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    エモい

    Yako_san8

    DONE★hadesweekly二回目お題・summer/夏
    冥界王子と死神が現代に遊びに来ている感じのやつ。だいぶ地上で活動できる期間が延びた王子と、そんな異邦人をもてなしたモブおじいちゃんの話です。調べ物してたとき(エモいな…!?)と思った〈しきたり〉について書けたので満足です、夏…!
    炎天のまろうど「こんにちは、お若い方。《一匙の甘味》はいかがですか?」

     背後から控え目にかけられた声に、黒髪の青年は振り返る。遮る物の何もない剥き出しの地面からの照り返しを全身に受け、今にも行き倒れそうに覚束ない足取りで歩くその旅行者の姿が同情を誘い、ちょうど庭先で薬草を摘んでいた老主人は咄嗟に挨拶をしたのだ。
     サファリハットに麻混素材の半袖シャツ、濃紺のベイカーズパンツというカジュアルな出で立ちは典型的なバックパッカーであろうか。剥き出しの前腕が少し赤くなっていることに目を留めた老紳士は(これはかなり酷い日焼けになるな)と若さゆえの蛮勇に内心苦笑する。
    「《グリカ・クタリウ》…?」
     乾燥に少しひび割れた唇をペロリと舐めた青年は好奇心旺盛な子供めいた瞳で老主人を見返した。精悍な顔立ちながらどこかあどけなさが残る、人懐こい笑顔が印象的だ。右目に眼帯をしているのは一時的なものか、あるいは先天性のものなのか……、いずれにせよ初対面で尋ねることではないだろう。
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