葵(緒都)
PAST昔の小次ぐだ♀の話つまさき軽い足取りでルンルン廊下を歩けば、すれ違う人たちからなにかあったの?と声をかけられ、つい頬が緩む。なにかあったのかと言われると…もちろんあった。
そのまま明るい足取りで部屋までたどり着き、ベッドに座って大事に手のひらで包み込んだそれを見る。
「……可愛い!」
ボフッ。勢いよくベッドに倒れ込んでそれを天井に掲げて、光に透かしてみると透き通った色にうっとり。彼の色に似て深い青色で、でもこうやって透かせばまた表情が変わって見える。
「……って眺めるためにもらったんじゃなかった!」
そう。これはメイヴちゃんからもらったマニキュア。彼女はいつも爪先まできれいに整えている。わたしはそんな余裕ないからあまりに気にしてなかったけど、たまにはいいんじゃない?なんて貰ったのだ。
2655そのまま明るい足取りで部屋までたどり着き、ベッドに座って大事に手のひらで包み込んだそれを見る。
「……可愛い!」
ボフッ。勢いよくベッドに倒れ込んでそれを天井に掲げて、光に透かしてみると透き通った色にうっとり。彼の色に似て深い青色で、でもこうやって透かせばまた表情が変わって見える。
「……って眺めるためにもらったんじゃなかった!」
そう。これはメイヴちゃんからもらったマニキュア。彼女はいつも爪先まできれいに整えている。わたしはそんな余裕ないからあまりに気にしてなかったけど、たまにはいいんじゃない?なんて貰ったのだ。
葵(緒都)
PAST昔の小次ぐだ♀の話正しいキスの仕方小次郎とはもう色々やってきた仲ではあるけど、やっぱりそれでも改めてってなると、恥ずかしくなっちゃうものもあるよね。
特にわたしは照れくさくなるから、そういう改めてなにかをするというのが苦手なのだ。
「…キス五回しないと出られない部屋…?」
「なんだ五回か。余裕だな」
「…」
しかも面倒くさい条件まである。四回のうち二回、必ずわたしからキスする番と、小次郎からキスする番がなければいけないらしい。そして余った一回。これは二人で仲良くチューしあってね♡という意味なんだとか。
「…きす…」
「何回もしてるだろう。まさかこの期に及んで無理だと…?」
「いや、無理ではない、よ…?ただ、ただこう…改めてキスしろって言われたら…恥ずかしくない…?」
3043特にわたしは照れくさくなるから、そういう改めてなにかをするというのが苦手なのだ。
「…キス五回しないと出られない部屋…?」
「なんだ五回か。余裕だな」
「…」
しかも面倒くさい条件まである。四回のうち二回、必ずわたしからキスする番と、小次郎からキスする番がなければいけないらしい。そして余った一回。これは二人で仲良くチューしあってね♡という意味なんだとか。
「…きす…」
「何回もしてるだろう。まさかこの期に及んで無理だと…?」
「いや、無理ではない、よ…?ただ、ただこう…改めてキスしろって言われたら…恥ずかしくない…?」
葵(緒都)
PASTむさぐだ♀昔の話です
お揃いの香りを纏って「立香はいつも女の子らしい匂いがするのね」
「え?」
はちみつ色の瞳をぱちぱち瞬きさせて、少女はクンクン、と自分の腕に鼻を近付ける。まるで小動物のようなその動きに、私は頬を緩ませて美味しいみたらし団子をひとくち。
「そうかなぁ?」
「自分の匂いって分からないからねぇ。立香は…そうね。例えるなら…甘い香り?」
「みたらし団子の匂いじゃなくて?」
「違いますー!」
モグモグ団子を頬張る立香は、もう一度すんすんと自分の匂いを嗅いで、首をかしげて私を見る。ああ、もう。こういう仕草一つ一つが本当に可愛い。
「甘い香りってどんな?」
「んー…食べちゃいたい香り?」
「…?」
「花みたいな優雅な香りじゃなくて、どちらかというとデザートに近い香り」
1703「え?」
はちみつ色の瞳をぱちぱち瞬きさせて、少女はクンクン、と自分の腕に鼻を近付ける。まるで小動物のようなその動きに、私は頬を緩ませて美味しいみたらし団子をひとくち。
「そうかなぁ?」
「自分の匂いって分からないからねぇ。立香は…そうね。例えるなら…甘い香り?」
「みたらし団子の匂いじゃなくて?」
「違いますー!」
モグモグ団子を頬張る立香は、もう一度すんすんと自分の匂いを嗅いで、首をかしげて私を見る。ああ、もう。こういう仕草一つ一つが本当に可愛い。
「甘い香りってどんな?」
「んー…食べちゃいたい香り?」
「…?」
「花みたいな優雅な香りじゃなくて、どちらかというとデザートに近い香り」
葵(緒都)
PAST昔の話小次ぐだ♀です
蜜事「ねぇ、小次郎ってわたしのこと好き?」
「…」
はい。出た。またそういう顔をする。そんな不毛なことを聞いてどうする、とでも言いたげな顔。でも感情を確かめ合うのって大事な事じゃない?
