなぁ」
それを聞いて敦は少し顔を赤らめてしまう。一方太宰は真剣に暖房器具を見ている。二人で売り場をゆっくり歩きながら見ていく。
高間晴
REHABILI敦太800字。サボテンとヒマワリ。仙人掌と向日葵 朝に目を覚ました太宰は、歯を磨きながら何とはなしにテレビを見る。退屈な朝のニュース。そうしてふとテレビ台の上に置かれた小さなサボテンの鉢に目をやると、あ、と小さく声を漏らした。
「……枯らしちゃった……」
小さな小さな丸いサボテンは、黄色くなって萎れた蜜柑のようになってしまっている。
「えっ、太宰さんってば、サボテン枯らしちゃったんですか?」
探偵社のデスクで敦が資料をまとめながら、目を丸くして云った。
もとはといえば、あれは敦と二人で雑貨屋に行った際に敦が買ってくれたもの。なので、太宰が素直に枯らしてしまったと伝えたらこの反応である。
「サボテンなんて枯らす方が難しいと思うんですけど」
PCを立ち上げながら、太宰はしょんぼりした様子で敦に謝る。
872「……枯らしちゃった……」
小さな小さな丸いサボテンは、黄色くなって萎れた蜜柑のようになってしまっている。
「えっ、太宰さんってば、サボテン枯らしちゃったんですか?」
探偵社のデスクで敦が資料をまとめながら、目を丸くして云った。
もとはといえば、あれは敦と二人で雑貨屋に行った際に敦が買ってくれたもの。なので、太宰が素直に枯らしてしまったと伝えたらこの反応である。
「サボテンなんて枯らす方が難しいと思うんですけど」
PCを立ち上げながら、太宰はしょんぼりした様子で敦に謝る。