komaki_etc
DOODLE雨想シーグラス 三人で海に来たら、それはもうあっという間に、それぞれが別行動をする。クリスさんは海の中へ、雨彦さんはどこかへふらふら、そういう僕も浜辺をうろうろ。波の音だけが僕らを繋いでいる。
ふと、足元にコツンと何かが当たる。太陽の光をきらきらと柔らかく反射するそれは、貝殻でも珊瑚でもない。拾い上げてみれば、曇ったガラスの欠けら。いわゆるシーグラスだ。緑色の小さな輝きを拾い上げて、太陽に翳してみる。ここに辿り着くまで、どれだけの冒険をしてきたのだろう。僕が名前を知らないどこかの沖で、昔々の海賊が宴会中に放り投げた酒瓶だったら、浪漫がある。それとも案外、この浜辺でうっかり瓶を割っちゃっただけだったりして。くすくす、と込み上げる笑いを波の音に乗せていると、「綺麗だな」と雨彦さんが近付いてきた。
760ふと、足元にコツンと何かが当たる。太陽の光をきらきらと柔らかく反射するそれは、貝殻でも珊瑚でもない。拾い上げてみれば、曇ったガラスの欠けら。いわゆるシーグラスだ。緑色の小さな輝きを拾い上げて、太陽に翳してみる。ここに辿り着くまで、どれだけの冒険をしてきたのだろう。僕が名前を知らないどこかの沖で、昔々の海賊が宴会中に放り投げた酒瓶だったら、浪漫がある。それとも案外、この浜辺でうっかり瓶を割っちゃっただけだったりして。くすくす、と込み上げる笑いを波の音に乗せていると、「綺麗だな」と雨彦さんが近付いてきた。
kurautu
DONE一週間ドロライさんよりお題「クリスマス」お借りしました!雨とクリスマス 初めての恋にあたふたしてほしい
雨は 冷たい雨が凍りついて、白く儚い雪へと変わる。そんなことは都合よく起きなかった。僕はコンビニの狭い屋根の下で、雑誌コーナーを背中に貼り付けながら落ちてくる雨を見上げていた。
初めてのクリスマスだ。雨彦さんと僕がいわゆる恋人同士という関係になってから。だからといって浮かれるつもりなんてなかったけれど、なんとなく僕たちは今日の夜に会う約束をしたし、他の予定で上書きをする事もなかった。少しだけ先に仕事が終わった僕はこうして雨彦さんを待っている。寒空の下で。空いた手をポケットへと入れた。手袋は昨日着たコートのポケットの中で留守番をしている。
傘を差して、街路樹に取り付けられたささやかなイルミネーションの下を通り過ぎていく人たちは、この日のために用意したのかもしれないコートやマフラーで着飾っていた。雨を避けている僕よりもずっと暖かそうに見えた。視線を僕の足元へと移すと、いつものスニーカーが目に映る。僕たちがこれから行こうとしているのは、雨彦さんお気に入りの和食屋さんだ。クリスマスらしくたまには洋食もいいかもしれない、なんて昨日までは考えていたけれど、冬の雨の冷たさの前には温かいうどんや熱々のおでんの方が魅力的に思えてしまったのだから仕方がない。
1915初めてのクリスマスだ。雨彦さんと僕がいわゆる恋人同士という関係になってから。だからといって浮かれるつもりなんてなかったけれど、なんとなく僕たちは今日の夜に会う約束をしたし、他の予定で上書きをする事もなかった。少しだけ先に仕事が終わった僕はこうして雨彦さんを待っている。寒空の下で。空いた手をポケットへと入れた。手袋は昨日着たコートのポケットの中で留守番をしている。
傘を差して、街路樹に取り付けられたささやかなイルミネーションの下を通り過ぎていく人たちは、この日のために用意したのかもしれないコートやマフラーで着飾っていた。雨を避けている僕よりもずっと暖かそうに見えた。視線を僕の足元へと移すと、いつものスニーカーが目に映る。僕たちがこれから行こうとしているのは、雨彦さんお気に入りの和食屋さんだ。クリスマスらしくたまには洋食もいいかもしれない、なんて昨日までは考えていたけれど、冬の雨の冷たさの前には温かいうどんや熱々のおでんの方が魅力的に思えてしまったのだから仕方がない。
kurautu
DONE診断メーカーより:くらうつの雨想さんは、「朝のゲームセンター」で登場人物が「思い出す」、「ミルク」という単語を使ったお話を考えて下さい。https://shindanmaker.com/28927
