柘植櫛(tsuge13)
DONE大学生や結婚後や社会人ネタばかりになっていたので、高2葉山→汐見教授で。春宵一刻「疲れた……」
葉擦れの音と共にホトトギスやらアオバズクやら、鳥の鳴き声は聞こえるものの、誰もいないのをいい事に、葉山は溜息を漏らす。
街路灯に照らされた自分の影はくっきりと濃く存在感があり、先にゼミへと走って行ってしまいそうだった。木々の合間を抜けた丘の上、汐見ゼミは学園の敷地内でも辺鄙な場所にある。
汐見の恩師であり葉山の身元を引き受けてくれた葉山教授が、「周りに香りの事でやかましく言われない場所で研究と後進育成に励みたい」と望んだが故の立地らしいが、真偽の程は定かではない。
もし本当なら、余計な事をしてくれたと言ってやりたい。ゼミ室と講義棟との往復だけで、汐見と共にいる時間が減るのだから。
放課後、挑まれた食戟をこなし、十傑の仕事を(人の尻拭いまで含め)終えるとどっと疲れを覚えた。
1335葉擦れの音と共にホトトギスやらアオバズクやら、鳥の鳴き声は聞こえるものの、誰もいないのをいい事に、葉山は溜息を漏らす。
街路灯に照らされた自分の影はくっきりと濃く存在感があり、先にゼミへと走って行ってしまいそうだった。木々の合間を抜けた丘の上、汐見ゼミは学園の敷地内でも辺鄙な場所にある。
汐見の恩師であり葉山の身元を引き受けてくれた葉山教授が、「周りに香りの事でやかましく言われない場所で研究と後進育成に励みたい」と望んだが故の立地らしいが、真偽の程は定かではない。
もし本当なら、余計な事をしてくれたと言ってやりたい。ゼミ室と講義棟との往復だけで、汐見と共にいる時間が減るのだから。
放課後、挑まれた食戟をこなし、十傑の仕事を(人の尻拭いまで含め)終えるとどっと疲れを覚えた。
柘植櫛(tsuge13)
DONE汐見教授誕生日おめでとう!結婚後葉山視点。3月3日のバラ仕事帰りにオフィス街の角にある行きつけの花屋に寄ると、黒いエプロンのフローリストは「葉山様、いつもありがとうございます」と笑顔と共に、注文した通りのブーケを用意してくれた。毎月三日に欠かさず妻への花を買い求める客に対し、フローリストは余計な世間話や冷やかしはせずに、納得いくアレンジで花をまとめて応えてくれる。料理に限らずプロの仕事に触れると、葉山は満足感や心強さと共に、身が引き締まる思いがする。葉山自身が遠月リゾートの経営として、またスパイスの世界的権威の伴侶の研究者として、仕事の成果も身の振る舞いも高いレベルを求められているからだ。
大輪の深い赤のバラのみでまとめられた花束を、贈る相手そのもののように大切に抱き抱え受け取る。ふっくらとした花弁は肉厚で、ベルベットの質感を有している。鼻で捉えたバラの香気成分が、構造式の形で視界に浮かぶ。汐見もきっと同じだろう。
1026大輪の深い赤のバラのみでまとめられた花束を、贈る相手そのもののように大切に抱き抱え受け取る。ふっくらとした花弁は肉厚で、ベルベットの質感を有している。鼻で捉えたバラの香気成分が、構造式の形で視界に浮かぶ。汐見もきっと同じだろう。
柘植櫛(tsuge13)
DOODLE潤に喜んで貰いたくて旨いものを食べさせまくってたら怒られた。確かに最近お姫様抱っこした時に違和感はあった。でも「アキラくんが作ったご飯が一番美味しい」っていつも褒めてくれたじゃねぇか。柘植櫛(tsuge13)
TRAINING「いっけなーい遅刻遅刻!」先日一瞬あげた、中等部潤ちゃんの指導教官が老・葉山教授ではなく葉山(ア)教授だったら妄想を描き直しました。仮セリフの英語はテキトーです。柘植櫛(tsuge13)
DONE7/7、葉山くん誕生日おめでとう!潤ちゃん誕生日決めてくれてありがとう!7日のデート「毎月3日は妻の月誕生日なので」という、淀みなく説明する葉山の様子を見聞きするたびに、汐見はもぞもぞと隠れ穴を探す小動物のように、居心地の悪さを覚える。
遠月最年少教授の記録を塗り替えた優秀すぎる弟子は、生徒からの質問やメディアへのアンケートにも「好きな女性のタイプはスパイスの世界的権威、趣味は妻に料理を振る舞う事」と公言して憚らない。
社会人になってから多忙に拍車のかかった葉山にとって、愛妻家のイメージ付けが、仕事の上で一種の防御策に繋がっているのは理解している。ただ、親しくない人間からも葉山由来で「3日は汐見教授のお誕生日なんですってね」と声をかけられるのは、なんともいたたまれない。
