muki_rururu
PAST2020/pixivサルベージ羅小黒戦記ログ③ pixivにまとめたのは2021年6月なんだけどほぼ2020のものです 後半にいくほどなんかネト……としてる
注意:未成年の軽度な性的消費(性的な視線の滲み) 34
桜道明寺
DONE羅小黒戦記ワンライまとめ・4お題【鳩老】【お茶】
初めまして、と引き合わされた鳩老の弟子は人間だった。
「一度小黑に会わせてみたくてな。无限に無理を言って連れてきてもらった。年の頃も同じくらいだし、仲良くしてくれると、儂も嬉しい」
そう言い残して、鳩老と師父は揃って会議に出かけて行った。
初めて来る妖精会館。右も左も分からないから、とりあえずすぐそこの庭に面した卓と椅子に陣取って、自己紹介をする。
「僕は小黑。妖精だよ」
「俺は大志。人間だ」
なんだか、当たり前のことを当たり前に確認しているように思えて、互いにふふっと笑う。
——良かった、なんだか感じのいい子だ。
「でも実は初めましてじゃないんだよ。小黑はそのままだったから俺にはすぐ分かったけど」
6683初めまして、と引き合わされた鳩老の弟子は人間だった。
「一度小黑に会わせてみたくてな。无限に無理を言って連れてきてもらった。年の頃も同じくらいだし、仲良くしてくれると、儂も嬉しい」
そう言い残して、鳩老と師父は揃って会議に出かけて行った。
初めて来る妖精会館。右も左も分からないから、とりあえずすぐそこの庭に面した卓と椅子に陣取って、自己紹介をする。
「僕は小黑。妖精だよ」
「俺は大志。人間だ」
なんだか、当たり前のことを当たり前に確認しているように思えて、互いにふふっと笑う。
——良かった、なんだか感じのいい子だ。
「でも実は初めましてじゃないんだよ。小黑はそのままだったから俺にはすぐ分かったけど」
桜道明寺
DONE居酒屋でサシ飲みをする洛竹と无限 午後八時の居酒屋の店内は、満員の人いきれと、それが醸し出す喧噪に満ちていた。
古い格子の天井から幾つも吊り下げられた裸電球が、その下にある料理や人々の笑顔を暖色に照らし出す。縦横に並べられたステンレスのテーブルに人々が集い、その間を回遊魚のように料理や空の皿を抱えた店員が行き来する。その賑やかな店内において、ひとつだけ、しんと静謐を保った空間があった。四人掛けのテーブルで斜向いに座り、料理がまだなら飲み物もまだ、一人は淡々と前を向いていて、一人は俯いて自分の腿辺りを見ているといった体たらく。相席ではなく、顔見知りの待ち合わせだと言うのに、どうしてこんなことになっているのかを説明するためには、時を少し遡らなければならない。とはいえ、ほんの数分前のこと、俯いている男——洛竹——のスマホに、一件のコメントが入ったのだ。
3559古い格子の天井から幾つも吊り下げられた裸電球が、その下にある料理や人々の笑顔を暖色に照らし出す。縦横に並べられたステンレスのテーブルに人々が集い、その間を回遊魚のように料理や空の皿を抱えた店員が行き来する。その賑やかな店内において、ひとつだけ、しんと静謐を保った空間があった。四人掛けのテーブルで斜向いに座り、料理がまだなら飲み物もまだ、一人は淡々と前を向いていて、一人は俯いて自分の腿辺りを見ているといった体たらく。相席ではなく、顔見知りの待ち合わせだと言うのに、どうしてこんなことになっているのかを説明するためには、時を少し遡らなければならない。とはいえ、ほんの数分前のこと、俯いている男——洛竹——のスマホに、一件のコメントが入ったのだ。
桜道明寺
DONE羅小黒戦記ワンライまとめ・3お題【大爽】【食事】
一応、仙、っていうことになるんだと思う。
とはいえ端くれの端くれの、そのまた端くれくらいの辺りだけど。
ただ自分で言うのも何だけど、きっとどこからどう見てもそうは見えないし、特に胸を張れるほどの神通力もない。仙侠小説の登場人物みたいに空を飛んだり、呪符を貼って人でないものを操ったりするなんてこともできない。
力も弱いし、剣なんかとてもじゃないけど持てない。というか持ったら最後、相手を斬るより先に自分が医者の世話になってしまうだろう。
自分にできるのはただひとつ、生き物を「飛ばす」こと。文字通り、あっちからこっちへ、ぱっと瞬間移動。種も仕掛けもございません。ただし、弱い霊力のものに限る。犬とか猫とか人間とかね。妖精なんかは無理。ちょっと霊力の高い人間も、無理。その代わりと言っちゃあなんだけど、飛ばす量に制限はほぼない。街ひとつの人間をまとめて移動させることだってできる。地味なんだかすごいんだか、自分にもよく分からない。まあ、使う機会も実際にはそんなにないしね。
