unhkiss
DONEアーサーが王位を継ぐ日と王妃の葛藤虹のたもと山々から雪解け水が流れ始めると、季節は一気に冬から春へと移り変わっていく。
やわらかく湿った土から新緑が芽生え、冬眠から目覚めた動物たちが人里に姿をあらわすようになる。
雪がすっかり溶けてなくなると、南の国よりひと呼吸遅れて、中央の国の辺境にも春が訪れるのだった。
■
庭師によって丹精に手入れされた庭園の一角に瀟洒な佇まいの四阿があった。四阿では絹のドレスを身にまとった、見目麗しい貴婦人が一冊の本を読んでいる。
四阿の周りでは淡いピンクやオレンジに染まった春の花が咲き乱れ、庭木に止まった小鳥たちが恋の歌をさえずる。
降り注ぐ午後の日差しはうとうととまどろんでしまいそうなほど温かい。まるで火にあぶられてとろけていくバターを見ているときのような、ゆったりと心地よい時間が流れている。
15418やわらかく湿った土から新緑が芽生え、冬眠から目覚めた動物たちが人里に姿をあらわすようになる。
雪がすっかり溶けてなくなると、南の国よりひと呼吸遅れて、中央の国の辺境にも春が訪れるのだった。
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庭師によって丹精に手入れされた庭園の一角に瀟洒な佇まいの四阿があった。四阿では絹のドレスを身にまとった、見目麗しい貴婦人が一冊の本を読んでいる。
四阿の周りでは淡いピンクやオレンジに染まった春の花が咲き乱れ、庭木に止まった小鳥たちが恋の歌をさえずる。
降り注ぐ午後の日差しはうとうととまどろんでしまいそうなほど温かい。まるで火にあぶられてとろけていくバターを見ているときのような、ゆったりと心地よい時間が流れている。
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DONE北祝祭。帰ってこない賢者一行が心配なヒースとクロエ。眠れぬ夜の秘密の二人ベッドの中でヒースクリフはゆっくりと目を開いた。ぱちぱちと瞬きをして、ヒースクリフは寝返りを打つ。
横向きの姿勢になったヒースクリフはじっと窓の辺りを凝視した。
部屋は真っ暗でカーテンに覆われている窓の外も明るくなってはいない。日の出まではずいぶん時間がありそうだった。
(……眠れない)
昼間の内にカナリアが洗濯して干してくれたシーツや掛け布からはお日様の匂いがする。たっぷりと陽光を吸い込んだ寝具は、ヒースクリフの体を繭のように包み込んでくれていた。
そのやわらかなぬくもりは、いつもならヒースクリフを穏やかな眠りに誘ってくれる。
けれど今日は少しも効果を発揮してくれない。
胸の奥がざわざわして、目は冴えるばかりで、ヒースクリフはちっとも眠れそうになかった。
6113横向きの姿勢になったヒースクリフはじっと窓の辺りを凝視した。
部屋は真っ暗でカーテンに覆われている窓の外も明るくなってはいない。日の出まではずいぶん時間がありそうだった。
(……眠れない)
昼間の内にカナリアが洗濯して干してくれたシーツや掛け布からはお日様の匂いがする。たっぷりと陽光を吸い込んだ寝具は、ヒースクリフの体を繭のように包み込んでくれていた。
そのやわらかなぬくもりは、いつもならヒースクリフを穏やかな眠りに誘ってくれる。
けれど今日は少しも効果を発揮してくれない。
胸の奥がざわざわして、目は冴えるばかりで、ヒースクリフはちっとも眠れそうになかった。
wasui_awira119
DONE2022.1.23.Sunピクスク開催北師弟Webオンリー
HAPPY北師弟DAY
開催おめでとうございます🎉
スペース:氷 い5
新刊情報
『Something akin to Storge』
R18/新書サイズ/ページ数未定/値段未定
北師弟4人のCP総当り短編集です
CPなしのお話もあります
表紙はてんちゃん(@te_n09)から頂きました
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DONE2022.1.23.Sunピクスク開催北師弟Webオンリー
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新作展示:命乞い【北師弟+モブ】※流血、胸糞注意
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新作展示:八つ当たり【北師弟+アーサー】
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はぴして 北師弟+アーサー 新作展示『八つ当たり』「めずらしいのう」
「めずらしいのう」
「アーサーちゃんおこじゃの」
「一体何があったのじゃ」
「きっとフィガロがなにかしたんじゃよ」
「わからないよ、オズちゃんかもよ」
背後で好き勝手言っている声が聞こえる。外野は気楽でいいが当事者たちはそうもいかない。窓の外はどんどん曇ってくるし、アーサーの癇癪も治まる様子はない。本当に珍しいことだ。
「アーサー」
「いや!」
「……まだ何も言っていない」
「いやぁ!」
「アーサー……」
「うううう」
本当の本当に珍しいのだ。アーサーは歳の割に聞き分けの良い子どもだった。そりゃあ、子どもらしくわんぱくなところもあるが、俺たちの話はよく聞き、あまりわがままを言わない子どもだった。
そのよくできたアーサーが、地団太を踏んで、力いっぱい体いっぱいに癇癪を起している。オズはもうお手上げ状態で、完全に困ってしまっているようだ。
1988「めずらしいのう」
「アーサーちゃんおこじゃの」
「一体何があったのじゃ」
「きっとフィガロがなにかしたんじゃよ」