2人のゼミ室の横に設けた私室のソファに腰掛け書類に目を通していた葉山に、その事をしどろもどろに伝えると、いつものようにグイと腕を引き寄せられた。葉山の硬い膝の上は、結婚後から汐見の定位置と化している。
1690遠月最年少教授の記録を塗り替えた優秀すぎる弟子は、生徒からの質問やメディアへのアンケートにも「好きな女性のタイプはスパイスの世界的権威、趣味は妻に料理を振る舞う事」と公言して憚らない。
社会人になってから多忙に拍車のかかった葉山にとって、愛妻家のイメージ付けが、仕事の上で一種の防御策に繋がっているのは理解している。ただ、親しくない人間からも葉山由来で「3日は汐見教授のお誕生日なんですってね」と声をかけられるのは、なんともいたたまれない。
2人のゼミ室の横に設けた私室のソファに腰掛け書類に目を通していた葉山に、その事をしどろもどろに伝えると、いつものようにグイと腕を引き寄せられた。葉山の硬い膝の上は、結婚後から汐見の定位置と化している。
柘植櫛(tsuge13)
PAST高等部一年冬の進級試験後、極星寮にお世話になっているアキ潤妄想。キス描写はありますので、苦手な方はご注意ください。
最良の選択「総帥が葉山アキラを欲しがったのは、彼が君の大事な人間だからだよ」
北海道に向かう空港の出発ロビーで、堂島は汐見にそう切り出した。携帯電話を見つめていた汐見は、一瞬何を言われたか解らず「はい」と聞き返した。
降雪の影響により、北海道からの便の到着が遅れているとアナウンスが告げている。急いで行った所で事態が好転するわけでもないのに、汐見は永遠に葉山に会えなくなるのではないかという不安に襲われた。
機関に入って以来――あの日ケンカ別れして以来、葉山とは連絡がつかなくなっている。ゼミを解体された対応にも追われ、堂島から幸平との対決に同行するよう誘われた時は、天の救けのように思えた。
「葉山アキラを狙ったのは、彼が君の大事な一番弟子だからだ」と堂島は繰り返した。
19322北海道に向かう空港の出発ロビーで、堂島は汐見にそう切り出した。携帯電話を見つめていた汐見は、一瞬何を言われたか解らず「はい」と聞き返した。
降雪の影響により、北海道からの便の到着が遅れているとアナウンスが告げている。急いで行った所で事態が好転するわけでもないのに、汐見は永遠に葉山に会えなくなるのではないかという不安に襲われた。
機関に入って以来――あの日ケンカ別れして以来、葉山とは連絡がつかなくなっている。ゼミを解体された対応にも追われ、堂島から幸平との対決に同行するよう誘われた時は、天の救けのように思えた。
「葉山アキラを狙ったのは、彼が君の大事な一番弟子だからだ」と堂島は繰り返した。
柘植櫛(tsuge13)
PAST高等部2年・12月葉山くんと潤ちゃんの一幕。現在描いてる『師弟の結婚』の元。
愛逢月(めであいづき)「葉山くんも来年には大人の仲間入りなんだね」
提携企業が置いていった来年のカレンダーを壁にかけめくっていた汐見の指は、7月の項で止まった。刷ったばかりのインクの香り残る新しい紙のにおいがする。
師走というが、慌ただしく過ごしているのは教師の汐見よりも葉山の方だった。
高等部2年の生活も残り3ヶ月余りだと感傷に浸っていられる暇もなく、現在の葉山は遠月学園の第一席として、仕事量も申し込まれる食戟も増えている。92期は中退者が少なく席次の変動も激しい。葉山も2年に上がってからは、席次も学業の順位も1から5位の間で切磋琢磨している。前総裁が理念に掲げたように常に自己研鑽が求められる環境だった。
そんな日々の中、これまで通りゼミで助手として働き、汐見のスパイス講釈を聞くのが葉山の気分転換になっていた。
1521提携企業が置いていった来年のカレンダーを壁にかけめくっていた汐見の指は、7月の項で止まった。刷ったばかりのインクの香り残る新しい紙のにおいがする。
師走というが、慌ただしく過ごしているのは教師の汐見よりも葉山の方だった。
高等部2年の生活も残り3ヶ月余りだと感傷に浸っていられる暇もなく、現在の葉山は遠月学園の第一席として、仕事量も申し込まれる食戟も増えている。92期は中退者が少なく席次の変動も激しい。葉山も2年に上がってからは、席次も学業の順位も1から5位の間で切磋琢磨している。前総裁が理念に掲げたように常に自己研鑽が求められる環境だった。
そんな日々の中、これまで通りゼミで助手として働き、汐見のスパイス講釈を聞くのが葉山の気分転換になっていた。