5766一応、仙、っていうことになるんだと思う。
とはいえ端くれの端くれの、そのまた端くれくらいの辺りだけど。
ただ自分で言うのも何だけど、きっとどこからどう見てもそうは見えないし、特に胸を張れるほどの神通力もない。仙侠小説の登場人物みたいに空を飛んだり、呪符を貼って人でないものを操ったりするなんてこともできない。
力も弱いし、剣なんかとてもじゃないけど持てない。というか持ったら最後、相手を斬るより先に自分が医者の世話になってしまうだろう。
自分にできるのはただひとつ、生き物を「飛ばす」こと。文字通り、あっちからこっちへ、ぱっと瞬間移動。種も仕掛けもございません。ただし、弱い霊力のものに限る。犬とか猫とか人間とかね。妖精なんかは無理。ちょっと霊力の高い人間も、無理。その代わりと言っちゃあなんだけど、飛ばす量に制限はほぼない。街ひとつの人間をまとめて移動させることだってできる。地味なんだかすごいんだか、自分にもよく分からない。まあ、使う機会も実際にはそんなにないしね。
桜道明寺
DONESSガチャお題から「相手の嫌そうな顔を見て苦笑する老君の話」
「——また来たのか!」
坐っていた門柱の上から飛び降りて、これ以上ないほどの渋面を晒しながら子供が言う。
「やあこんにちは、お爺さん。元気そうで何よりだね」
そう爽やかに笑って返せば、ますます嫌そうに牙を剥き出す。
「お前が来ると碌なことがない! それに明王様はいま忙しいんだ。だからとっとと帰れ!」
「いや、今日は明王ではなく、君に会いにきたんだ」
しれっと言うと、虚を衝かれたような表情になって瞬いた。
「俺に?」
「そう」
「気持ち悪いな、一体なんの用だ」
「君、私のところに来ない?」
「断る」
「即決だね。ちょっとは考えたりしてくれたりはしないのかな」
「俺の欲しいものは、お前には出せない。絶対に。だから行かないし、そもそも俺が明王様を裏切ることも絶対にない」
1392坐っていた門柱の上から飛び降りて、これ以上ないほどの渋面を晒しながら子供が言う。
「やあこんにちは、お爺さん。元気そうで何よりだね」
そう爽やかに笑って返せば、ますます嫌そうに牙を剥き出す。
「お前が来ると碌なことがない! それに明王様はいま忙しいんだ。だからとっとと帰れ!」
「いや、今日は明王ではなく、君に会いにきたんだ」
しれっと言うと、虚を衝かれたような表情になって瞬いた。
「俺に?」
「そう」
「気持ち悪いな、一体なんの用だ」
「君、私のところに来ない?」
「断る」
「即決だね。ちょっとは考えたりしてくれたりはしないのかな」
「俺の欲しいものは、お前には出せない。絶対に。だから行かないし、そもそも俺が明王様を裏切ることも絶対にない」
桜道明寺
DONE羅小黒戦記ワンライまとめ・2お題【洛竹】【笑顔】
よく笑う子だったよ、と物静かな氷の化身は、その冷たく冴えた表情を崩さずに言った。
俗に氷雲城と呼ばれる特殊な獄は、外界と隔絶された空間にある。その一郭、布団に衝立、文机等、生活するのに必要最低限の家具が揃った独房で、その場所の主——虚淮は、自らが事件を起こした地である龍游の館長——潘靖と、一対一で向かい合っていた。
円座もない床に直接腰を下ろし、淡々と潘靖に相対するその額にある両角に、かつてのような雄々しさはない。虚淮にとって角は能力の源であり、その力は強大だった。数年前に起きた龍游事変のとき、彼を止めるべく差し向けられた者は悉く戦闘不能に陥り、組織の中でもトップクラスの能力をもってして、ようやく鎮圧に成功したほどだ。
7348よく笑う子だったよ、と物静かな氷の化身は、その冷たく冴えた表情を崩さずに言った。
俗に氷雲城と呼ばれる特殊な獄は、外界と隔絶された空間にある。その一郭、布団に衝立、文机等、生活するのに必要最低限の家具が揃った独房で、その場所の主——虚淮は、自らが事件を起こした地である龍游の館長——潘靖と、一対一で向かい合っていた。
円座もない床に直接腰を下ろし、淡々と潘靖に相対するその額にある両角に、かつてのような雄々しさはない。虚淮にとって角は能力の源であり、その力は強大だった。数年前に起きた龍游事変のとき、彼を止めるべく差し向けられた者は悉く戦闘不能に陥り、組織の中でもトップクラスの能力をもってして、ようやく鎮圧に成功したほどだ。