「わからないよ、オズちゃんかもよ」
背後で好き勝手言っている声が聞こえる。外野は気楽でいいが当事者たちはそうもいかない。窓の外はどんどん曇ってくるし、アーサーの癇癪も治まる様子はない。本当に珍しいことだ。
「アーサー」
「いや!」
「……まだ何も言っていない」
「いやぁ!」
「アーサー……」
「うううう」
本当の本当に珍しいのだ。アーサーは歳の割に聞き分けの良い子どもだった。そりゃあ、子どもらしくわんぱくなところもあるが、俺たちの話はよく聞き、あまりわがままを言わない子どもだった。
そのよくできたアーサーが、地団太を踏んで、力いっぱい体いっぱいに癇癪を起している。オズはもうお手上げ状態で、完全に困ってしまっているようだ。
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新作展示:燃える空【北師弟+チレッタ】
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はぴして 北師弟+チレッタ 新作展示『燃える空』 空が燃えていた。どんよりとたちこめる雲は、眼下の火の粉を吸い上げ、重く暗い赤に染まっている。もう夜半になろうという頃であるのに、地上は昼間の空のごとく明るく煌めいて、チカチカと私の瞳を刺激する。
「双子様~! こーんばーんはー!」
「おお、チレッタか」
「久しいのう」
煙を吸い込まぬよう風上に避けながら、お二人のもとへと箒を飛ばす。燃ゆる炎を双眸に反射させて、双子は静かにその光景を見下ろしていた。その[[rb:煌々 > きらきら]]しく光る四つの瞳からは、何の感情も読み取ることができない。
「いやー、派手ですねえ」
「ほんに」
「やんちゃが過ぎるのう」
やれやれとでも言うように、ホワイト様が肩をすくめ、スノウ様がため息をつく。
1753「双子様~! こーんばーんはー!」
「おお、チレッタか」
「久しいのう」
煙を吸い込まぬよう風上に避けながら、お二人のもとへと箒を飛ばす。燃ゆる炎を双眸に反射させて、双子は静かにその光景を見下ろしていた。その[[rb:煌々 > きらきら]]しく光る四つの瞳からは、何の感情も読み取ることができない。
「いやー、派手ですねえ」
「ほんに」
「やんちゃが過ぎるのう」
やれやれとでも言うように、ホワイト様が肩をすくめ、スノウ様がため息をつく。
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新作展示:ステンドグラス【オズ+フィガロ】
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はぴして オズ+フィガロ 新作展示『ステンドグラス』「…………」
オズが無言で立っていた。見上げ、赤い瞳を煌めかせている。
「初めて見たの?」
こくん。長い髪を揺らめかせて、その小ぶりな頭を振る。きっと、こんなにたくさんの色を見たこと自体が初めてなのだろう。こいつのいたところは、雪、岩、枯れ木、そんな色ばかりだっただろうから。
「おいで、近くで見せてあげる」
静かに箒を出現させ、柄に腰掛ける。手を差し出せば、一瞬の躊躇ののち、手を取るオズ。随分と大人しくなったものだ。出会い頭に雷ぶっぱなしてたのが懐かしい。
俺はオズを抱いてゆっくりと飛び上がる。
「これは赤。おまえの瞳の色だね。こっちは青。ちょっと違うけど俺の髪の色。この沢山使われてるのは黄色。双子様の眼の色だ」
1342オズが無言で立っていた。見上げ、赤い瞳を煌めかせている。
「初めて見たの?」
こくん。長い髪を揺らめかせて、その小ぶりな頭を振る。きっと、こんなにたくさんの色を見たこと自体が初めてなのだろう。こいつのいたところは、雪、岩、枯れ木、そんな色ばかりだっただろうから。
「おいで、近くで見せてあげる」
静かに箒を出現させ、柄に腰掛ける。手を差し出せば、一瞬の躊躇ののち、手を取るオズ。随分と大人しくなったものだ。出会い頭に雷ぶっぱなしてたのが懐かしい。
俺はオズを抱いてゆっくりと飛び上がる。
「これは赤。おまえの瞳の色だね。こっちは青。ちょっと違うけど俺の髪の色。この沢山使われてるのは黄色。双子様の眼の色だ」
近衛 無花果
DONEMerry Christmasなミス晶♀(非恋愛)窓からやってくるミスラサンタさんに触発されました
いつも通りの聖なる夜に がたり。窓が無遠慮に開き、肌を刺す冷たい風が部屋の中に雪崩れ込んだ。窓からの侵入者が顔を覗かせると部屋の中に積まれていたプレゼントの山も雪崩を起こして崩れていく。
「メリー……メリー、なんでしたっけ」
「メリークリスマスですよ。こんばんは、ミスラ」
「メリー、くりすます。賢者様」
真っ赤な衣服に身を包み、サンタになり切った--と本人が思っているだけの--ミスラは投げやりで舌足らずな挨拶を交わし、土足で晶の部屋に踏み入った。
嗚呼、と晶が嘆く。じとりと睨んで不満を露わにした。
ミスラは晶を見て、それから自分の足元を見て、それを何回か繰り返したのち、足に手を伸ばして靴を脱ぎ捨てた。それならばよしと晶は表情を緩めて、聖なる施しの魔法使いを歓迎した。
2098「メリー……メリー、なんでしたっけ」
「メリークリスマスですよ。こんばんは、ミスラ」
「メリー、くりすます。賢者様」
真っ赤な衣服に身を包み、サンタになり切った--と本人が思っているだけの--ミスラは投げやりで舌足らずな挨拶を交わし、土足で晶の部屋に踏み入った。
嗚呼、と晶が嘆く。じとりと睨んで不満を露わにした。
ミスラは晶を見て、それから自分の足元を見て、それを何回か繰り返したのち、足に手を伸ばして靴を脱ぎ捨てた。それならばよしと晶は表情を緩めて、聖なる施しの魔法使いを歓迎した。