「そういうマスターは?」
「好きだよ」
「そうか」
「じゃあ小次郎も好きなんだ」
「何も言っていないだろう」
「だって好ましくないなら好ましくないって言うでしょ?好きっては言ってくれないけど…」
大体彼のパターンは読める。好きって言葉は軽々しく言ってはくれないけど、嫌いな事なら好ましくない、とかはっきり言う。ということは、今の返事は少なくとも嫌いではないってこと。になるはず。
「不服ならはっきり言ってよ」
「何故そんな事をいきなり話す?」
2273「…」
はい。出た。またそういう顔をする。そんな不毛なことを聞いてどうする、とでも言いたげな顔。でも感情を確かめ合うのって大事な事じゃない?
「そういうマスターは?」
「好きだよ」
「そうか」
「じゃあ小次郎も好きなんだ」
「何も言っていないだろう」
「だって好ましくないなら好ましくないって言うでしょ?好きっては言ってくれないけど…」
大体彼のパターンは読める。好きって言葉は軽々しく言ってはくれないけど、嫌いな事なら好ましくない、とかはっきり言う。ということは、今の返事は少なくとも嫌いではないってこと。になるはず。
「不服ならはっきり言ってよ」
「何故そんな事をいきなり話す?」
葵(緒都)
PAST昔の話。小次ぐだ♀です爪先を縫う「…なんかこう…。最近小次郎さ、変…じゃない?」
「変?」
「なんか、よそよそしい?みたいな?」
ベッドに横になりながらそう語りかけると、小次郎は少しだけ眉間をピクリと動かし目をそらすと、肩を竦める。まさか。と言いながら呆れたように笑って壁にもたれ掛かり、一息ついて瞼を閉じる。気のせいと言われれば、確かにそうかもしれないと思ってしまうのが人間の悲しい性だが、気のせいじゃないような気がするのは、はたして言ってしまっても良いのだろうか。
壁にもたれ掛かる彼をじっと見つめる。瞼は閉じたままだから表情はわからないけれど、腕を組む指先がちょっとだけ力んでいる感じだったり、少しだけ眉が潜められていたり、引き結んだ唇が不機嫌そうな感じに見えたり。どこか逃げ出したいような妙な緊張感がない混ぜになったかのような、不思議な様子。
2929「変?」
「なんか、よそよそしい?みたいな?」
ベッドに横になりながらそう語りかけると、小次郎は少しだけ眉間をピクリと動かし目をそらすと、肩を竦める。まさか。と言いながら呆れたように笑って壁にもたれ掛かり、一息ついて瞼を閉じる。気のせいと言われれば、確かにそうかもしれないと思ってしまうのが人間の悲しい性だが、気のせいじゃないような気がするのは、はたして言ってしまっても良いのだろうか。
壁にもたれ掛かる彼をじっと見つめる。瞼は閉じたままだから表情はわからないけれど、腕を組む指先がちょっとだけ力んでいる感じだったり、少しだけ眉が潜められていたり、引き結んだ唇が不機嫌そうな感じに見えたり。どこか逃げ出したいような妙な緊張感がない混ぜになったかのような、不思議な様子。
葵(緒都)
PAST紫陽花の花言葉が小次郎っぽいと思って書いた昔の小次ぐだ♀の話貴方は美しいが冷淡だ「あ、桜咲いてる」
「春だからなぁ」
「…………」
「なぜ睨む」
「小次郎ちょっとそこ立ってよ」
じとーと睨んでそう指示を出すと、彼は仕方あるまいと言われた通りに桜の木の前に立つ。それを確認してからわたしは少しだけ離れて、両手の人差し指と親指で四角を作り桜の木と彼だけを切り取るように目の前へ掲げ四角の中をじっと見つめる。
…桜の淡いピンク色の風と彼のイメージカラーとも言える群青色が合わさってとてもきれいで、やっぱり絵になるなぁと思わずため息が出てしまう。
「…」
「……いつまで居れば良い」
「カメラ持ってくれば良かったな…。小次郎ってやっぱり、桜似合うね。すごく絵になる」
「そうか」
「うん。綺麗だ」
瞳を細めて笑いかければ彼は「そういう言葉はおなごにかけてやれ」と話してこちらへ歩み寄る。
5124「春だからなぁ」
「…………」
「なぜ睨む」
「小次郎ちょっとそこ立ってよ」
