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    おはよう

    忸怩くん

    MOURNING【鋭百】おはようの眉見
     ふわふわと未だに夢の中を泳ぐ思考がばちっと目覚めるくらいには、起きてすぐの視界に珍しいものを見た。臙脂のまつ毛が伏せられて、いつもは見る者をまっすぐに貫く鮮やかな翡翠は瞼の奥にひそめられている。まつ毛にかかる前髪が、寝息をたてるたびに震えていた。
     少しでも身じろぎしたら起こしてしまうかもしれない。普通に泊まった日も体を繋げてなし崩し的に眠りについた日も、眉見はいつも百々人の知らないうちに置きだしていて、すっかり顔を洗った状態で寝ぼけ眼の百々人におはようと言うのだ。早起きが習慣なのだというが、夜型の百々人には到底ついていけそうになかった。
     それが今日は、その無防備な寝顔を存分に間近で眺められているのだ。昨日は朝早くから遠方のロケで体力仕事だったと言っていたから、普段よりも疲れていたのだろう。自分のことなんて構わず寝てくれても良かったのにと、久々のオフ前だからと自分から眉見に仕掛けたことを棚に上げて今更思ってみたりする。カーテンから漏れる光で部屋の中はある程度明るくなっており朝を迎えていることはわかるが、早朝なのか昼に近いのかはわからない。首をひねって背後の壁時計を見る少しの動きもはばかられて、そのまま寝顔を観察し続けた。
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