朝のゲームセンター 思い出す ミルク 僕たちの足元に伸びる光は柔らかく色づいた白で、僕はミルク味のキャンディを思い出した。雨彦さんが覗き込んでいるその機械はUFOのような形をしている。透明な丸いドームの中で色とりどりのお菓子がゆっくりと回っていた。まだ街は目を覚ましていない。朝の眠たげな光の中で鮮やかなその色は目に眩しい。
「幼き日、銀の硬貨を夢に換えー。懐かしいねー」
「そうだな。……いや、俺は初めてかもしれないな」
意外だとは思わなかった。ゲームセンターにいる雨彦さんはどうにもうまく想像ができない。軽やかすぎる音も、点滅する強い光も、ケースに詰め込まれたぬいぐるみたちも、雨彦さんには似合わない。このゲームセンターにはそのどれもがなかった。聞こえるのは目の前の機械が立てる微かな駆動音だけで、光はガラスの向こうから差し込む朝日だけで、ここで手に入れられるものは、どうやらこの中にあるお菓子だけのようだった。
2404「幼き日、銀の硬貨を夢に換えー。懐かしいねー」
「そうだな。……いや、俺は初めてかもしれないな」
意外だとは思わなかった。ゲームセンターにいる雨彦さんはどうにもうまく想像ができない。軽やかすぎる音も、点滅する強い光も、ケースに詰め込まれたぬいぐるみたちも、雨彦さんには似合わない。このゲームセンターにはそのどれもがなかった。聞こえるのは目の前の機械が立てる微かな駆動音だけで、光はガラスの向こうから差し込む朝日だけで、ここで手に入れられるものは、どうやらこの中にあるお菓子だけのようだった。
117p_
DONE雨想過去の自分を乗り越えて愛の受け止め方を識る北村の話です。
※元カノ、ストーカー(男)の話出てきます
※兄村がいる
正しい愛の受け止め方「北村。俺と一緒に住まないか」
真剣な眼差しで僕を見据えた雨彦さんの手の中には、ポストに投函されても滅多に目を通すことの無い不動産のチラシが数枚。いくつかに蛍光ペンで印がつけられている当たり、何度か目を通しているのだろう。
動揺した僕は、上手く返事を返すことが出来なくて。とりあえず印のつけられた用紙を受け取って、また改めて考えさせて欲しいと伝えた以降の記憶がだいぶあやふやだ。その数枚の紙を握りしめたまま、いつの間にか僕は自分の家の扉の前に立っていた。
……まさか、雨彦さん側からこんなことを切り出されるとはねー。渡された数枚のチラシを見て、ふう、とため息をつく。
確かに僕達はただのビジネスライクな関係を築くアイドルグループのメンバー同士では無くなっていた。お互いを好きあっていたくせに理由をつけ合って告白せずに居たところを見ていられないと二人してクリスさんに諭され、らしくもなく膝を突合せてお付き合いをする流れに発展したのだが。それでも僕達は二人とも四六時中一緒に居たいと考える様な性格では無かったし、たまの仕事帰りやオフの日に主に雨彦さんの家で二人きりで時間を共に出来るだけで心地が良いと思っていた。
5581真剣な眼差しで僕を見据えた雨彦さんの手の中には、ポストに投函されても滅多に目を通すことの無い不動産のチラシが数枚。いくつかに蛍光ペンで印がつけられている当たり、何度か目を通しているのだろう。
動揺した僕は、上手く返事を返すことが出来なくて。とりあえず印のつけられた用紙を受け取って、また改めて考えさせて欲しいと伝えた以降の記憶がだいぶあやふやだ。その数枚の紙を握りしめたまま、いつの間にか僕は自分の家の扉の前に立っていた。
……まさか、雨彦さん側からこんなことを切り出されるとはねー。渡された数枚のチラシを見て、ふう、とため息をつく。
確かに僕達はただのビジネスライクな関係を築くアイドルグループのメンバー同士では無くなっていた。お互いを好きあっていたくせに理由をつけ合って告白せずに居たところを見ていられないと二人してクリスさんに諭され、らしくもなく膝を突合せてお付き合いをする流れに発展したのだが。それでも僕達は二人とも四六時中一緒に居たいと考える様な性格では無かったし、たまの仕事帰りやオフの日に主に雨彦さんの家で二人きりで時間を共に出来るだけで心地が良いと思っていた。