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    THE MOON

    うきご

    DONEpixivにもアップしている短編小説です。
    こういうルシアダが好き〜と思って書きました。雰囲気。

    月をあげる≒Promise the moon
    できもしない約束、という慣用句です。
    この言葉が刺さりすぎたので、ぜひみなさまのルシアダにおける「Promise the moon」を見せてください!お頼み申します。
    月をあげる深夜の談話室は薄暗く、弛緩した独特の空気が漂っている。ほとんどの住人が寝静まったなか、アダムとルシファーは誰もいないバーカウンターで酒を飲み交わしていた。
    いつもは煽りあい小競り合い殴りあってばかりのふたりも、この時ばかりは穏やかに昔話に花を咲かせたり、くだらない、取り留めもない会話に興じている。チャーリーがこの場面を目撃したとしたら、「いつもそうやっていてくれたらいいのに!」なんて嘆きそうだ。ふたりの喧嘩でホテルを大きく修繕するはめになったのは、決して一度や二度の話ではない。「頭を冷やしてきて!」とふたりしてホテルを追い出されたり、お互いを知るためと一週間同じ部屋で過ごしたこともあった。それは思い出したくもない悪夢であるが、それが功を奏してか、今では稀にサシ飲みをするまでになっていた。時間帯が誰もいない深夜に限られるのは、間違っても「仲良し」だなんて思われたくない、というふたりの共通認識にあったが、それでも関係性はだいぶ修繕されたと言っていいだろう。
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    rurisaka_gytn

    PROGRESS転生学パロGive me the moonシリーズのその後。この先を書くかどうか悩み過ぎてだめ。
    Moonrakers 突然降って湧いた休日だというのに、何もする事がない。橙色の夕映えを頬で受け止めながら、本日幾度目かの欠伸をする。教師の仕事はやり甲斐はあれど激務で、こういう休みは貴重だ。先月、出張で留守にした同僚の穴埋めをした。クリーンな経営にこだわりのある理事長のお陰で、余計に働いた分は休暇を、という事になったのだ。そうして迎えた祝日でも何でもない木曜日、俺はすっかり暇を持て余していた。いつも通りの時間に起床し、ジムで一通りのトレーニングをこなしたものの、まだ時間がたっぷりある。困ったものだ。
     独りで生きる事には慣れていた。それなのに、恋人が出来る前の自分はどうやって日々を過ごしていたのか、まるで思い出せない。少なくとも、こんな風に暇だ暇だと考えてはいなかった。それだけは確かだ。口にする事さえ憚られる相手ではあるけれど、教え子に当たる竈門炭治郎という恋人は、止める間もなく俺の生活に入り込んできた。互いの休日は大抵この部屋で、慎ましい逢瀬を楽しんでいる。若者らしく外で遊べと言っても聞かないのだ。頭が固くて生真面目で、妙に大人びたところのある、それでいて可愛い少年である。恋人になる手前までは、互いに無理をしてまで会っていた。密やかに想いを確かめ合って以降、俺は節度ある付き合いを心掛けている。会わない時間が延びたところで、その分余計に愛おしさが募るのだ。俺はすっかり骨抜きにされていた。
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