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    王様

    えんどう

    DONE▽トンチキパラレル
    ▽王様が人魚
    ▽出会い編
    邂逅▽トンチキ現代パラレル
    ▽王様が人魚
    ▽転生してません
    ▽ぐだキャスギル






    「う⌇⌇ん、釣り日和だなぁ」
     一人用の手漕ぎの小舟に椅子を置き、両腕を目一杯伸ばして黒髪の青年――藤丸立香は眩しげに空を仰いだ。どこまでも透き通った青い空は白い雲がところどころに浮かび、ゆっくりと風に流されていく。太陽に照らされても暑過ぎず、風の冷たさもなく、人間に最適と思いたくなるような長閑な気候に立香は目を細めて、よし、と呟く。
    「よっ、と」
     派手なルアーを取りつけた竿を振り、大体の目当ての場所へ投擲する。ルアーはぽちゃんと水の跳ねる音を立てて着水し、沈んでいく。それを眺め、不規則に糸を巻いたり竿を引っ張ったり、水中の魚がルアーに興味を示すよう動かす。まあ、目的は魚を釣ることではないので、そこまで細かく真剣に動かす必要はないのだけれど。こうしていると、頭を悩ませていることだとか、日々の雑事から開放されたようで、気分がいい。この感覚を味わいたくて立香は小舟に椅子を置いて腰かけ、手繰り寄せた当たりのないルアーをもう一度遠くへ放る。ぽちゃんという水の跳ねる音が好きだ。それからすぐ側でした、魚の尾が水面を叩くばしゃんという音も。
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