桜道明寺
DONE羅小黒戦記ワンライまとめ・1お題【无限】【花】
「ふううううっ」
猫の姿になって、ぶるるるっと身体を振ると、辺りにものすごい量の水が飛び散った。
「すごい嵐だったね」
まだ身体のあちこちに細かい水滴をくっつけたまま言うと、目の前では師父が能力を使って身体に染み付いた水分を分離している。
「いつも思うんだけど、それ便利だね。僕もやりたい」
「修行をすれば、いずれはできるようになる」
「結局はそこかー」
白い地面に大の字になってふてくされていると、そんなところで寝るんじゃない、と注意が降ってくる。
「大丈夫だよ、風邪なんて引かないし」
「そういうことを言っているんじゃない。とりあえず家に入りなさい」
そう言い残して、自分はひょいひょいと階段を上がっていく。僕は不承不承身を起こして、その後をついていった。
4443「ふううううっ」
猫の姿になって、ぶるるるっと身体を振ると、辺りにものすごい量の水が飛び散った。
「すごい嵐だったね」
まだ身体のあちこちに細かい水滴をくっつけたまま言うと、目の前では師父が能力を使って身体に染み付いた水分を分離している。
「いつも思うんだけど、それ便利だね。僕もやりたい」
「修行をすれば、いずれはできるようになる」
「結局はそこかー」
白い地面に大の字になってふてくされていると、そんなところで寝るんじゃない、と注意が降ってくる。
「大丈夫だよ、風邪なんて引かないし」
「そういうことを言っているんじゃない。とりあえず家に入りなさい」
そう言い残して、自分はひょいひょいと階段を上がっていく。僕は不承不承身を起こして、その後をついていった。
GinkoLxh
DONE◆逸君の差し入れ◆しかやまさんのツイートhttps://twitter.com/akan_tribam/status/1493403970551042050
の三次創作です。
許可いただいたので公開しますね。
こしあんさんのリプにも触発されて、最初はこの後を想像させるネームを
描いたのですが、結局ほのぼのになってしましました(o^―^o)ニコ 4
桜道明寺
DONETwitterまとめ・1残香【君閣の窓辺で老君がささやかに花見をする話】
ふわと入り込んだ外気に、甘い香りを感じた。老君は振り向くと、かれの忠実な下僕が手に下げた一枝の桃花を見やって、わずかに眼を細めた。
「おや、どうしたんだい」
かれの下僕——諦聴は眉ひとつ動かさぬまま、つと手を伸ばして、老君にその枝を手渡す。花の香りが柔らかく鼻先を包んで、擽ったいような気分になる。
「折ってきたのかい? 悪い子だ」
笑い含みに問うてはみたものの、そうでないことは切り口を見れば明らかだった。すぱりと斜めに走った鋭利な切り口は、最初から飾ることを目的に切り離されたものだと見当がつく。花も五分咲きで、まだ散るような頃合いではない。それでもあえてそう言ったのは、かれの下僕が花を贈るにはあまりにも憮然とし過ぎていたからだ。人に花を贈るのに、その表情はないだろう。ついからかいたくなるのはかれの悪い癖だが、諦聴は、そんな主の視線からふいと目を逸らすと、
6238ふわと入り込んだ外気に、甘い香りを感じた。老君は振り向くと、かれの忠実な下僕が手に下げた一枝の桃花を見やって、わずかに眼を細めた。
「おや、どうしたんだい」
かれの下僕——諦聴は眉ひとつ動かさぬまま、つと手を伸ばして、老君にその枝を手渡す。花の香りが柔らかく鼻先を包んで、擽ったいような気分になる。
「折ってきたのかい? 悪い子だ」
笑い含みに問うてはみたものの、そうでないことは切り口を見れば明らかだった。すぱりと斜めに走った鋭利な切り口は、最初から飾ることを目的に切り離されたものだと見当がつく。花も五分咲きで、まだ散るような頃合いではない。それでもあえてそう言ったのは、かれの下僕が花を贈るにはあまりにも憮然とし過ぎていたからだ。人に花を贈るのに、その表情はないだろう。ついからかいたくなるのはかれの悪い癖だが、諦聴は、そんな主の視線からふいと目を逸らすと、
shakunage1
PAST※羅小黒戦記吹き替え版1周年記念(8月に出した本に収録した新規絵です。)
去年の今頃、初めて映画を見に行って誰もないトイレで号泣したのがついこの間のようです…
出会えて本当に良かった。ありがとう羅小黒戦記。そして誰よりも风息。あなたに。