【イルアズ】さいわいをさがす　家は、もうずっと暗いままだ。
　あの日から、ずっと。
「只今戻りました、お母様」
　扉の閉まったままの部屋に声を掛けても、誰も何も答えない。広くて空っぽの屋敷に、私の声が空しく響くだけ。
「……おかえり、リリー」
　この家でたった一人、姉のビオレはなんとか会話に応じてくれる。でもそれも、いつもほんの一言か二言で。母の部屋の前ですれ違ったけれど、ビオレはそのままふらりとどこかへ行ってしまった。
　お父様も、もう長いこと帰ってこない。
　ずっと昔、まだ私がほんの小さな子どもだったころは、誰も彼もこんな風じゃなかった。
　大きな屋敷には沢山の使用人がいて、いつも暖かな笑顔に溢れていた。庭には薔薇が咲いて、私もビオレもいつもそこを駆け回っていた。

八年片思いしたあの子に告って振られたよ(どんまーい！)

一世一代のラブレター　
読まれもせずに破られたー　
関係性もひび割れたー…　
傷癒えぬまま日が暮れた…

「お前が好きだったあの子の彼氏、聞いた所に寄るとサッカー部のキャプテンでイケメンで文武両道！偏差値も身長もお前より20も高いらしいよ！こりゃもうお手上げだね！あ〜ぁああ(※カラオケ歌詞だと、ははははは…)」(Oi！)

どんまい！
どんまい！
ご愁傷さま！

この度はマジご愁傷さま
「いやあ酷い目にあいましたよ」
ずっと目で追ってたもんね　超激マブな彼女(Ooa！)
実は付き合ってもう四年になんだって
「えっ！？四年！？そんな前から！？」
流石に普通気付くだろ　マジ鈍感すぎるぞ

クリスマス2023蔵王「Last Christmas and... 」　防衛任務後、ボーダー本部を後にした蔵内と王子は蓮乃辺駅前に赴いていた。隣接する三門市における三年半前の大規模侵攻で一時期規模を縮小していたクリスマスイルミネーションが、漸く以前と同レベルに戻ったからである。駅前のロータリーには五メートルに及ぶ現代アーティストによるクリスマスツリーが据えられ、上品且つ華やかに彩られていた。そこから放射線状に広がる幾つかの大通りにはテイストの異なる電飾が施されていて、訪れた人々の目と心を楽しませている。更に、クリスマスソングがオルゴール版にアレンジされ、心地良い調べが街灯に設置されたスピーカーから控え目に降り注ぐ。
　ある柔和なメロディーがオルゴールで奏でられると、オブジェを撮影していた蔵内の脳内に伸びやかな歌声が想起された。そして、その歌詞も。

ドーナツホールでゲゲ謎水木は村から逃げ出した後、警察によって保護された。警察はすぐに彼を病院に連れて行き、話を聞いた。「どうしてあんな場所にいたのですか？」と。ただ、どうして倒れていたのか、どこに行ったのか、まるで覚えていなかった。記憶がさっぱりと消えていた。ただ一つだけ覚えているのは、誰かと酒を飲み合ったことだ。相手の顔を鮮明に覚えている、しかし、誰か思い出せなかった。何日か病院で過ごした時に見た夢にも、酒を飲んだ相手が出てきた。

家に帰って次の日には、電車に乗り、会社に行った。心配の声は少なからずあったが、いつも通り残業して、買い物をしてから家に帰った。家には、自分の母と鬼太郎がいる。鬼太郎は、墓場でとある女性の遺体を埋めてから、家に帰ろうと向きを変えた瞬間、赤子の泣き声がした。後ろを振り返ると、土の下から赤子が出てきたのだ。その子を抱き上げたとき、殺さなければならないと思い、振りかぶって殺そうとした瞬間だった。頭の中に村で出会った男の顔を思い出した。赤子を殺すことを止め、うちに連れて帰った。それから、３人暮らしをしている。