じとーと睨んでそう指示を出すと、彼は仕方あるまいと言われた通りに桜の木の前に立つ。それを確認してからわたしは少しだけ離れて、両手の人差し指と親指で四角を作り桜の木と彼だけを切り取るように目の前へ掲げ四角の中をじっと見つめる。
…桜の淡いピンク色の風と彼のイメージカラーとも言える群青色が合わさってとてもきれいで、やっぱり絵になるなぁと思わずため息が出てしまう。
「…」
「……いつまで居れば良い」
「カメラ持ってくれば良かったな…。小次郎ってやっぱり、桜似合うね。すごく絵になる」
「そうか」
「うん。綺麗だ」
瞳を細めて笑いかければ彼は「そういう言葉はおなごにかけてやれ」と話してこちらへ歩み寄る。
葵(緒都)
DONE七夕にpixivにアップした話から一話抜粋したもの。その二。小次ぐだ♀
今回のゲストは荊軻さん。月に関する話題を出すにあたって、ミス・クレーン以外に誰がいいかなぁと考えたら彼女が浮かんだので…。
小次ぐだ♀を茶化して欲しい…。
月と花聖杯。それはどんな願いも叶える万能の願望器である。
そんなすごいものが、カルデアにはたくさんのようにある。もう、それはとんでもなくがっぽりと。カルデアではこの聖杯を、サーヴァントのリミッターを外すのに使える。いや、正しくはリミッターを外す というのとも違うのかもしれない。
…とにかく、これを与えるとサーヴァントはさらなる未知の力を解放できるようになるのだ。
しかし、聖杯に対して興味がない人もいる。例えば、彼。佐々木小次郎。
『大仰すぎる杯よなぁ』
そんな事を言って、彼は聖杯には全く興味を示さなかった。願いがないというか…他のサーヴァントのように興味を示さないのだ。
「…小次郎は、願い事がないの?」
「願い事?」
6226そんなすごいものが、カルデアにはたくさんのようにある。もう、それはとんでもなくがっぽりと。カルデアではこの聖杯を、サーヴァントのリミッターを外すのに使える。いや、正しくはリミッターを外す というのとも違うのかもしれない。
…とにかく、これを与えるとサーヴァントはさらなる未知の力を解放できるようになるのだ。
しかし、聖杯に対して興味がない人もいる。例えば、彼。佐々木小次郎。
『大仰すぎる杯よなぁ』
そんな事を言って、彼は聖杯には全く興味を示さなかった。願いがないというか…他のサーヴァントのように興味を示さないのだ。
「…小次郎は、願い事がないの?」
「願い事?」
葵(緒都)
DONEpixivにアップした七夕や月や星に関する話をまとめたものから一話抜粋したものです。小次ぐだ♀
ゲストにマーリン。ちょっと小次郎のあたりがきつくなってしまったのはなんとなくマーリンのこと苦手そうだなぁと思ったからです…。
花鳥風月「小次郎は、星も好き?」
「星?」
「うん。月は…好きでしょう?」
木々の揺れる音。暗い空を見上げて寝転がりながら話せば、近くに座っている彼もぽつりぽつりと言葉を紡ぐ。わたしの隣に眠るマシュが起きないように、焚火の燃えるパチパチとした音よりも小さい声で、囁くようにわたし達は言葉を交わす。
「…そうさなぁ…。月だけではなく…星や、それから…肌を撫でる風や、空を自由に飛ぶ鳥」
「…」
「そういう自然のものはどれも美しいと思っているよ」
ふわり。風に舞う小次郎の群青色の髪の毛が視界の端に映って、空を見つめる頭を動かす。木に寄りかかって未だに刀から手を離さない彼をじっと見つめ、ふと振り向いた顔に微笑みかける。
「そう言う心、なんて言うんだったっけ」
2479「星?」
「うん。月は…好きでしょう?」
木々の揺れる音。暗い空を見上げて寝転がりながら話せば、近くに座っている彼もぽつりぽつりと言葉を紡ぐ。わたしの隣に眠るマシュが起きないように、焚火の燃えるパチパチとした音よりも小さい声で、囁くようにわたし達は言葉を交わす。
「…そうさなぁ…。月だけではなく…星や、それから…肌を撫でる風や、空を自由に飛ぶ鳥」
「…」
「そういう自然のものはどれも美しいと思っているよ」
ふわり。風に舞う小次郎の群青色の髪の毛が視界の端に映って、空を見つめる頭を動かす。木に寄りかかって未だに刀から手を離さない彼をじっと見つめ、ふと振り向いた顔に微笑みかける。
「そう言う心、なんて言うんだったっけ」