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    トーマス

    ぴかる

    REHABILIザバ:アルフレッド・ペニーワースとトーマス・ウェインのお話。全年齢。
    W爆発の瞬間想ったのは、トーマス、あなたではなくブルースのことだった。きっとあなたはそれを喜んでくれるだろう。私はそれが、悲しくて仕方がないのだけれど。時が経ち、私は老いて、あなたの顔もぼんやりとしか思い出せない。

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     父の、そしてペニーワースの仕事を継ぐつもりはまったくなかった。父から代替わりする頃にはそういう時代でもなくなっているだろうし、自分がやらなくてもなんとかなるだろうと気楽に考えていた。しかし父が急逝し、落胆する母をそれ以上悲しませることはできなかった。私が米国に渡ったのは、28歳の冬だった。
     ゴッサム・シティに足を踏み入れるのはそれが初めてだった。父が祖父のあとを継ぐために母と私を英国に残して渡米した時、私はもう15歳になっていたから、わざわざ父の顔を見にこちらまでくるようなことはなく、この街のことは年に一度帰省する父の話に聞いていただけだった。タクシーは危険だからと、ウェイン家の運転手が空港で私を待っていた。元SASも舐められたものだなと苦々しく思ったけれど、車の窓から眺めるゴッサム・シティの景色を見て、迎えを寄こしてもらって良かったと思ったことをよく覚えている。
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